スーパーGT、2019年シーズンの折り返しにあたる第4戦タイ。今週末のタイでの戦いは、差が詰まったチャンピオン争いに向けてどのチームも取りこぼしのできない、重要な一戦になる。金曜日の搬入日の現地の取材から、GT500クラスの戦いのポイントを探った。
まずは事前情報として、今回は第3戦鈴鹿でアクシデントに遭ってしまった2台の近況から。#12のカルソニック IMPUL GT-Rは接触によってラジエターの水が漏れ、エンジンブローしてしまったため、このタイにはニューエンジンで臨むことになった。ただ、スペック2というよりも、スペック1の改良型となるようだ。
また、第3戦鈴鹿の最終コーナーでイン側のガードレールにクラッシュしてフロント部が大破してしまった#17KEIHIN NSX-GTは、一時はモノコック交換確実とまで言われる損傷ぶりだったが、その後のチェックで交換には至らず、修復することができたという。ただ、モノコックのチェック、そして修復に約1週間掛かったため、船便には間に合わず、空輸でこのタイにマシンを持ち込むことになった。KEIHINの金石勝智監督が話す。
「船便には全然、間に合いませんでしたが、1週間くらいで修復してメカニックが頑張ってくれましたので、空輸でなんとか間に合いました」と金石監督。
「今年はこれまでなんとなくチャンスがある位置にいるんですけど、最後のひと噛みが噛み合わない展開がずっと続いている。タイは毎年、ケーヒンさんの大応援団が来てくれるので、鈴鹿からここまでチームとして苦労した分、いろいろな意味でも優勝したいという気持ちがあります」と、今週末への意気込みを語った。
今週末のタイのGT500の優勝候補としては、前述のカルソニック(ウエイトハンデ/WH13kg)、そしてKEIHIN(WH13kg)、さらにはウエイトハンデとこれまでのタイでの実績を考慮すると、昨年だけでなく、2016年から3年連続で2位表彰台を獲得している大嶋和也のWAKO'S 4CR LC500(WH28kg)が優勝候補に挙げられる。チーム・ルマンにとっても久しく優勝から遠ざかっているだけに、今週末のタイ戦では悲願の優勝に向けて大きなチャンス到来となる。
また、WAKO'Sと同じWH28kgのDENSO KOBELCO SARD LC500、そしてWH22kgの王者RAYBRIG NSX-GTの名前が挙げられ、そこにタイのコンディションを得意とするヨコハマタイヤ陣営が挙げられる。MOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀が話す。
「今年は結果を残せそうで残せていないですけど、クルマも軽いのでアドバンテージはあると思っています。もともとこのタイを得意としているパッケージだと思いますし、自分も相性がいいと思っているので流れはいいんじゃないかと思います」
■年間2基で厳しいGT500エンジン戦争。1基目ラストのタイでどこまでパフォーマンスを発揮できるか
「今年は他のNSXと比べても予選ではいいので、今の僕らのネガティブな部分である決勝ペース、特にスティント後半のペースダウンについてフォーカスしたタイヤ、改良を加えたタイヤを持ち込んでいます」と武藤。WedsSport ADVAN LC500、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rと3台のヨコハマタイヤ勢が得意のタイでどんなパフォーマンスを見せるのか、まずは予選日からそのタイムが注目される。
また、ウエイトハンデが重いトップのZENT CERUMO LC500(WH53kg)、ランキング2位のMOTUL AUTECH GT-R(WH49kg)、au TOM’S LC500(WH44kg)も、それぞれのメーカーのトップを守るだけでなく、チャンピオンシップのライバルメーカーにも負けるわけにはいかない。そして、今年は第1戦がハーフポイントになっていることからも、例年以上にポイント差が詰まっている。その点を踏まえて、MOTUL GT-Rの監督にしてGT-Rの開発責任者でもある鈴木豊監督が今回の展望を話す。
「去年は予選の雨で、路面が乾くタイミングに賭けたのが裏目に出てしまった。今年はドライもしっかりしているし、ウエットも開幕戦でもお分かりのように、負けているところはありますけど、勝っている部分もあって、十分勝負ができるとことにいる。去年のようにギャンブルのような戦略を取ることなく、戦えると思っているのが今年の強みです」
「シリーズを考えれば38号車(ZENT)を見ながら、という戦い方にはなると思いますが、(ランキングの)その後ろも非常に詰まっていますので、このタイと次の第5戦富士でチャンピオン争いのふるいに掛けられる部分が出てくると思いますので、まずはそこにしっかりと付いてく着実なレースをしたいと思います」と鈴木監督。
ニッサンGT-R陣営としてはこのタイでカルソニック以外のエンジン交換はなく、ホンダ陣営、そしてレクサス陣営ともに「前戦と同じエンジン」を搭載とのこと。今年は年間2基のエンジン使用基数のため、この第4戦終わりで1基目を終了し、次の富士戦から2基目のスペック2を投入するのが基本のパターンになりそうだ。
それでも金曜搬入日の時点でタイのチャン・インターナショナルサーキットは最高気温が35度を越える酷暑となっており、エンジンには非常に厳しいコンディションとなる。そして3戦を経た1基目の最後のレースとなるため、エンジンのライフが厳しい状態であることはどのメーカーも同じ。なかにはエンジンブローを覚悟しているメーカーもあるようだ。