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マキシマム ザ ホルモンがライブハウスに帰ってきた 復帰ツアー最終公演で放った尋常じゃない熱量

2019年06月30日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

マキシマム ザ ホルモン(写真=浜野カズシ)

 6月1日に開催された八王子Match Voxを皮切りに、Zepp DiverCity Tokyo(6月5日)、Zepp Osaka Bayside(6月13日)、新木場スタジオコースト(6月19日)、Zepp Nagoya(6月25日)の5本を回ったマキシマム ザ ホルモンのツアー『これからの麺カタコッテリのTOURをしよう <SEASON1>』。昨年9月中旬にダイスケはんの重度の頚椎椎間板ヘルニアにドクターストップがかかり、以降のフェス/イベント出演をすべてキャンセルして以来の、待望のライブ再開である。そして、その休止の間=2018年11月にリリースされた漫画+CD作品『これからの麺カタコッテリの話をしよう』に収められた曲たちが、初めて生で聴ける場でもある。というわけで以下、そのツアーの最終日、6月25日のZepp Nagoyaのレポをお届けする。


参考:マキシマム ザ ホルモン、なぜ2号店を開店? デビューライブを観て感じたこと


 この日のゲストは、名古屋が地元のcoldrain。「VENA」「ENVY」「No Escape」「F.T.T.T」と、頭からトップギアで必殺曲を連発していく。Masato(Vo)、「前から後ろまで! 右から左まで! Zepp Nagoyaが壊れるくらい揺らしていきますよ!」とアオリまくり、フロア&2F席をギュウギュウに埋めた腹ペコたちはヘドバン等でそれに応える。


 で、Masato、MCも熱い。高校の時に先輩から『延髄突き割る』を勧められ、ふざけたタイトルだと思ったが聴いて衝撃を受け、それまで洋楽しか聴けなかった自分が盲目だったと思ったこと。チケットが取れないので、ホルモンを観たくて同じ<VAP>に入り、このZepp Nagoyaでホルモンを観たこと。遠くにいたホルモンにやっと少しは届き始めたと思ったのが、『ガチンコ ザ ホルモン』に呼ばれた時だったこと(YouTubeの「マキシマム ザ ホルモン2号店」オーディション企画に出演した)。「でも「おまえらがホルモン3号店だ」とか「名古屋は任せる」とか言われるかと思ったらそういうのがなくてムカついた、3号店になれるかどうかはお前らが決めてくれ!」と叫び、ホルモンの「絶望ビリー」のカバーをぶちかます。ホルモンに負けず劣らずクソ重くクソ速いバンドサウンドと、3人分のボーカルをひとりで担うMasatoの歌に、フロアは熱狂した。すっごいエネルギー。歌い終わってMasato、「しんどいわ!」。


 そして後半では「オファーをもらったら返すのが礼儀」と、2020年2月1日と2日にポートメッセなごやで行うcoldrain主催フェスへの出演をこの場でホルモンにオファーする。「みんな証人になってくれ! 『#絶対出ろよホルモン』って付けてつぶやいてくれ! ホルモンに捧げます」と、最新曲「REVOLUTION」を投下。そしてラストの「The Revelation」の前で、フロア最前を指して「信じられねえんだけど、俺にホルモン教えてくれた先輩がそこにいんだよ! オオタケさんありがとう!」と、興奮しながらお礼を言うMasatoだった。


 さてホルモン。僕は6月5日のZepp DiverCity Tokyoと19日の新木場スタジオコーストも観たのだが、「握れっっっっっっっっ!!!!」でライブがスタートした瞬間、ふたつの点でびっくりした。


 ひとつめは「音、でけえ!」。先の2本と比べるとギターもベースもドラムも格段にボリュームが大きくて、しかもガッチガチに固くて、壁をビリビリさせるようなグルーヴがZepp Nagoyaを包む。ふたつめは、「客、熱い!」だ。先に観た2本も……というかいつだってホルモンのライブは客がみんな超熱いが、ファイナルってことも関係しているのか、あきらかに、さらに熱いことになっていた。2曲目「シミ」が始まった時のヘドバンの勢いのすごさに、思わずナヲちゃん、イントロで「んうあーーーっ!!!」と叫ぶ。もともと、演奏していて昂ぶるとこのように叫ぶことがある人だが、これ以降もこの日は特に、叫ぶ回数が多かった気がする。


 MCで「coldrainと名古屋でファイナル、どういうことかわかる? 名古屋がボン!(=爆発)ですよ!!」と、腹ペコたちにさらにガソリンを注いでいくナヲちゃん。続く「maximum the hormone Ⅱ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」では、サビでリズムが打ち込みになるたびに前へ出て、ヘッドセットマイクで歌いながらMVの振りで踊る、という一幕も。


 さっきのMasatoのフェス出演オファーに対しては、ナヲ「先に言っとくわ! こういうところでライブのオファーとか、ほんとずるぽ! 断ります!」。フロア爆笑。ダイスケはんが「あと俺、coldrainがデビューした時、雑誌のインタビューで読んでんけどー」と言うと、「あ、あたしも読んだ! P.T.P.(Pay money To my Pain)がいたからVAPに入ったって言ってた! あいつらバンドヤリチン!! 」。フロア、さらに爆笑。さっきのオオタケ先輩をいじることも忘れない。ナヲ「てっきりMasatoがゲストで入れてあげたんだと思ったら、ガチでチケット取って来たんだって! すごくない?」。


 セットリストは、僕が観た3本とも約半分は毎回違う内容だったが、その中でもこの日はちょっとコア度が高い感じ。新曲の「maximum the hormone Ⅱ」も、「G’old~en~Guy」も、これまでのホルモンにはありそうでなかったアレンジや曲展開が新鮮。ダイスケはん、「爪爪爪」でパッドを叩いたり、「G’old~en~Guy」ではシンセを弾いたり、先述の「maximum the hormone Ⅱ」ではナヲちゃんの脇で一緒に踊ったりと、愉快なMC&すさまじいスクリーミング以外でもいろいろ活躍している。


 3台のミラーボールが華やかに回る中、「恋のスペルマ」で本編が終了。アンコールは、ナヲちゃんがフロントに出て「ドンキで買った」赤いスカートを穿き、「1,2,3,4おじさん」に扮したダイスケはんがドラムを叩く「拝啓VAP殿」でスタート。ナヲちゃん、サビのダンスも、2コーラス目のAメロで不機嫌な顔で亮君と上ちゃんのサングラスをむしり取るところも、同曲のMVをトレースしてみせる。


 そして「ROLLING1000tOON」「上原~FUTOSHI~」をプレイ後、「このツアー、今日で終わりですけど、<SEASON 1>ということは!」と、<SEASON2>があることを発表する。その喜びも相まってか、ラストの「恋のメガラバ」に合わせて腹ペコたちから起こったシンガロングとハンドクラップ、今日イチの、えぐいくらいのボリュームだった。


  ダイスケはんのヘルニアが悪化して当分ライブができなくなる、しかも当初はすべてのフェス出演が終わってからそれを発表して休むつもりだったが、数本を残した状態でドクターストップがかかって、キャンセルせざるを得なくなったーーというマイナスな状況を、レーベル移籍および新作リリースの情報と一緒に、ダイスケはんの病状を鑑みて「スクリーミング&ヘドバンなし」の新曲と同時に発表する。


 昨年9月のホルモンの、まさに「転んでもタダでは起きない」手腕には唸ったが、この復活ツアーにはそれ以上に唸らされた。アイデアの見事さ以上に、ライブの現場における肉体の爆発がとんでもなくて。


 ライブ休止期間も、リリースとかイベントとか記者会見とか、「マキシマム ザ ホルモン2号店」プロジェクトとかでいろいろ動いていたので気がつかなかったけど、ライブをやれないというのはこの人たちにとって本当にストレスなんだなあ、逆にライブをやれるというのは本当にかけがえのないことなんだなあ、という事実を、改めて突きつけられた気がした。あたりまえか。いや、あたりまえなんだけど、だとしても。


 このあとのホルモンは、エグいくらい夏フェス出まくって(6月28日時点で発表されているだけで14本)、後半はそれと並行して<SEASON 2>がスタートする。(兵庫慎司)