6月26日の「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)では、クレーム評論家の谷厚志氏が最近のクレーム事情を語った。ここ数年、長時間労働をなくそうとする企業が増えた弊害で、「客から『効率よく仕事をするな!』というクレームが増えている」という。
なんでも、「営業マンの訪問回数が減った」、「じっくり打ち合わせをしたいと思ってるのに退社時間になるとそそくさと帰ってしまう」、「もっと話したかったのに」といった声が寄せられているのだ。長時間労働を抑制する機運が高まり、効率を意識する人が増え、今までのようなコミュニケーションが希薄化し、寂しさを感じている人は少なくないようだ。(文:石川祐介)
「時間をかける=頑張っている」のジレンマに苦しむ時代
谷氏は続けて、行きつけのカフェでドリップコーヒーを注文した客が、コーヒーが今までよりも早く出てきたことに「手を抜いていないか?」とクレームを入れるケースもあったと紹介する。スピーディーな仕事をしたのに手抜きを疑われてしまうというのは皮肉なものである。
日本人は「時間をかけること=一生懸命やっている」という意識が根強い。効率よく仕事をしたのに、「頑張っていない」と評価されてしまうジレンマに、意外と多くのビジネスパーソンが悩んでいるのかもしれない。
他にも、便利過ぎる社会になったために生まれたクレームもある。谷氏はネット通販で買い物をした客から「商品の到着が早すぎる」というクレームが聞かれるようになったという。
例えば、深夜に酔っ払って不要な商品を注文した場合、翌朝それに気づいてキャンセルしようと思っても、商品が到着していてできなかったというケースがある。客は配達員に「いらないです」「持って帰ってもらって良いですか?」と言い出す身勝手ぶりだ。
客の迷惑行為で精神疾患になった人も
谷氏の話を聞く限り、働き方を改めても便利になっても、迷惑な客に苦しめられる従業員は後をたたないのが現状と言えそうだ。「UAゼンセン」が小売業界やサービス業界の従業員を対象に実施したアンケート調査では、7割が「業務中に客からの迷惑行為に遭遇したことがある」(70.1%)と回答している。
客からの迷惑行為に「強いストレスを感じた」と回答した人は54.2%と半数以上もいる。迷惑行為によって「精神疾患になったことがある」という声も184人から寄せられている。
本来、従業員と客は対等な関係であるはずだが、「お客様は神様」と主張して、横柄な態度を取る客もいる。従業員のメンタルヘルスを守るためにも、この意識は直ちに変えなくてはいけない。