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『ボイス』『TWO WEEKS』『サイン』、韓国ドラマのリメイクはなぜ増加した?

2019年07月05日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ボイス 110緊急指令室』(c)日本テレビ

 間もなく放送が始まる7月スタートの新ドラマ。そのラインナップを見ると、『ボイス 110緊急指令室』(土曜22:00/日本テレビ系)、『TWO WEEKS』(火曜21:00/カンテレ・フジテレビ系)、『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(木曜21:00/テレビ朝日系)と、実に3作が韓国ドラマのリメイクだ。今や、日本のエンタメ業界になくてはならなくなった韓国コンテンツだが、ドラマとの相性の良さも見逃せないものとなっている様子。では、テレビ局が韓国ドラマにこぞって熱視線を送る理由とは、どこにあるのだろうか。


参考:アジア映画の日本版リメイクを成功させるには? 『あの頃、君を追いかけた』『SUNNY』から考察


 韓国ドラマのリメイクの源流は、2000年頃に遡る。2000年前後と言えば、“韓流ブーム”の真っただ中。韓国発のコンテンツに日本中が熱狂していた、まさにその頃である。先駆けとなったのは長瀬智也主演のコミカルな任侠ドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)。その後、2004年に大ヒットした映画『私の頭の中の消しゴム』が及川光博&深田恭子主演でドラマ化されたのが2007年、ドラマと映画双方でリメイクがなされた『猟奇的な彼女』や大野智の連ドラ初主演で話題となった『魔王』(TBS系)など、次々と新たなタイトルがリメイクされるに至った。ここ数年は1年間に1本以上のペースで制作されてきたが、昨年は『誘拐法廷~セブンデイズ~』(テレビ朝日系)、『グッド・ドクター』(フジテレビ系)、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(カンテレ・フジテレビ系)、『記憶』(フジテレビNEXT・J:COMプレミアチャンネル)と4作が立て続けに放送。その勢いは増しているようにも思える。


 そもそも韓国国内でのドラマの需要は大きく、制作される作品の本数はWEBドラマなども含めると年間200本ほどにものぼる。取り扱われるテーマは、“韓流ブーム”を牽引した悲恋・純愛ものから徐々にシフトチェンジし、専門職を扱った作品が増加傾向だ。たとえば『グッド・ドクター』のような医療もの、『シグナル 長期未解決事件捜査班』のようなサスペンスが一大勢力として台頭している。いずれも緻密に練られた脚本と、映画のような重厚な画作りが功を奏し、視聴率を押し上げた。


 また、ストーリーの面白さ、テーマの奇抜さに加え、ヒットメイカーと呼ばれる脚本家・演出家の存在も忘れてはならない。たとえば、本国で最高視聴率41.6パーセントをマークした『太陽の末裔』などを手がけるキム・ウンスクはそのひとり。発表する新作が軒並み社会現象を起こすほどの人気を誇る。優秀な製作陣によるストーリーテリングの妙、そしてドラマ大国として培ってきたクオリティの高い作品が生まれる土壌が韓国ドラマの今を支えている。いつからか原作ものばかりがフィーチャーされ、オリジナリティあふれる作品に出会う機会が減った日本のドラマ界にとって、リメイクを積極的にすすめることは、業界全体を盛り上げるひとつの光明であり、自国のコンテンツに刺激を与える役割も担っているのではないだろうか。


 その上で今期放送される作品を改めて見ていこう。まず、『ボイス 110緊急指令室』は、唐沢寿明と真木よう子らが「声」を手掛かりに事件を解決するECU(Emergency Call Unit)の刑事に扮するタイムリミットサスペンス。また、『TWO WEEKS』は、三浦春馬演じる殺人未遂犯が、娘を救うために逃走劇を繰り広げる物語で、『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』は、無骨な天才解剖医・柚木(大森南朋)が、事件の真実を隠蔽しようとする巨大な権力に立ち向かう姿を追う。専門職や設定の斬新さにスポットを当てたサスペンス要素の強い作品が揃うあたり、本国のブームを踏襲していると言っていいだろう。


 現在は韓国から日本へのドラマの“輸出”が進む一方で、『最高の離婚』、『空から降る一億の星』、『リーガル・ハイ』(以上フジテレビ系)など日本発のドラマが韓国でリメイクされる流れも生まれつつある。韓国サイドでも自国の作品にない目新しさや面白さを求めて、海外ドラマを見直す動きが芽生えているということだろうか。いずれにせよ、いかに視聴者を画面に釘付けできるかは、両国のドラマ制作者にとって常に対峙しなければいけない課題のひとつ。こうした両国のコンテンツの交流は今後ますます盛んになっていくに違いない。(渡部あきこ)