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IMSA第6戦:苦節6年、マツダがついに初優勝。アキュラ・ペンスキー退けザ・グレンで完全勝利

2019年07月01日 18:31  AUTOSPORT web

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チーム初の優勝をワン・ツー・フィニッシュを飾ったマツダチーム・ヨーストの『マツダRT24-P』
6月30日、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ第6戦がアメリカ、ニューヨーク州のワトキンスグレンで行われ、マツダチーム・ヨーストの55号車マツダRT24-P(ハリー・ティンクネル/ジョナサン・ボマリート/オリビエ・プラ組)がチーム初の総合優勝を達成。総合2位に77号車マツダRT24-P(オリバー・ジャービス/トリスタン・ヌネス/ティモ・ベルンハルト組)が入り、マツダはIMSAシリーズ初優勝をワン・ツー・フィニッシュで飾っている。

 シーズン中盤戦の第6戦グレンはデイトナ24時間、セブリング12時間、プチル・マンと並んで“ミシュラン・エンデュランスカップ”に組み込まれるロングディスタンレースだ。かつてF1が開催されたワトキンスグレンを舞台に、6時間に渡って争われるレースはオープニグラップからマルチクラッシュが発生する波乱の幕開けとなった

■ル・マン24時間の悪夢再来

 前日の予選でレコードタイムを塗り替え、ポールシッターとなったジャービス駆る77号車マツダを先頭にスタートを切った隊列は一見、きれいな滑り出しを見せたかに思えた。

 しかし、後方のGTル・マン(GTLM)クラスでコルベット・レーシングの4号車シボレー・コルベットC7.RとポルシェGTチームの912号車ポルシェ911 RSRがわずかに接触。体勢を崩したコルベットがガードレールに激突しコースを横断する形でクラッシュを喫してしまう。

 これにGTデイトナ(GTD)クラスの集団が差し掛かかったことで混乱が生じ、そのなかでメルセデスAMG・チーム・ライリー・モータースポーツの33号車メルセデスAMG GT3が4号車コルベットと激突することに。

 このアクシデントによって2台は0周リタイアを余儀なくされる。コルベットにとっては2週間前のル・マン24時間からモノコックを交換した直後のレースでのクラッシュ。また、33号車メルセデスをドライブしていたベン・キーティングにとっても、ル・マンでのLM-GTE Amクラス優勝から失格となった悪夢が冷めやまぬなかで、再び“まさかの結果”となってしまった。

■好調マツダDPiがスピードで他を圧倒

 スタート直後の事故発生から13分後、レースはフルコースイエロー(FCY)を挟んで再開となるが、今度はフェリペ・ナッセ駆るウェレン・エンジニアリング・レーシングの31号車キャデラックDPi-V.Rが左リヤタイヤのパンクチャーの影響でグラベルにスタックしてしまい再びFCYが導入される。

 レース開始から27分後、2度目のリスタートが切られると77号車マツダが一気に後続を引き離しにかかる。また、3番手からスタートした55号車マツダのティンクネルも10分足らずで先行するアキュラ・チーム・ペンスキーの7号車アキュラARX-05を交わして2番手に順位を上げ、レース序盤にマツダチーム・ヨースト勢がワン・ツー体制を築く。

 その後、2台のマツダDPiはライバルであるアキュラDPi、キャデラックDPi、ニッサンDPiを寄せ付けない圧倒的な速さで周回を重ね、77号車と55号車でピットタイミングごとに順位を入れ替えながら、約4時間に渡ってレースを支配してみせる。

■モントーヤ駆る6号車アキュラDPiが終盤にトップに浮上も……

 3番手に対し、最大で56秒もの大差をつけて序盤から中盤にかけて首位、2番手を守ったマツダ勢だったが、レース終盤になると転機が訪れる。スタートから4時間35分、パフォーマンス・テック・モータースポーツの38号車オレカ07・ギブソンが突如コース上にストップしたことで、今レース4回目のFCYが入った。

 このコーションの間にDPi勢はほぼ全車がピットに向かったが、そのなかで3番手につける6号車アキュラDPiがマツダ勢の前でピットアウトすることに成功。チェッカーまで残り1時間8分で迎えた4度目のリスタート時に総合首位に躍り出る。

 レース残り1時間あまり、トップはファン・パブロ・モントーヤ駆る6号車アキュラDPi。55号車マツダが2番手、77号車マツダが3番手からこれを伺う展開に。トップ3台はリスタートと同時にワンパックとなって熾烈な優勝争いを展開。特に55号車を駆るティンクネルの気迫はすさまじく、コースを大きく取りながらモントーヤを牽制していく。

 そして、その時は訪れた。チェッカーまで残り42分、ターン8でティンクネルが6号車アキュラDPiのインをこじ開けて道を作り、そのままオーバーテイクを決める。すぐにギャップを広げたティンクネルは残り34分で最後のピットストップを迎えると、チームもミスなく55号車マツダをコースに送り出す。

 その1周後、2番手を争う6号車アキュラと77号車マツダが同時にピットへ。ここでの対決もマツダに軍配。フィニッシュまで残り30分となった段階で再びマツダがワン・ツー体制を築いた。

 レース最終盤は、トップに立った55号車マツダの左側エンジンカウルがめくれてしまうアクシデントがあったものの、ティンクネルはそのまま走り続け、僚友77号車とともにスタートから6時間後のチェッカーフラッグをトップで受けた。一度は首位に躍り出るも、マツダ勢のスピードに太刀打ちできなかった6号車アキュラは3位でレースを終えている。

 この結果、マツダチーム・ヨーストはチーム結成2年目でIMSAシリーズ初の総合優勝を飾ることに。また、マツダUSAにとっては2014年のプロトタイププログラム開始以来、挑戦6年目での悲願達成となっている。

■NSX GT3 Evoが2019年シーズン初優勝

 オープニングラップで1台が姿を消すことになってしまったGTLMクラスは、フォードGT、コルベットC7.R、BMW M8 GTEが目まぐるしくトップを入れ替えていくなか、中盤になるとポルシェ911 RSRの2台レースをリードしていく展開となった。

 しかし、4回目のFCYによってその貯金はゼロとなり、最後はニック・タンディ駆る911号車ポルシェとアントニオ・ガルシアの3号車コルベットによるマッチレースに。

 直前のスティントを含め、約80分に渡って続いた接戦は0.452秒差で逃げ切ったタンディの勝ち。3号車コルベットが2位となり、3位にはフォード・チップ・ガナッシ・レーシングの67号車フォードGTが入っている。

 GTDクラスはマイヤー・シャンク・レーシングの86号車と57号車アキュラNSX GT3 Evoがフロントロウからスタートを切るも、57号車はスタート時に後続に飲み込まれてしまう。また、1時間30分時点まで首位を守った86号車もライバルにポジションを開け渡してしまった。

 しかし、86号車はそこから巧みなストラテジーで順位を挽回すると、レース残り1時間の段階で再び首位に返り咲く。最終盤は見た目上2番手となったが、首位を走るマシンが最後の給油のためにピットインしたことで事実上のトップとなり、最終的にポール・トゥ・ウインで今季初優勝を飾っている。

 クラス2位は序盤にパンクに見舞われながら、86号車NSXと同様に見事なリカバリーをみせたターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3。クラス3位にはウェザーテック・レーシングの63号車フェラーリ488 GT3がつけた。3GTレーシングのレクサスRC F GT3は14号車がクラス5位、ラップリーダーにもなった12号車は同9位でレースを終えている。