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WAKO’S 4CR LC500が激しいトップバトルを制して2013年以来の美酒。レクサスが2戦連続表彰台独占【スーパーGT第4戦タイ決勝】

2019年06月30日 22:21  AUTOSPORT web

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レース前半はau TOM’S LC500、後半はKeePer TOM'S LC500と激しいトップ争いを繰り広げたWAKO'S 4CR LC500
シリーズ戦のなかで唯一の海外戦となる、タイ・ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで争われた2019年スーパーGT第4戦決勝のGT500クラスは、6号車WAKO'S 4CR LC500の大嶋和也/山下健太組が激しいレクサス陣営内の激しいバトルを見事に制し、ポール・トゥ・ウイン。2013年第8戦もてぎ以来となる待望の復活勝利を手にした。

 真夏の亜熱帯、6月30日開催のタイでの66ラップ決戦は前日の曇り空から一転、決勝前現地時間13時25分(日本時間:15時25分)開始のウォームアップ走行から路面温度はぐんぐん上昇。決勝スタートの15時(日本時間:17時)には気温32度、路面温度48度の状況に。湿度も64%と、まさにタイらしい気候での勝負となった。

 前日のドライ路面で争われた予選では、WAKO'S 4CR LC500の山下健太がコースレコード更新の走りで自身初のGT500クラスポールポジションを獲得。同じくレクサス陣営の19号車WedsSport ADVAN LC500がフロントロウ2番手、そして36号車au TOM'S LC500、37号車KeePer TOM'S LC500も、それぞれ4~5番手に並び、LC500がトップ5に4台を送り込むなど、このチャンのトラックとの相性を感じさせる速さをみせた。

 一方、ホンダ勢は決勝を見据えたタイヤチョイスがグリッドに反映され、Q1トップ通過のARTA NSX-GTや、RAYBRIG NSX-GTはQ2進出で中団グリッドを確保したものの、陣営内で本命視されたKEIHIN NSX-GTはハード目のタイヤを選択したようで12番手。

 ニッサン勢も3番手にミシュラン(MI)のCRAFTSPORT MOTUL GT-R、7番手にヨコハマタイヤ(YH)リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが着けたもの、こちらもブリヂストン(BS)+12kgでここタイでの逆襲を狙っていたカルソニック IMPUL GT-RがまさかのQ1敗退の9番手、タイトルを争うMOTUL AUTECH GT-Rも10番手と、後方からの追い上げを期すことになった。

 フォーメーションラップを経てクリーンなスタートを切った隊列は、2コーナーまでのストレートでまずは4番手のau TOM'S LC500がCRAFTSPORT MOTUL GT-Rの前へ。レクサス陣営がトップ3を固め、ここからBS、YH、そしてMIのレースペースがどのように推移するかが最初の勝負に。

 その後方からはカルソニック IMPUL GT-R、ジェームス・ロシターが驚異的なジャンプアップを見せ、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rとともに一時はCRAFTSPORTの前に出るなど、KONDO、B-MAX、IMPULと3台のGT-Rがレクサス艦隊を追う展開となっていく。

 すると6周経過で先頭集団がバックマーカーの隊列に追いついたところで、36号車au中嶋一貴がさすがの嗅覚を発揮し、S字区間でGT300のマシンを絡めて19号車WedsSport ADVAN LC500の国本雄資を仕留め2番手へ。

 その後もau中嶋一貴は44kgのウエイトハンデ(WH)を感じさせない動きで首位を伺い、WAKO'S 4CR LC500大嶋和也の横にマシンを並べて揺さぶりを掛けていく。

 一方、中団ではペースに苦しむカルソニック GT-Rに対し、オープニングの攻防でポジションを落としていた37号車KeePer TOM'S LC500の平川亮が1コーナーで鮮やかなオーバーテイクを決め、GT-R追走集団の一角を崩すなど、平川亮がレクサス援軍として前方を追う形に。対照的にホンダ勢は1号車RAYBRIG NSX-GTが他車に追い出される形でオーバーランした模様で、8号車ARTA NSX-GTは5コーナーでスピンを喫してしまい、ともにトップ10圏外の下位に沈む苦しい展開となる。

トップのWAKO'S 4CR LC500を追いかけてレクサス陣営内の戦いが勃発

 レースが30分を経過し20周に入る頃には、常時1秒差以内だった首位攻防は1.4秒差へと開いていく。その後方、3番手のWedsSportは約5秒差まで遅れ、レースペースの相違が出始める。さらに5番手争いではCRAFTSPORTもジリジリと遅れ、21周目にはKeePer平川にポジションを明け渡してしまう。

 BS+LC500の勢いを駆る平川は、すぐさま前方のヨコハマタイヤ勢に迫り、WedsSport、リアライズコーポレーションとの三つ巴を展開。この3番手争いの先頭を引く国本は1分27秒台が精一杯。しかし後続は7番手DENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンも1分25秒台を記録し、この隊列に加わってくる。

 すると28周目にWedsSport、リアライズGT-Rが同時にピットへ。それぞれ4本交換で42.1秒、50.8秒の制止時間でコースへと復帰。すると同じタイミングのトラック上では首位攻防が動きはじめる。

 ピットアウト直後のWedsSport坪井に6号車WAKO'Sが行く手を塞がれる形となり、わずかにラインを乱した大嶋のインを突いた中嶋一貴がついに先頭へ(後にWedsSport ADVAN LC500坪井には黒白旗が提示される)。トップに立った36号車は、30周終了時点でピットインを決断し、6号車WAKO'Sも同時にピットインしてピットバトルに。

 するとこのピット作業で意地を見せたTeam LeMansは、44.0秒だったTOM'Sの36号車をピットロードで逆転しコース復帰。再び首位を奪還したWAKO'S 4CR LC500が山下健太のドライブでトップチェッカーを目指す戦いが始まった。

 すると2番手となったau TOM'S LC500関口雄飛も、追う側のテンションで執拗に6号車のテールを舐め、ヘアピンではサイド・バイ・サイドに並びかけるなど、首位の山下に大きく揺さぶりを掛けていく。

 その後方では平川からバトンを受けたKeePerのニック・キャシディが、タイヤ無交換作戦で浮上してきたKEIHIN NSX-GT、そしてピットウインドウ直前のスパートで上がってきたDENSO LC500を35周目に立て続けにオーバーテイクし、ついに3番手を手に入れる。

 このまま上位レクサス勢のハイテンションバトルが続くかと思われた37周目、ホンダファンにとっては目を覆いたくなるような光景が。MOTUL MUGEN NSX-GTとRAYBRIG NSX-GT、そしてARTA NSX-GTのホンダNSX3台が絡むクラッシュが発生し、ARTAはストップ。翌周にはセーフティカー(SC)が導入し、各車のバトルは完全な仕切り直しとなってしまう。クラッシュしたMOTUL NSX-GTはガレージにマシンを入れてリタイア、RAYBRIGもガレージにマシンを入れ、ジェンソン・バトンがマシンを降りることになった。

 41周目にホームストレート上で2クラスのリグループを経て、43周目からリスタートが切られると、わずかにギャップを築いた首位山下に対し、2番手TOM'S同士の攻防がヒートアップ。

 ターン3のヘアピンで関口のインに飛び込んだキャシディだが、並んだままコーナーをクリアした2台は立ち上がりでわずかに接触し、3コーナーアウトに弾かれたau TOM'S LC500はスピードバンプに乗り上げジャンプ。火花を散らしてハードランディングし、DENSO、WedsSport、そしてリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rにも先行される手痛いダメージを負ってしまう。



 さらに45周目には首位のWAKO'Sに迫ったキャシディが、同じ仕掛けで山下健太に襲いかかるも、これを軽いコンタクトとクリーンな並走で退けた山下が"猛獣"キャシディからポジションを守る力走を見せる。

 40周時点での路面温度は43度とスタート時点とほぼ横ばいながら、47周目の最終コーナーではリアライズGT-Rの高星明誠がDENSO中山雄一をかわして5番手に浮上してくる。

 その後もSC明けで再び300の隊列に追いついた先頭争いは、山下が懸命のディフェンスを見せながらバックマーカーを処理していく、クレバーなドライビングでリードを堅守。

 残り10周時点で首位WAKO'S、2番手KeePerとのギャップは約1.5秒。その後方にはWedsSport、リアライズのヨコハマ勢が続き、ブリヂストンを履くDENSOとのマージンを広げるペースを見せていく。一方で関口のau TOM'S LC500はやはりマシンバランスが崩れたか、唯一の燃料リストリクター1ランクダウン措置を受けるZENT CERUMO LC500にもかわされ、8番手と苦しいレースに。

 レースはそのままのポジションで首位攻防を守り抜いた6号車WAKO'S 4CR LC500が2013年第8戦もてぎ以来、6年ぶり悲願の復活勝利で脇阪寿一に監督初優勝をプレゼント。2位にWH38kg搭載ながら躍動のバトルを演じたKeePer TOM'S LC500、3位WedsSport ADVAN LC500が続き、レクサスが前戦鈴鹿に続く表彰台独占の結果となった。

 後半スティントを見事なドライビングで守り抜いた山下が「最高のピット作業で1番にコースに返してくれて。『これはもう絶対守らなくちゃ』と頑張りました」と語れば、エースとしての役割をまっとうした大嶋も「最初は緊張したし、ピット直前でバックマーカーと絡んだり申し訳なかったけれど、チームが最高の仕事をしてくれた。 山下のドライビングも完璧だったし、メンバー全員で勝ち取った勝利」と安堵の表情を見せた。

 開幕戦での大不振から一転、レクサス躍進の前半戦を終え、シリーズはいよいよ後半戦へ。続く第5戦は8月3~4日、富士スピードウェイでの真夏の500マイル戦が待ち受ける。