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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ゴールデン・リバー』

2019年07月05日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『ゴールデン・リバー』(c)2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、アメリカでお金を擦られてしまった島田が『ゴールデン・リバー』をプッシュします。


参考:『PARASITE』パルムドール受賞から考える韓国映画の現在 


 2015年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『ディーパンの闘い』以来の新作となるジャック・オーディアール監督作『ゴールデン・リバー』がついに公開です。これまでもジャンル問わず様々な作品を作ってきたオーディアール監督が今回手がけるのは、西部劇。ゴールドラッシュのアメリカを舞台に、最強の殺し屋と言われるシスターズ兄弟と黄金の居場所が分かる化学式を発見した化学者、化学者の居場所を探すも、徐々に黄金に魅せられていく偵察係4人の追走劇を描きます。


 何よりまず注目すべきは豪華な4人のキャスト! ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、リズ・アーメッド、そして『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』でも大活躍だったジェイク・ギレンホール(ギレンホールは、同日公開のポール・ダノ初監督作『ワイルドライフ』にも出演しており、どこでも引っ張りだこという状況に)というものすごいラインナップで、この4人の個性溢れる演技合戦というだけでも一見の価値あり。


 キャストはもちろん、今回も冴え渡っているオーディアール監督ならではの映像美も堪能できます。撮影序盤の暗闇の中でひっそりと行われる銃撃戦の、光と闇を活かした演出は冴え渡っており、これぞオーディアール! と思わずガッツポーズです。


 西部劇というとどこか懐古的な印象を受けるかもしれませんが、『ディーパンの闘い』で移民問題に切り込んだ時と同様、本作もどこか現代的な世相を反映しているように思えてなりません。エゴに身を任せる者、穏やかに安定した暮らしを求める者、ユートピアを夢見る者……。黄金を目の前にすることで、4人それぞれの人間らしさとその脆さが徐々に見えてきます。現代においても、そういった欲望に堕ちてしまうことは多々あるのではないでしょうか? 身につまされる思いです。


 ただ、映画館を出るときにポジティブな気持ちになって欲しいとオーディアール監督が語っていたように、決して人間のエゴを切り取るだけではなく、コメディーチックな笑い、柔らかな優しさや友情といったオプティミスティックな要素も存分に味わうことができる作品です。


 映像の美しさだけでも十二分に楽しめる本作。当時のアメリカ西部を旅行するような気分も味わえる映画だと思います。リラックスしたい方にもおすすめです。


(文=島田怜於)