ドラマ「ホームレス中学生」に主演した元俳優・黒木辰哉容疑者(24)が窃盗容疑で逮捕され、特殊詐欺グループに関与した疑いをかけられている。6月27放送の『バイキング』(フジテレビ)でもこの事件を扱った。芸能リポーターが、「(詐欺を行うために)役者としてのスキルを活かした」と推測したところ、MCの坂上忍さんが、「はあああああ?それはないわ!!」と声を荒げる場面があった。
黒木容疑者は11年前の2008年、お笑いコンビ麒麟(きりん)の田村裕さんの生い立ちを綴ったベストセラー「ホームレス中学生」のドラマ化で、約100人の中から主役に抜擢された。初めての主演で現場に気を使う明るい性格だったというが、近年は目立った俳優活動はしていない。(文:okei)
「プライドを捨てないと、安易な金の稼ぎ方のほうに行きがち」
番組によると、黒木容疑者は警察官を装って「銀行データが流出している」と電話をし、一人暮らしの87歳女性宅を訪問。キャッシュカード4枚を封筒に入れた偽物とすり替えて盗んだ容疑で逮捕された。女性の口座からは500万円が引き出されたという。典型的なアポ電詐欺で、警察は特殊詐欺グループの「受け子」「出し子」の疑いでも調べている。
芸能リポーターのあべかすみさんが、一度有名になったが俳優の仕事がなくなった黒木容疑者が、生活苦から短時間で高額の収入が得られる特殊詐欺に手を染めたと背景を推測。
「(今回の詐欺は)警察官にも弁護士にもなれるというような、役者としての経験・スキルを活かせる。そこにつけ込まれる可能性もあるんじゃないか」
と話すと、途中でMCの坂上忍さんが「はあああああ?それはないわ!!」と憤りをあらわに絶叫した。
俳優として、また子役から活動していた共通点もある坂上さん。一瞬だが役者としてのプライド、逆鱗に触れたのかもしれない。しかしすぐに落ち着きを取り戻し、「あべさんの言う通り、一回顔が売れて、芝居の世界でメシが食えなくなってバイトに行くとなると、気持ち切り替えないと生き辛いですよね」と、俳優の大和田獏さんに水を向けた。
大和田さんは「妙なプライドがついちゃうとなかなかできないけど、みんなそれやってるよね」「プライド捨てなきゃ生きていけない」とコメント。坂上さんは、「(それが)できないと、安易な金の稼ぎ方のほうに行きがちだとは思う」と感想を口にした。
特殊詐欺に利用される若者が急増、注意喚起
番組に出演した詐欺・悪徳商法ジャーナリストの多田文明氏も、詐欺グループにとって有名人は利用しやすいと説明した。詐欺グループはお金を持ち逃げされると困るが、有名人だとその心配がなく、抜けようとしても「世間に知らせるぞ」と脅せるので抜けにくくなるという。
しかしこうしたことは他人事ではなく、近年、特殊詐欺の受け子として逮捕される10代20代の若者が急増している。警視庁が公表している2018年の特殊詐欺検挙数を見ると、少年の検挙人員は749人で前年比プラス269人と増加傾向にある。
少年の検挙人員の約8割(75.6%)が末端である「受け子」だ。背景には、ネットを介した募集や、友人同志で勧誘し合うなど、簡単につながれる土壌がある。一度でも関わればSNSで学生証や免許証と顔写真を拡散すると脅され追い込まれるという。
坂上さんが、「安易な金の稼ぎ方のほうに行きがち」と言ったが、それは売れなくなった俳優だけの話ではなく、認識が甘くなりがちな若者にも言えることだ。若い人は、利用されないよう、くれぐれも注意してほしい。