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エディの「セリーヌ」メンズ新作はフレンチだけど"圧倒的にロック"

2019年06月24日 19:22  Fashionsnap.com

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CELINE 2020SS COLLECTION Image by: courtesy of CELINE
パリ・メンズコレクションの最終日のトリを飾るのは、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が手掛ける「セリーヌ(CELINE)」。前シーズン提案したBCBG(80年代に流行したフレンチシック)のテイストを継承しつつ、ロックなエディが帰ってきた!
(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

[[https://youtube.owacon.moe/watch?v=6kh6F8-31wE]]
 会場はパリ左岸の、ルイ14世時代に建てられたアンヴァリッド。エディが「サンローラン(SAINT LAURENT)」時代から好んで使用してきた"定番の箱"だ。パリコレを主催するサンディカは、プレス、バイヤー向けに次のショー会場へ向かうバスを用意しているが、今シーズンは渋滞がことさら酷く、バスの到着を待たずにショーが始まったしまうことが幾度もあった。定刻の時刻を20分と少し過ぎたところで、ショーはスタートした。「アリクス(ALYX)」のショー会場からバスで向かった人を待たずに......。
2020SS COLLECTION courtesy of CELINE
 筆者は前シーズンと前々シーズンのショーは残念ながら見られなかったので、エディのショーを生で見るのはじつに3年半ぶりとなる。ショーの冒頭には大掛かりな光の演出があるのが恒例で、それは今シーズンも同じだった。巨大なオレンジ色のキューブのような光の箱がランウェイをゆっくり移動してきて、ランウェイの中央付近で止まった。やおら、ラメ状のストライプが施された華やかなスーツを着たモデルが飛び出してきた。鳥肌必至のカッコ良すぎる演出だ。
 2019-20年秋冬シーズンのエディ流のBCBGは、ブランドが変わってもスタイルを頑なに変えてこなかった彼にとって、大きなシフトチェンジだったと思う。80年代のセリーヌのアーカイブをふんだんに引用したコレクションは、これまでの世界観とは大きく違うものだった。でも、今シーズンはそうしたフレンチのテイストはそのままに、全体的には紛れもなくエディの世界観が貫かれていた。圧倒的にロックだった。

 今回のコレクションを一言で表現すると「アメリカとフランスの融合」。スーツのルックを除けば、80年代のパリで流行したフレンチなアメカジの雰囲気が色濃く漂っている。ヒッコリーデニムのオーバーオールにダブルブレストのジャケットを合わせた23ルック目、色落ちしたデニムのセットアップにスタッズ付きのシャツを合わせた42ルック目は、その典型的なスタイルだ。

 シグネーチャーのデニムは、程よくフレアしたブーツカット、ベルボトムが主流。「ディオール オム(DIOR HOMME)」時代のエディのクリエイションを連想させるシルエット(股上は当時より深め)で、久しぶりにフレアが戻ってくることを確信させるカッコ良さだった。合わせるシューズは、ウエスタンブーツか先端の尖ったタッセルローファーやバレエシューズだ。

 個人的にグッときたのが、セルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)とジェーン・バーキン(Jane Birkin)の70~80年代のスタイルを融合させたようなスタイリング。3ルック目のデニムシャツと着古した雰囲気のジーンズにネイビーのストライプジャケットは、まさしくゲンスブールのユニフォーム的なスタイル。なのにバッグは、バーキンのアイコンのカゴバッグだ。6ルック目のボーダーのタンクトップ&ライダースにデニムとカゴバッグを合わせたスタイリングは、バーキンそのもの。7ルック目のミリタリーシャツにネイビーブレザーとジーンズを合わせたスタイリングは、ゲンスブールが天国から舞い降りたみたいだ。

 スーツはタイト過ぎないシルエットで、70'sフレンチな雰囲気。ジャケットの肩周りはスクエアのシルエットで、パンツの裾は少しだけフレアする。インナーのシャツは第3ボタンまで開けて、タンクトップをチラ見せする。ティアドロップのサングラスがとびっきり似合う、キザでワイルドなスーツスタイルだ。
 初めて生で見た"エディのセリーヌ"は最高にカッコ良かった。変わらない部分と変わった部分が絶妙に融合していて、サンローラン時代とは違うエディの新しい世界観がそこにはあった。地下鉄に乗って本当に良かった......。
【全ルックを見る】CELINE メンズ 2020年サマーコレクション





増田海治郎雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。メンズ、レディースの両方をカバーし、「GQ JAPAN」「OCEANS」「SWAG HOMMES」「毎日新聞」などで健筆をふるう。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。