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【コスプレ】中国のコスプレ撮影は、日本よりも競争が激しい? “中国版コミケ”で体験してきた

2019年07月02日 21:32  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

【コスプレ】中国のコスプレ撮影は、日本よりも競争が激しい? “中国版コミケ”で体験してきた
「中国のコスプレイヤーはレベルが高いと評判だ」
「よーし、中国のオタクイベントに参加して写真をたくさん撮ってこよう!」

そう意気込んで、6月7日・8日の2日間、中国・上海で行われた「Comicup魔都同人祭Comicup24」(通称CP)に参加してきました。
2007年にスタートしたCPは、夏と冬の年2回開催されている中国最大規模の同人誌即売会で、日本でいうところの「コミックマーケット」的な存在です。

「世界コスプレサミット」や「コミックマーケット」など、コスプレイヤーが参加する国内の代表的なイベントで撮影をして来た筆者ですが、中国のコスプレイベントに参加するのは今回が初めて。
期待と興奮に胸を高鳴らせイベントに参加しましたが、「現実はそんなに甘くない」ことを痛感させられました。


コミケと同じようにしっかりとしたカタログがある

というのも、日本ではコスプレイヤーが参加するイベントの多くは、コスプレイヤーを撮影するために並んで撮影するカメラマンの光景が一般的。基本的には順番を待てば1対1で撮影することができる環境です。
しかし、日本以上にコスプレ市場が広いために競争が激しい中国では、被写体であるコスプレイヤーだけでなく、カメラマンにまで厳しい競争をしいる環境だったのです。

この記事では、コスプレ撮影の競争の激しさを、同イベントと日本のコミックマーケットを比較しながらお伝えします。

(1)コスプレしたまま街中を歩いてOK!?


日本は「許可申請していない場所でコスプレはしない」というルールが浸透しています。そのため、コスプレ参加可能なイベントでは、会場内に広い更衣室を用意しており、会場で着替えることが当たり前です

しかし、「CP24」では家などでコスプレしてから会場に向かい、終了後はコスプレしたまま帰る人が大勢います。日本とは違うルールが浸透しているようでした。

(2)会場の大きさは、東京ビッグサイトの5倍!

同イベントの開催会場はその都度変更されているのですが、今回の「上海国家会展中心」は2015年6月に完成した巨大コンベンションセンター。総建築面積147万平方メートル、展覧会場の総面積50万平方メートル(40万平方メートルの室内展示ホールと10万平方メートルの屋外展示場)です。

東京ビッグサイトの屋内展示場ホール総面積が9万5,420平方メートル、屋上展示場が6千平方メートルなので、およそ5倍の広さです。


上海国家会展中心があまりにも広すぎるため、実際は半分以下の使用に留まっています。
5号館2階が同人サークル、6号館2階がイベントステージ&ロリータブランドブース、7号館2階が企業ブースに分けられ、6号館2階の一部と屋外展示場がコスプレなどの撮影可能なエリアとして解放されました。

(3)休憩できるスペースが各エリアにある
会場が十分広いため、ブースとブースの間にも十分な余裕がありました。日本のコミケのように、足の踏み場もないほどギュウギュウ詰めになることは基本的にはありません。
また、屋外も日差しを避ける屋根があり、人混みに埋もれることもなかったです。上海も暑かったですが、夏のコミケと比べると過ごしやすかったです。

さらに、各エリアは周囲のスペースが空けられていて、床に座り込んで飲み食いしている人を多数見かけました。スタッフが会場内を絶えず見回っていましたが、現地の人によると「休んでいても何も言われない」ために休憩する人が多いようです。
日本のコミケを参考にしたとしても、いかに快適に過ごせるかを追求した形だと思います。

・同人サークル出展エリア
両日とも1ホールに約2000ブースが設置。複数のブースに跨って出展しているサークルはあっても、コミケのように人気サークルは壁側に大きなブースを用意することは見られませんでした。あくまでも縦横一列ずつ整然としています。

サークル:TSUBAKI
サークル:平行四界
コスプレはもちろん、VOCALOID、『東方Project』、『ジョジョの奇妙な冒険』など日本発の人気コンテンツはもちろん、『陰陽師』や『IdentityV 第五人格』、『一人之下』など中国発の人気コンテンツがあり、中国の指遣い人形劇「布袋戯」など中国独自色が強いサークルも見られました。

サークル:迷途窝
サークル:FA♂
それぞれのグッズの単価平均は、取材したブースを見る限りだと、イラスト集が30~40中国人民元、音楽CD が50~60中国人民元、ゲームが150~200中国人民元、コスプレ写真集は120~150中国人民元でした。

サークル:修罗国度土产代购
また、「布袋戯」ブースの完全受注製作の人形だと、1体が1~2万中国人民元もする高価なものもありました。

支払い方法も多くのブースが電子マネー決算に対応していました。中国では現在、「WeChatPay」や「UnionPay」など電子マネー払いが普及している背景があるからです。
ちなみに同人サークル出展エリアは、特別な取材許可証を得なければ撮影はできません。

※6月17日執筆時点で1中国人民元は15.68日本円

・ロリータブランドエリア

咕噜宝TAKAさん(weibo:@咕噜宝TAKA)
驚いたのが中国におけるロリータ・ファッションの人気の高さです。2016年ごろから大流行しており、「CP」でも中国内のロリータブランドが数多く出展するのです。「CP24」の出展ブースは128を数えました。
中国内のトップロリータブランドが集結し、最新のアイテムを展示したり、モデルを起用したりしてアピールします。ロリータ・ファッション好きなコスプレイヤーも多く、ブースを訪れる姿をたびたび見かけました。。



・企業ブースエリア

『妖之食肆』ブース
イベントステージエリアに出展している企業もありましたが、こちらでは中国発のスマートフォンゲームのブースが多かったです。日本配信間近な『明日方舟(アークナイツ)』、を始め、日本でも配信中の『アズールレーン』、『ドールズフロントライン』、『IdentityV 第五人格』、そして中国だけで配信中の『约会大作战』など。どこもブース設営に力を入れており、人気コスプレイヤーによる撮影会を行っていました。

『アズールレーン』ブース
『明日方舟(アークナイツ)』ブース
『ドールズフロントライン』ブース
『IdentityV 第五人格』ブース
『デート・ア・ライブ約戦:精霊再臨』ブース
→次のページ:撮影ではライトスタンドは使用許可証がなければ使えない

(4)撮影ではライトスタンドは使用許可証がなければ使えない
中国は競争の激しさを物語る要因の一つは、「CP24」の撮影においてはライトスタンドを使用できるのは、許可された知名度のあるカメラマン、もしくは申請したメディアのみ。顔に光を当てるストロボを手放しで好みの角度から被写体に当てることで、天候に左右されにくい光をコントロールした写真を撮ることができます。

カメラマンによっては自然光での撮影を好む人はいますが、光が当たりにくい場所ではライトスタンドを使うことで良い写真を撮れる確率は高まります。会場内では巡回するスタッフがライトスタンド使用者に対して、許可証を持っているか常に目を光らせていました。

撮影エリアを見渡しても、ライトスタンドを使っているカメラマンはごく少数でした。

(5)動漫イベントには公式カメラマンがいる
中国は日本の影響を受けながらも独自のコスプレ文化を築いており、1998年頃から始まった動漫イベントはコスプレイヤーを中心に発展したとも言われています。
そのため、各出展企業はコスプレイヤーを起用した宣伝に力を入れています。良い写真であればあるほど“中国版Twitter”weiboで拡散されるため、「CP24」でも公式カメラマンが企業コスプレイヤーを撮影する光景が見られました。

被写体と向き合っている、カメラを首からぶら下げた男性が教主shadowさん
そんな公式カメラマンはどのような仕事をするのか。今回、アニメ!アニメ!でもインタビューしたことがある中国の動漫イベントカメラマンとしてナンバーワンの呼び声も高い教主shadowさん(Twitter:@jiaozhushadow、weibo:@教主Shadow)に会えたので訊きました。

【関連記事】コスプレイヤーをもっと綺麗に撮るには? 熟練カメラマンが教える、イベント撮影のコツ

――今回の公式カメラマンとしての仕事内容と撮った人数を教えてください。

教主Shadow:「CP24」では、企業ブースの各コスプレイヤーを撮ることが仕事でした。2日間で22人を撮影しました。

――会場にはたくさんのコスプレイヤーがいますが、どんな基準で被写体を選ぶのですか?

教主Shadow:キャラクターの再現度の高さですね。衣装や化粧、造形などクオリティーの高いコスプレイヤーを撮らせてもらっています。

――毎回、構図が素晴らしいですがどのように決めて撮っていますか?

教主Shadow:私自身のキャラクターへの理解、撮りたいテーマを重要視しています。キャラクターの躍動感や息遣いが感じられるような、アニメの1シーンを再現することを心がけているんです。躍動感を表したいなら角度をつけますし、日常の落ち着いた感じを演出するなら水平に撮りますね。
毎回、アシスタントと一緒にチームで撮影に臨む教主Shadowさん。とにかくパワフルでユーモアたっぷりで、息の合ったチームプレーを見せてくれました。


教主Shadowさんの掛け声に合わせて、被写体のウィッグをなびかせる
(6)コスプレ撮影は実力がないと1対1撮影できない!?
「CP24」では1対1の状況はもちろん、より良い場所での撮影はカメラマンの知名度(実力)の高さに委ねられることが大きいです。それは一般参加のコスプレイヤーだけでなく、基本的には来場者の撮影に快く応じる企業コスプレイヤーやロリータモデルにも当てはまるのです。

ブース内だけでなく屋外撮影エリアに出て、カメラマンに良い環境下で優れた写真を撮ってもらうことが“中国版Twitter”weiboで拡散される条件になるため、本人と交渉することで屋外撮影エリアまで同行してもらえます。
やはり、暗めな屋内よりも自然光が差し込む屋外撮影エリアのほうが良い写真が撮れやすいです。しかし、カメラマンの技量も相手の判断材料になるため、友人などを除けば知名度がないと外で撮影することはなかなか難しいかもしれません(名前を知られてなくても、ライトスタンド使用許可証があると好印象な気がしました)。取材ならば、ブース責任者の了承さえ得れば外で撮影可能です。

菌儿rikushiさん(Twitter:@zoey_0228) Arknights『明日方舟(アークナイツ )』
満を辞して一般参加のコスプレイヤーが多く集まる屋外撮影エリアに足を運ぶと、コミケのような混雑は見られません。

日本でよく見られるのは、コスプレイヤーがコスネームとTwitterIDを記載したスケッチブックを置いて立ち、カメラマンが待機列を作っている光景です(人気レイヤーさんを取り囲んだ撮影は、全体としてはそこまで多いわけではありません)。

しかし、「CP24」では基本的にはカメラマンが順番に撮影する光景は見られませんでした。どういうことかを説明しますと、筆者がアポを取ったコスプレイヤーの撮影を始めた瞬間、カメラマンが次々にやって来て被写体の撮影可否を確認せずに撮り始めます。筆者が撮影中にも関わらず、「動画撮るから、向こうから歩いて来て」と被写体に動きを要求するカメラマンもいました。

呆呆さん(weibo:@榴莲味的天然呆)アナーキー・パンティ、星子さん(weibo:@星子-真琴现任女友)アナーキー・ストッキング『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』
中国ではコスプレイヤーが良い写真を撮ってもらえると判断したカメラマンには、長い時間を提供してくれます。そのため、イベントにおけるコスプレイヤーとカメラマンの撮影時間は日本以上に貴重です。

多くのカメラマンは並べば自分に順番が回ってくることが担保されていません。それでもイベントだからこそ、メインで撮るカメラマン以外にも撮影チャンスを与える意図で、このような撮影方式が浸透しているのかもしれません。
実際に、筆者がメインで撮影中に、レンズを交換したり、ライトスタンドを設置し直したりする合間は、被写体のコスプレイヤーが他のカメラマンにも目線を送っていました。

日本から参加した天津いちはさん(Twitter:@ichichiha)
「CP24」は日本のコスプレイヤーも何人かサークル参加していました。今後も日本から参加するコスプレイヤーは増える可能性があります。
そこで、日本とは明らかに違う中国のルールを認識しておく必要があります。まずは撮影エリアで撮影を開始した瞬間に「自動的に撮影OK」だと、カメラマンに判断されかねないこと。そして、“中国版Twitter”weiboを始めとするSNSのID確認は、カメラマンの任意になりがちなことです。

同様に日本から参加するカメラマンもいました。しかし、並んで撮ることがないので、知り合いでなければ1対1で撮影することは難しいです。中国語ができないとコスプレイヤーと交渉ができません。

取材または中国での知名度がないと、囲み撮影に割って入り、1対1で目線をもらいながら撮影できる可能性は低いでしょう(この割り込みは被写体のコスプレイヤーが了承すれば、他のカメラマンから基本的に文句を言われないようです)。

カメラマンにとっては、文字通り、「競争」「実力主義」という言葉がしっくり来る環境でした。

撮影:乃木章(@Osefly)
人物レタッチ:寒黙(@nigellizhe)、乃木章(@Osefly)