2019年F1第8戦フランスGPは、メルセデスのルイス・ハミルトンが今季6勝目、第5戦スペインGPから4連勝を達成した。F1ジャーナリストの今宮純氏が週末のフランスGPを振り返る。
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席巻するメルセデスとハミルトン。いま彼らは圧勝した栄光の史実を再現している。メルセデス初勝利は1954年にランスで行われたフランスGP、それから1955年まで2シーズン12戦に9勝。フェラーリに3勝を許したものの勝率は<75%>に達した。
F1第8戦フランスGPもハミルトンがポール・トゥ・ウイン、今季8戦6勝は<勝率75%>だ。さらに注目するとPUシーズンになってからの108戦に82勝、そう<勝率75%>を超えている。彼らはいま、1950年代にタイムスリップしたかのような「第2次メルセデス席巻時代」を再び繰り返しつつある。
今年のポール・リカールでもハミルトンは、金曜最初のセッションをリード、第6戦モナコGP、第7戦カナダGPにつづいてチームメイトのバルテリ・ボッタスを抑えていった。いきなりスイッチオン、あちこちで滑りながら、イニシャル・セッティングのダメ出しをするかのようにプッシュ。
自分の限界域を探り出すアプローチで周回し、得られた感触とデータファイルをチェック、エンジニアとともに取り組む協業に入った。
フリー走行中にカナダでは珍しくミスがあったが、フランスGPでもスピン、フェルスタッペンと交錯する場面があった。これらはさらなる限界点を追求する過程で起きたインシデント、彼のコメントに焦りや迷いは感じられない。むしろ予選、決勝に向け自分自身を高め、プラス方向に修正するためのトライ・アンド・エラー、自分を鼓舞するために。
突風が吹いた予選Q3でのラストアタックがいい例だ。ボッタスや他のドライバーたちがセクター3の最後で乱れても、ハミルトンは切り抜けている。我々には“マジシャン”みたいに見えたコントロール技、2番手ボッタスは「彼の方がいい仕事をしたんだ」と言わざるを得なかった……。
決勝のスタート・タイミングが今回はやや早めに感じられた。しかしハミルトンは自分をスタートに合わせるのではなく、スタートを自分に合わせるかのように発進した。そう見えるくらい美しいダッシュを決め、千載一遇のチャンスをボッタスとルクレールにも与えなかった。
それからは53周をリード。ファイナルラップに29周してきたトレッド表面が変化しているハードタイヤで、1分32秒764を出す。しかし、新しいソフトタイヤを装着したベッテルが1分32秒740の僅差で優り、なんとかフェラーリが最速ラップ=1点獲得。だがこの最終盤に“0.024秒差”で走破可能なメルセデスの潜在力を、ハミルトンは見せつけた。
彼らの独走と連勝を見つめた6万人のなかに感動したファンはどれだけいたのだろう。これまでもシーズンを席巻するマクラーレン・ホンダ~フェラーリ~レッドブル・ルノーに、「退屈症候群だ」と皮肉る表現が言われた。それは認めても勝ちつづけていく彼らの闘いには、感銘する部分がたしかにある。ハミルトンとしてはそれをすこしでも分かって欲しいと、そう思っているのだろう――。
周りにライバルがいるのに競わず、バトルを仕掛けないレースなどありえない。ルノーのダニエル・リカルドは最後の8コーナーで行った。そして一連のスリリングなプレーに“5秒タイム・ペナルティ×2”が下され、11位に降格。
ランド・ノリス(マクラーレン)/リカルド/キミ・ライコネン(アルファロメオ)/ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)たち四者が魅せたアクション・プレーはこのレース最後で最初の(?)の見せ場だった。きわどい攻防戦にもぶつけずぶつからず、4人は戦い尽くしてゴールしたが結果裁定は覆った。
ルールブック上、リカルドのプレーは許されないふたつの行為と判断された。モナコGPから3戦続いて競技終了後に順位が変わる事態が起きたのは記憶にない。いまのGPドライバーたちは平気でルールを無視する者ばかりなのか――。
審判団がゴール後に順位判定するようなコンプライアンス遵守のF1に変わったのか――。FIA、リバティ・メディア、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の関係者は真摯に受けとめ、対応すべきところにきているのではないだろうか――。
ともあれ今季6勝、<勝率75%>の首位ハミルトンは、2位ボッタスを36点リード。外からは退屈なシーズンに見えても彼にとっては6冠王への内なる闘争が日々つづく。今週連戦のオーストリアGP金曜FP1もトップ発進か。