2019年07月02日 10:51 弁護士ドットコム
勝手に彼女の部屋の合鍵を作って、部屋に入ってしまったーー。「ばれなければ罪にならないのでしょうか」と尋ねる相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者は2年ほど交際している彼女がいます。しかし、ほとんど部屋に入れてくれないため浮気を疑い、勝手に合鍵を作ってしまいました。
手帳を見ると、自分以外の男性としばしば会っていることも分かりました。「証拠を掴みたくなり、数回侵入して経過観察をしています」と言います。
逆に「元交際相手に合鍵を勝手に作られた」という相談もありました。相談者の男性は、別れた際に元カノから合鍵を返してもらっていましたが、数日後、家に帰ると、なぜか元カノが部屋の中にいました。元カノは勝手に、もう一つ合鍵を作っていたそうです。
交際相手の合鍵を相手に無断で作って、部屋に入る行為は、法的に問題になるのでしょうか。星野学弁護士に聞きました。
交際相手の合鍵を相手に無断で作る行為は、どうでしょうか。
「合鍵を無断で作っただけの場合、通常は法的問題が生じることはないでしょう。『合鍵を作ってはいけない』という法律は存在しないので、原則として合鍵を作っただけで処罰されることはありません。
しかし、例外的に犯罪の準備行為を処罰する予備罪というものがあります。したがって、例えば、別れた交際相手を殺すため(殺人罪)、嫌がらせをしようと家に火をつけるため(放火罪)に合鍵を作ったなどの事情がある場合には予備罪として処罰される可能性があります。
少し話が変わりますが、賃貸物件の場合、一般的には、部屋の「鍵」は大家さんのものであって賃借人に貸しているだけです。したがって、通常の賃貸借契約では、大家さん(あるいは管理会社)の承諾を得ないで鍵の複製・交換をしてはいけませんし、契約終了時には鍵を大家さんに返還しなければならないと定められています。
そのため、交際相手が合鍵を無断で作った場合、そもそも鍵の管理が不十分だったから合鍵を作られてしまったんだという理屈から、『鍵』及び『錠』の交換費用を請求される可能性があります」
合鍵を無断で作って勝手に家に入った場合は、どうでしょうか。
「合鍵を無断で作っただけでなく、その合鍵を使って交際相手の自宅に許可を得ずに入れば住居侵入罪が成立する可能性があります。
さらに、例えば、浮気の証拠となる物品を持ち帰れば窃盗罪が成立する可能性もあります。
犯罪が成立するとされるためには様々な事情が考慮されますが、単に交際中だとか交際相手の浮気調査のためだという事情があるからといって許可無く家に入って良いということにはなりません」
合鍵を無断で作られたことを理由に、損害賠償請求はできるのでしょうか。
「一般論を言えば、合鍵を無断で作られれば『気持ち悪い』『怖い』という感情を抱くのが普通ですが、それは漠然とした不安感にとどまり、何か具体的な損害が生じたわけではありません。したがって、このような場合に損害賠償を請求しても、それが認められることはないでしょう。
ただし、例外的に損害賠償請求が認められる場合もあります。
例えば、元交際相手からストーカー行為を繰り返されている場合、あるいは元交際相手から暴力を振われて逃げてきたなどの場合は、無断で合鍵を作ってそれを伝える行為が『いつでもお前の家に入れるんだ』という脅迫行為であると捉えることができます。
このような場合には、合鍵を無断で作られたことを理由に損害賠償請求をすることができるでしょう」
【取材協力弁護士】
星野 学(ほしの・まなぶ)弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。
事務所名:つくば総合法律事務所
事務所URL:http://www.tsukuba-law.com