ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2019年シーズン第4戦ラリー・ポーランドが6月29~30日に開催され、王者アレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3 R5)が今季初優勝を飾り、開幕からクラッシュ続きだった男が、チームに移籍後初勝利を献上。2位にはスポット参戦のヤリ・フッツネン(ヒュンダイi20 R5)が続いている。
2019年で第76回大会を迎えた東欧を代表する伝統のイベントは、魅力的な湖水地方として一大観光地でもあるミコワイキのアリーナを使用したスーパースペシャルから開幕。2.50kmのステージで最速を記録し最初のラリーリーダーに立ったのは、ERC3ジュニアの卒業生であり、ヒュンダイ契約ドライバーとして2年連続の参戦となるフッツネンだった。
ヒュンダイ・ジュニア・デベロップメント・プログラムの一環としてエントリーするフッツネンは、リスクを徹底的に排除してポディウム獲得を目指す戦術を遂行。代わってSS2以降、午前のループで3連続ベストを記録したのはルカヤナクで、すぐさまラリーの主導権を握ることとなった。
しかし、ディフェンディングチャンピオンも盤石のラリー運びとはいかず、今季から移籍のSaintéloc Junior Teamのマシンはマイナートラブルが連発し、2度目のスーパーSSを前にダンパーからのオイル漏れが発生してしまう。
運良く直後のサービスで対策できた彼のシトロエンは、続く午後のループ最初のステージでも右フロントのパンクに見舞われる不運が続きながら、この日4つ目のステージベストを記録。
パンクしながらSSベスト奪取の余波でブレーキパイプの交換を強いられ、クラッチにも不具合を抱えながら、残る3ステージでもベストを奪い、ルカヤナクがレグ1の9SS中7ステージを制する強さを披露した。
「今日はドラマが盛り沢山だった。クルマのバランスが変化し、5つ目のステージではミスを犯してパンクに見舞われた。最終的にブレーキラインも壊れ、クラッチやダンパーなど多くの問題を抱えた。それでもどういうわけか、僕らは生き残っているようだ」と、困難続きの初日を振り返った王者ルカヤナク。
レグ1で2番手のフッツネン以下、3番手にERC1ジュニア首位のACCR Czech Rally Team、フィリップ・マレス(シュコダ・ファビアR5)が続き、ŠKODA Polska Motorsportのミコ・マルチェク(シュコダ・ファビアR5)とERC選手権首位のルカク・ハバイ(シュコダ・ファビアR5)、そしてこのふたりとバトルを展開したERC2戦目、Team STARDの新井大輝(シトロエンC3 R5)がSS6で右リヤのパンクに見舞われながらも、総合6番手で夜を越すことになった。
明けた日曜のレグ2は全6ステージ。その最初のSSとなる9.34kmのSS10で総合2番手フッツネンがトップタイムを奪い、図らずもラリーリーダーの“ロシアン・ロケット”ルカヤナクにプレッシャーを掛ける形になると、続く11.34kmのSS11で岩にヒットしたシトロエンC3 R5のタイヤが再びのパンク。
このステージもフッツネンとハバイに最速を譲ってリードが目減りした上、ここまで3戦のルカヤナクのように最終日後半の無理なスパートでクラッシュを頻発した悪夢がよぎる展開となっていく。
しかし、今季からドライブするシトロエンC3 R5もようやく手なづけ、一味違うところを見せた“ロシアン・ロケット”は残るSS12~15までの4ステージすべてでベストタイムを刻み、59.8秒ものマージンを築いて2019年初勝利。ERC通算9勝目を手に入れることになった。
「待望の結果だ」と、ポディウムで安堵の表情を浮かべた王者ルカヤナク。「本来なら(開幕戦の)アゾレスでこうなっていたはずだが、いくつものバッドラックに見舞われた。でもその運命にようやくリベンジすることができたね。何よりも、自分のスタイルで勝てたことがうれしい」
そしてフッツネンが2018年大会の成績に並ぶ2位表彰台を獲得。3位に地元のハバイが入り、ERCドライバーズランキングでもルカヤナクに11ポイント差をつけ首位をキープしている。
また、STARDのシトロエンをドライブする新井大輝は、SS10でERC1ジュニアのクラス最速タイムを記録したものの、22.54kmのSS12でロールオーバーし、ラリーを終えている。
続くERC2019年シーズン第5戦は、2017年にERCカレンダーに加わった“首都”の冠も誇らしいターマック戦、7月19~21日開催のラリー・ディ・ローマ・キャピタルだ。ローマ市街中心部で行われるドライビングパレードや、EUR地区にある“四角いコロッセオ”、イタリア文明館周辺のスペクテイター・ステージなど、魅力的なステージ群を舞台に争われる。