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音楽制作ツール BLOCKS、ポータブルシンセ OP-1…曲作りに使えそうなガジェット楽器3選

2019年06月25日 11:11  リアルサウンド

リアルサウンド

BLOCKS

 楽器とは思えない個性的なフォルムや、既成概念をぶち壊す奇抜な演奏法、そして何より、おもちゃ感覚で演奏できる楽しさ。そんな多彩な魅力を持つ「ガジェット楽器」は昔から多くの人々により親しまれてきたが、ここ最近はテクノロジーの進化や、画期的なアイデアを持つ開発者の増加により、各メーカーからユニークかつ斬新な製品が、次々に発表されている。


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 ただ触っているだけでもテンションの上がるガジェット楽器だが、これを「曲作り」に用いてみると、思いがけないアイデアが湧いてくることがある。いつもとは違う音色を、いつもとは違う「演奏法」によって奏でているうちに、普段とは違う脳の部位を刺激されるのかも知れない。何より、「機能制限」の多いガジェット楽器には、その限られた範囲内で工夫する楽しさがあるのだ。


 そんなわけで、今回は筆者が最近気になっている「曲作りに使えそうなガジェット楽器」を3つほど選んでみた。


 まずは、イギリスの楽器メーカー・ROLIが発表した、世界的に話題の音楽制作ツール「ROLI BLOCKS」から紹介したい。昨年12月に日本上陸したばかりのBLOCKは、まずそのコンパクトなサイズに驚かされる。タテヨコ10センチで、重量は250グラム。ポケットの中に余裕で収まるこのBLOCKSは、iPhoneなどのデバイスと連動して使う。設定は、専用アプリ「NOISE」を立ち上げ、Bluetooth接続するだけ。音色の切り替えや録音・再生などの操作はアプリで行い、BLOCKをタップしたり、スライドしたり、押したりすることによって音色を変えていく。


 発想としては、KORGのKAOSS PADシリーズやKAOSSILATORシリーズに近いものがあるが、BLOCKの方が格段にコンパクト。それに、デバイスを簡単に追加接続ができるため、BLOCKを複数台並べたり、ライブ・コントローラーLive Block、ループ・コントローラーLoop Blockなどと接続したり、スタイルに合わせて自由に組み上げていくことができるのである。


 これで簡単なビートや、ちょっとしたシンセフレーズなどを作り、それに合わせてギターを弾いたりしたら、色々とメロディが浮かんできそうな気がする。


 続いて紹介するのは、スウェーデンのメーカー・teenage engineeringから発売されたポータブルシンセサイザー、OP-1。シーケンス機能やサンプリング機能も搭載されているため、これ1台あれば作曲から演奏、録音まで出来るという優れものだ。


 最近、ソロプロジェクト・warbearを始動した元Galileo Galileiの尾崎雄貴が、「OP-1を持ち歩いて、思いついた楽曲の断片の録音などメモ代わりに使っている」とインタビューで話してくれ、それで興味を持ったのだが、とにかくこのOP-1、ルックスが可愛すぎる! いかにも北欧っぽいカラーリングやアイコンの配置など、インスピレーションを大いにかき立ててくれるのだ。


 シンセやリズムマシンで演奏(シーケンス演奏)させたフレーズは、Tape機能で録音していく。ここがOP-1の最もユニークなところ。カセットMTRをイメージしたマルチトラック録音機能になっており、テープの速度を微妙に変えたり、その際のうねるような「テープサウンド」を再現できたりするのである。


 パソコンに搭載された本格的なDAWソフトに比べたら、機能は遥かに少ないが、だからこそ湧いてくるイマジネーションもきっとあるはず。これこそガジェット感覚で楽しむ作曲ツールである。


 そして最後に紹介するのが、アナログモジュラーシンセサイザーを数多く開発し、世界中のシンセ好きに愛されているドイツのメーカー・DOEPFER MUSIK ELEKTRONIKから登場した、MIDIリボンコントローラー、R2M。リボンコントローラーとは、シンセサイザーを演奏するためのコントローラーの一種で、細長いリボン上の任意の場所を指で押さえて演奏する。指をスライドさせたり、小刻みに揺らしたりすることで、ポルタメントやビブラートといった効果を生み出すのが特徴だ。


 R2Mは、リボンコントローラーとコントロールボックスにより構成されている。長さ50センチの棒状のリボンコントローラーを指で触れると、その位置や圧力を電圧に変換し、たコントロールボックスに送信することによって音が出る仕組みだ。


 指の位置で音程が変わるので、例えばバイオリンのように滑らかにピッチが変化する演奏表現ができる。また、12音階をアサインして演奏したり、メジャースケール、マイナースケールなど、楽曲に合わせてスケールをクオンタイズしたりできるので、あらかじめ考えたコード進行の上で、直感的に指を動かしながら即興でフレーズを組み立てていくことも可能だ。


 以上、3つのガジェット楽器を紹介した。スマホが普及し、誰もが簡単に写真を撮影・加工できるようになって、新しい写真表現が次々と誕生したように、ガジェット楽器を遊びながら操作しているうちに、これまで想像もつかなかったよううな、新しい楽曲が生まれるかもしれない。
(黒田隆憲)