2019年07月06日 10:11 弁護士ドットコム
シングルマザーと別れたばかりの男性が、「交際中、私が一緒に返済してあげたお金は返してもらえるのでしょうか」と、弁護士ドットコムに質問を寄せた。
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男性によれば、交際していた女性は元夫から養育費を支払ってもらえず、借金もあったという。そこで、「借金がなくなったら結婚しよう」と、2人で力をあわせて男性も返済に協力していたそうだ。
ところが交際して数年経ち、相手女性に好きな人ができてしまったという。男性が支払ってあげた分を返済するよう頼むと、「借用書がないから返さない」「お金でつなぎ止めようとしてるの」と反論されたという。
このような場合、女性には返済する義務はないのだろうか。平野武弁護士に聞いた。
交際していた男性は、相談者の借金の返済に協力していたということです。これは法的にはどのような行為と考えられるのでしょうか
「相談者の男性は、相談者から交際していた女性に対して『返済資金を貸し付けていた』、あるいは『立て替えて支払っていた』と考えられます。
本来であれば、借金の返済に充てたお金について、相談者から女性に対して、貸付金や立替金の返還請求ができることになるはずです」
では今回も、相談者は返還請求をすればよいのですね
「いえ、そうではありません。おふたりは『借金がなくなったら結婚しよう』との約束をしていたということですので、この点の解釈が問題となります。
相談者としては、『将来、結婚をすることを条件に借金の返済に協力する』『将来、結婚した場合には、貸付金や立替金の返済は求めない』という意思であったと思われます。そうであれば、貸付金や立替金の返済期限が『結婚しないことが確定するまで』猶予されていたと解釈できます」
破局した以上、返済する義務が発生したということでしょうか
「はい。女性と破局したことにより『結婚しないことが確定した』と言えます。そこで、返済期限が到来した以上、相談者に対して、貸付金あるいは立替金を返済しなければならないと考えられます」
ただ、女性は「借用書がないから返さない」「お金でつなぎ止めようとしてるの」と反論しています
「女性からは『借金の返済資金は、相談者からもらった』と反論してくることが考えられます。
確かに、『借金がなくなったら結婚しよう』との約束だけでは、『結婚できなかった場合でも、返済に充てたお金は返さなくてもいい』と相談者や女性が考えていた可能性も否定できないため、相談者が女性に対して『借金の返済資金をあげた』、すなわち『贈与した』という解釈も成り立ちうると考えられます。
結局、『借金がなくなったら結婚しよう』との約束だけでは、相談者が女性の返済に協力していたことが、貸付金や立替金の趣旨であったのか、贈与の趣旨であったのか、必ずしもはっきりしないと言えます。
最終的には、裁判所の判断に委ねられることになりますが、『結婚をすることを条件に借金の返済に協力していた』『結婚しないのであれば返金してもらうつもりだった』ということを、相談者の方で、いかに立証できるかにかかってくると思われます」
【取材協力弁護士】
平野 武(ひらの・たけし)弁護士
1977年生まれ。京都大学法学部卒業後、2005年、司法試験合格。
大阪市内の法律事務所勤務を経て、2012年に独立して、「平野武法律事務所」開業。中小
企業法務や家事事件(離婚、相続など)を中心に、精力的に事件に取り組んでいる。
事務所名:平野武法律事務所
事務所URL:https://hirano-lawoffice.jp/