トップへ

山田裕貴×齋藤飛鳥が振り返る、『あの頃、君を追いかけた』をとおして得たものと変化したこと

2019年07月01日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

山田裕貴、齋藤飛鳥(撮影:伊藤惇)

 山田裕貴と乃木坂46の齋藤飛鳥が共演した映画『あの頃、君を追いかけた』のBlu-ray&DVDが、7月3日に発売される。ギデンズ・コー監督による2011年の同名台湾映画を、舞台を日本に移してリメイクした本作は、地方都市の小さな豆腐屋の一人息子として育った水島浩介が、医者の娘で学校一の優等生だった早瀬真愛を想い続けた10年間を描いた青春映画だ。


参考:齋藤飛鳥が明かす、初出演映画で感じた乃木坂46の活動との違い「最初はなかなか掴めませんでした」


 リアルサウンド映画部では、本作のBlu-ray&DVDのリリースを記念して、浩介役で主演を務めた山田とヒロインの真愛を演じた齋藤にインタビューを行った。Blu-ray / DVDの豪華版に特典として収められるビジュアルコメンタリーの収録を終えたばかりの2人に作品を振り返ってもらいながら、公開後の反応やお互いの印象の変化について話を聞いた。


ーーちょうどビジュアルコメンタリーの収録を終えられたばかりですが、作品を観たのは久しぶりでしたか?


山田裕貴(以下、山田):そうですね。でも、公開後に1回1人でお酒を飲みながら観たんですよ。「あ~いい映画だな~」って(笑)。


齋藤飛鳥(以下、齋藤):自分で(笑)。


山田:いやいや、みんながね(笑)。キャストの皆さんもそうだし、その仲のよかった感じとかも……1人で“あの頃”を思い出していました。


齋藤:私は久々に観たんですけど、自分のことがめっちゃ子どもだなと思いました。すっごい子どもに見えたんですよ。


山田:なんか大人っぽくなったもんね。


齋藤:何が変わったのかって言われると自分ではよくわからなくて。学生の役だからそれでいいんでしょうけど……。でも、今までは1人で観ていたので、今回山田さんと一緒に観るのはなんだか照れくさかったです(笑)。


山田:わかるわかる(笑)。それはありますね。映画が完成して初めて試写で観た時は、飛鳥ちゃんだけスケジュールが合わなかったので、今回一緒に観たのが初めてだったんですよ。それもあって恥ずかしかったですね。ちなみに僕は何か変わったところありますか?


齋藤:痩せました……よね?


山田:あぁ、そうですね。役作りで。


齋藤:……。


山田:だけみたいです(笑)。


齋藤:いや、私的には変わらない方がありがたいです(笑)。


山田:ちゃんと『情熱大陸』とか観てましたよ。ツイートしましたもん。


齋藤:ははは(笑)。


山田:やっぱり飛鳥ちゃんだけじゃなくて共演者の方々みんなそうですけど、僕的には“戦友”なので。一緒に同じ作品で戦った“仲間”なんですよね。


ーー完成披露試写会の際に、山田さんが「自分よりも共演者の方々が輝くように」と言っていたのが印象的でした。


山田:先輩の俳優さんによく言われるのが、「主人公は、周りのみんなが動かしてくれるものだから、みんなに任せたらいい」ということなんです。自分が動かそうとして一人歩きしたら、みんながついてこれなくなってしまうこともあるので、「みんなをみんなを……」という考え方は、主演をやらせていただく際には忘れないようにしています。飛鳥ちゃんは今回映画が初めてで、それを楽しみにしている飛鳥ちゃんのファンもいるわけじゃないですか。芸人を辞めて初めて映画に出た(遊佐)亮介もいたりして。そんなみんなの境遇によって、自分が役者を始めた頃を思い出したんですよね。そういう時に「こういう主演の人がいてくれたらいいな」と思える、最善で最高の主演の形ができたらいいなとは思っていました。


齋藤:山田さんは自分の思っていることをしっかりと行動に表してくださっていました。私だけではなく他のみんなもそれに気づいたからこそ、山田さんをすごく慕っていたんだと思うし、山田さんがやりやすい環境を作ってくれたんだなというのは実感しました。


ーー映画公開後、嬉しかった反応はありましたか?


山田:俳優仲間がかなり観てくれたのが大きかったですね。菅田(将暉)くんは、2018年の面白かった映画3本のうちの1本に入れてくれていましたから。


齋藤:へぇー! すごい。


山田:番組で言っていたらしくて。ファンの方が教えてくれたんですけど(笑)。同じ役者仲間がそういう評価をしてくれたのはすごく嬉しかったですね。それに、僕がどうとかではなくて、「“あの7人”がいいよね」と言ってくれる人が多かったんです。勘じゃないですけど、僕たち7人の空気感がそのまま映画に出たらよくなるんじゃないかなとなんとなく思っていて、僕自身も意識していたことだったので、そう思っていただける人がたくさんいたのは本当によかったです。


ーーギデンズ・コー監督による台湾オリジナル版のファンにも高評価だった印象です。


山田:あぁ、そうですね! 日本の監督さんの中にもオリジナル版のファンの方々が多くて、日本版リメイクが決まった時に「え、お前がやるの!?」みたいな声を結構いただいたんですよ(笑)。でも、公開後に「実際に観たらめっちゃよかった!」と言っていただいたりして。僕もオリジナル版は本当に面白いなと思っていたので、この作品では、何か違った形で日本ならではの良さを出せたらいいなと思っていました。


ーー今回ソフト化されるということで、劇場とはまた違った楽しみ方もできそうですね。


山田:セリフを喋っていない時の飛鳥ちゃんの表情がすごくいいんですよ。ふとした瞬間のふとした表情を切り取った画がすごくよかったりするので、そういう細かいところを是非チェックしてほしいですね。「あ、ここはこんな顔してたんだ!」みたいな、新たな発見をしていただきたいです。劇場だとそのまま時間が流れてしまいますけど、Blu-rayやDVDだったら止めて観ることができるので(笑)。


齋藤:私はコメンタリーを収録していた時に思ったんですけど、人よりも、後ろで動いているものだったり背景にある小道具だったりに目が行きました。例えば学校のシーンだったら、貼ってあるポスターだったり、黒板の落書きだったり……。私自身も現場ではあまり見れていなかったようなことも見れてまた新鮮な気持ちになりましたし、劇場ではどうしても人に目が行きがちになると思うので、そういう細かいところにも注目していただけたらと思います。


ーーこの作品が初共演となりましたが、お互いのイメージに何か変化はありましたか?


山田:最初はクールで大人しそうなイメージを持っていたので、うまく喋れるか心配だったんですよ。それこそ僕は嫌がられるタイプじゃないかとすごく気にしていたんです。でも、めげずに接していたら、しっかりと心を開いてくれたので……いや、実際のところ本人がどう思ってるのかはわからないですけど(笑)。


齋藤:(笑)。


山田:撮影でお芝居をやっていく中でも、作品に対する思いが垣間見える瞬間が何回もあったので、意外にも熱い人だということを知って、「あ~よかった」と思いました(笑)。しっかり温度がある“人間”なんだなって。最初は宇宙人っぽいというか……。


齋藤:えっ……宇宙人……!?


山田:いや、思考が結構飛び抜けていて、人より物事を考えているように見えるのよ。一緒に取材を受けていても、「あまり人に期待しすぎないことを大切にしてる」とか言っていて。「そんな言葉、20歳で出てくる!?」って(笑)。


齋藤:(笑)。


山田:でもそこが飛鳥ちゃんの良さだと思います。


齋藤:ありがとうございます。私も最初は絶対に苦手なタイプだと思っていたんですけど、そうではなかったなと。


山田:よかったわー。これで最後まで嫌な人だったら、もう最悪だよね(笑)。


ーーでは最後に、この『あの頃、君を追いかけた』での経験をとおして変わったことや得たものがあれば教えてください。


山田:僕自身は作品ごとにやり方とかを変えているつもりは全然なくて、ずっと同じスタンスでやってきているつもりなんですけど、この作品辺りから、周りのみんなから「変わった」と言われることが多くなってきたんです。それが大人っぽくなったということなのか、一皮剥けたということなのか、自分ではよくわからないんですけど、一緒に仕事をしたことのある方からも言われることが多くなってきたんですよね。それはたぶん、みんなが変えてくれたということなんです。自分自身が意識していないところで自信を持たせてくれたというか。特にこの作品は、主演という立場もあってそういうきっかけになる作品だったので、作品自体もそうですし、キャストの皆さんやスタッフの皆さんのおかげかなと。自分を変えてもらった作品になったんだなと実感しました。


齋藤:私はものすごく変わりました。そもそもこの作品がきっかけでお芝居に興味を持つようになったので、それはすごく大きな変化だなと。山田さんは褒めてくださいましたけど、私自身はセリフがない時の動きや目線をどうするかなど全くわからない状態だったので、「そういう細かいところもお芝居をしないといけないんだ」と気付かされたような気がしました。


山田:思うんですけど、“わかってないからいい”というところもあるんじゃないかな。わかってやっていたらお芝居になるけど、わからずに受けていたら本物になる。僕はそういうことを突き詰めたいなと思ってやっているから、そのままで全然いいと思います。


齋藤:あー、なるほど。ありがとうございます。


山田:すみません、最後に偉そうに(笑)。もうちょっとバカでいればよかった(笑)。


齋藤:いや、全然(笑)。すごくありがたいお言葉でした。(取材・文=宮川翔)