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マイヘア、OAU、PELICAN FANCLUB、フレンズ、キノコホテル……個性あふれるバンドの新作

2019年06月25日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

My Hair is Bad『boys』(通常盤)

 奔放な創作意欲を叩きつけるように音源に刻み込んだMy Hair is Badのニューアルバム、超話題のドラマ&映画の主題歌をコンパイルしたOAUのニューシングルなど、個性あふれるバンドの新作を紹介。こちらの予想を遥かに超えるような飛躍を遂げた充実作、衝撃作ばかりだ。


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 赤裸々という言葉では間に合わないくらい“感情そのまま”の歌、ライブの空気感を直接刻み込んだかのようなバンドサウンドを両軸にした前作『hadaka e.p.』のリリース後、間髪入れずに制作に入り、あふれ出す創作意欲をどこまでも奔放に注ぎ込んだ4枚目のオリジナルフルアルバム『boys』は、一瞬一瞬カタチを変えていく刹那的な感情、大切な人との肉体的な交歓と切ない別れ、そして、この先の未来に対する不安、希望、葛藤などを生々しく映し出した、“これぞマイヘア!”を更新する作品となった。ちょっとでもボンヤリしていると、瞬く間に忘却の彼方へ過ぎ去ってしまうあらゆる出来事を、できるだけそのままの姿で残しておきたいーーこのバンドは本気でそう願っているのだと思う。夏が始まる前に、ぜひ。


 現在、大きな注目を集めているドラマと映画の主題歌2曲を収めた両A面シングルであるOAUの『帰り道 / Where have you gone』。西島秀俊、内野聖陽の好演が光るドラマ『きのう何食べた?』の主題歌「帰り道」は、アイルランド音楽のテイストを取り入れたオーガニックなサウンドとともに、〈思い出してよ/おかえりの//声が聞こえた日のことを〉というフレーズが広がるミディアムチューン。日常の幸せの素晴らしさ、かけがえのなさを普遍的なメッセージへと昇華した楽曲だ。東京新聞・望月衣塑子の著作を映画化した『新聞記者』の主題歌「Where have you gone」はブルースを基調にしたアレンジと壮大なメロディラインがひとつになったナンバー。細美武士の声も重なる〈Where are you gone(あなたはどこに行ったのか)〉という切実な響きを、権力と報道をテーマにした映画とともに噛みしめてほしい。


 昨年11月にミニアルバム『Boys just want to be culture』でメジャーデビューを果たした3ピースバンド、PELICAN FANCLUBの新作EP『Whitenoise e.p.』。リードトラック「ベートーヴェンのホワイトノイズ」がとにかく素晴らしい。シューゲイズ、ポストロック、ドリームポップといったルーツミュージックをさらに深く肉体化し、美しさ、儚さ、切なさ、危うさを同時に放ちながら、圧倒的なカタルシスを讃えたサビのメロディに突入するこの曲は、彼らの音楽的スタイルをわかりやすく示すとともに、あらゆるリスナーに開かれたポップネスを体現している。〈僕も君も人間だった〉というあまりにも本質的な歌詞にしっかりとした説得力を持たせるエンドウアンリ(Vo/Gt)のボーカルも強烈。


 映画『今日も嫌がらせ弁当』主題歌の「楽しもう」、ドラマ『きのう何食べた?』エンディングテーマの「iをyou」を収めたニューシングル『楽しもう / iをyou』。軽快なシャッフル系のリズムで体が動き出し、日々の嬉しさ、切なさ、愛らしさを反映したかのようなメロディで心が解放される「楽しもう」は、曲名通り、“日常を楽しもう”という前向きな思いに満ちたポップソング。一方、ソウルミュージックの香りを漂わせながら、上質な手触りの旋律と〈この先ずっと君と/手と手つないでいたいな〉というフレーズをナチュラルに響かせる「iをyou」は、大切な人に対する切実で豊かな感情を反映させたラブソング。ポップミュージックの滋味をたっぷりと堪能できる、フレンズの魅力をストレートに告げるシングルだと思う。


 ガレージロック、サイケデリック、パンク/ニューウェイブなどをルーツにした音楽性で異彩を放ちまくるキノコホテルの7thアルバム『マリアンヌの奥儀』は、支配人・マリアンヌ東雲(歌と電気オルガンほか)と以前から交流があったという島崎貴光 (SMAP、w-inds.、AKB48など)を共同プロデューサーに迎え、「踊れるキノコホテル」 をコンセプトに掲げて制作。ディスコ、歌謡、ロックンロールが混ざり合うダンスナンバー「ヌード」、ブラス、ストリングスを交えたゴージャスな音響とセクシーで切ないメロディが響き合う「愛の泡」など、キノコホテルの個性がポップに昇華された作品に仕上がっている。艶めかしくも鋭利なボーカルが際立っているのも本作の魅力だ。(森朋之)