「今日は1回目のフリー走行からマシンの感触が良くて、マシンをプッシュできた。先週のフランスGPよりもかなりいい感じだし、ポジティブな一日だった」
そう言ってF1第9戦オーストリアGPの初日を振り返ったのは、前戦フランスGPが母国グランプリだったのにも関わらず、予選・レースともに満足のいく結果を出せなかったピエール・ガスリーだ。ドライバーとしての母国グランプリは終えたが、今週はチームにとってホームレース。2週連続で不甲斐ない結果を残すわけにはいかない。プレッシャーがかかる中、ガスリーは初日3番手につけた。
ガスリーがマシンに好感触を得ているのには理由があった。初日3番手は、ガスリーがレッドブル・ホンダに来てから、初日の成績としては最高位だったからだ。今シーズンのガスリーの初日の順位は、次の通りだ。
開幕戦オーストラリアGP→4番手
第2戦バーレーンGP→12番手
第3戦中国GP→10番手
第4戦アゼルバイジャンGP→9番手
第5戦スペインGP→7番手
第6戦モナコGP→4番手
第7戦カナダGP→12番手
第8戦フランスGP→8番手
ただし、ガスリーは「順位は3番手だけど、トップ(シャルル・ルクレール/フェラーリ)からはまだ0.4秒遅れているから、明日に向けてマシンからさらにペースを引き出せるよう、今夜作業を怠らないようにしないといけない」と引き締めていた。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターも「通常、上位にいるはずのドライバーの名前が今日は見当たらないので、喜ぶのはまだ早いです」と、タイムシートの結果がそのまま実力を現したものではないことを示唆する。
■マックス・フェルスタッペンのクラッシュは、今後のレースに影響か
この日のレッドブル・ホンダにとって、もうひとつ頭が痛いのはマックス・フェルスタッペンがクラッシュしたことだ。この日のレッドブルリンクは東風が向いており、最終コーナーは追い風だったため、ここで挙動を乱すドライバーが少なくなかった。
初日8番手に終わったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)もクラッシュこそしなかったが、コースアウトしていたほどだった。フェルスタッペン自身も、「クラッシュしてしまったけれど、クルマのフィーリングは良かったし、今週の僕たちはコンペティティブだと思う」と、ガスリー同様、手応えを感じている。
問題はクラッシュしたこと自体ではなく、クラッシュしたことでパワーユニット(PU/エンジン)にどんなダメージが及んでいるかということだ。幸いこの日、フェルスタッペンのマシンに搭載されたパワーユニットは、フランスGPで投入したスペック3ではなく、いわゆる金曜日エンジンと呼ばれている旧スペックであるため、たとえダメージを受けていたとしても、金曜日の夜にスペック3に積み替えるため、今回のオーストリアGP予選と決勝にはまったく影響はない。しかし、この金曜日エンジンがフリー走行で使えなくなると、今後のグランプリの計画は大きく変わってしまう。
「詳細な検査はサーキットでは行えないので、HRD Sakura(栃木県の本田技術研究所)へ返すことになります。もし、そこで使えないという判断が下されると今後の予定が大幅に狂うため、悩みどころです」
初日3番手発進でも、心の底からまだ喜べないレッドブル・ホンダだった。