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Theピーズの日本武道館から2年 安孫子義一が飛び入りした32周年ワンマンを観てきた

2019年06月24日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

大木温之×安孫子義一

 2019年6月8日土曜日、上野水上音楽堂こと上野恩賜公園野外ステージにて行われた、『32周年ワンマン 1人ピーズin上野水上音楽堂』のアンコールに、Theピーズのギタリスト、アビさんこと安孫子義一が飛び入りし、はること大木温之とふたりで「Yeah」「ノロマが走っていく」「実験4号」「異国の扉」「生きのばし」「グライダー」の6曲を演奏した。


(関連:Theピーズの日本武道館から1年 休止状態にしびれを切らせ、「一人ピーズ」を観に行ってきた


 はるひとりの弾き語りライブであり、かつ、すり鉢状に座席ありの会場だったため、超満員(推定1000人オーバー)のオーディエンスは、その時まで、ほとんどの人が座ってライブを楽しんでいた。が、アンコールに応えて出てきたはるが、まず「ひとりくらいは」を歌い終え、「ここから先は夢ですよ! あれ、お願いします!」と叫んでSEが流れると、セミアコを抱えたアビさんが登場。大騒ぎになった。


 上野水上音楽堂は、ステージの前がお堀になっていて少しスペースがあり、通路も広めにとってある会場なのだが、その空きスペースにみんなが詰めかけ、瞬時にしてギッシギシのオールスタンディング状態と化す。「実験4号」の〈ゆーワケで せっかくだし 悪いけど 続くよ まだ二人いる〉のところでは「おおおお!」とどよめきのような歓声が飛び、会場のあちこちでは男女問わず……いや、女性の方が多かったかな、とにかく、滂沱の涙を流す人、ハンカチでそれを拭う人が続出するという、なんだかもう途方もない光景になる。


 いやいやいや、「実験4号」のそこんところで盛り上がっちゃったら、ドラムのシンちゃん(佐藤シンイチロウ)いなくなって、このふたりが残ったみたいじゃん! それに、何もそんなに泣かなくても。アビさん脱退したわけでもなんでもないじゃん、久しぶりなだけじゃん!


 とは思ったものの、かく言う自分も、泣きはしないまでも、どうしようもなく興奮してしまったのは、事実なのだった。


 なんせ、はるとアビさんが共にステージに立ったのは、2017年6月9日の、Theピーズ初ライブからぴったり30周年記念の日本武道館以来2年ぶり。つまり、アビさんが人前に姿を現したこと自体、2年ぶりとなる。


 その日以来、シンちゃんはthe pillowsでの活動に専念。はるは、以前からやっていた1人ピーズ(弾き語り)と、TOMOVSKYとコゴローズ(アビさん脱退時にピーズでギターを弾いた土田小五郎のバンド)で精力的に活動。“1人ピーズ”は“2人ピーズ”(歌とギターのはるにベーシスト岡田光史が加わる)、そして“3人ピーズ”(さらにドラマー茂木左も加わる)という形にも発展、現在はその3形態全部ありでライブを行っている。


 ライブのMCや、オフィシャルサイトのはるのブログによると、日本武道館以降、アビさんとは、会ってないどころか連絡も一切取っていない様子だった。


 日本武道館をいい区切りとして、そこからはバンドとして音の出し方、ライブのやり方を変えていきたい、ということをはるは公言していた。詳しくは、僕もこのリアルサウンドに書いたので、こちらをご覧ください(参考:Theピーズの日本武道館はハイライトの連続だったーー“生きのばし”てきた30年とこれから)。


 で、それから1年経っても動く気配がないので、しびれを切らして2018年5月に1人ピーズのライブを2本観に行って、またリアルサウンドに書いた。こちらを御覧ください(参考:Theピーズの日本武道館から1年 休止状態にしびれを切らせ、「一人ピーズ」を観に行ってきた)。


 要は、「いい機会だから仕切り直す」とか言ってたけど、これ実質は「活動休止ということを発表してない活動休止」じゃない? 仕切り直す気あるの? 動く気あるの? ないんじゃないの? 今のこの活動のしかたが楽しくなっちゃってるんじゃないの? はるさん! と、ピーズを真剣に追っているファンであればあるほど、心配になる状態だったのだ。


 特に3人ピーズが始まってから、その不安はさらに大きくなった。1人ピーズも2人ピーズも「アコースティックです、バンドじゃないです」というエクスキューズがあったが、3人ピーズ、パートは違うけどロックバンド編成じゃないですか。その編成で、ライブでTheピーズの曲をやっていたら、それはもうTheピーズじゃないですか! というですね。


 アビさんとシンちゃんがいないからTheピーズじゃない、という言い訳は通用しない。アビさんが脱退してから活動休止するまでの1996年から1997年は、小五郎がギターを弾いていたわけだし。ドラマーは、サポートも入れるとシンちゃんでもう8人目くらいだし。


 というところに突然アビさんが現れたのだから、それはもう大騒ぎになるのも頷けましょう。はる曰く、「昨日さ、急に、『明日行っちゃっていいかなあ』って」連絡があったそうだ。


 確かに、アビさん、最初ははるの後ろに立ってギターを弾いていた。なんで後ろなんだろう? あ、そうか、自分用のモニタースピーカーがないから、はるのモニターを聴きながら演奏してるのか、それが用意されていないってことは本当に突然来たんだなあ、と、観ながら納得する。途中ではるに「モニターないなら、そこで聴きなよ」と、ステージの端のスピーカーのそばで弾くことを勧められていた。で、実際にそうしていた。終演後、マネージャー・宮下俊平氏に「本当に突然来たんですか?」と聞いたら、「俺も今日会場に来て初めて知りました」。マジか。


 この上野水上音楽堂、1年前にはるが、水中、それは苦しいのジョニー大蔵大臣プレゼンツ『水中音楽祭』に出た時、「ここいいねえ」とやたら気に入っていた会場である(何度もすみません、それも詳しくはこちらを)。そのイベントは今年も、『てちまジャンボリー2019』というタイトルで、4月13日に開催され、それにもはるは出演した。


 というふうに、気に入った会場だったこともあり、スタッフに、30周年の日本武道館の時とまったく同じ方法で口説かれて、開催することになったそうだ。はる曰く、「なんか弾き語りなのに、こんなに呼んじゃってすいませんね。あのー、だからさ、『たまたま6月8日が取れちゃいました』とかまた言われちゃってさ。そしたら、武道館の時のロゴとか使って32周年とか言うと、集まっちゃうもんだね」。なんか申し訳ない、というトーンだったが、アビさんが出てくることなど知る由もない段階から、お客さんみんな「何が申し訳ないんだ!」という超ハッピーな空気だった。


 というめでたいライブだから、アビさんも「やっぱり行こうかな」という気になったのかもしれない。


 ステージではるに「久しぶりにブログ書いてよ」と言われたアビさん、ちゃんと2日後にブログをアップしておられました。こちら。(参考:久しぶりに何か書くかな/たまぶくロカビリー風呂愚)で、その前日にアップされた、はるのブログはこちら(参考:6/8上野/たまぶくロカビリー風呂愚)。


 だからといって、「Theピーズ、来月から本格始動します」みたいなことは、さすがにないと思う。当面は、はるのライブ活動しか告知されていないし。だが、「今年のthe pillowsの結成30周年プロジェクトが終わったら、動きやすいんじゃないですかね?」などと、マネージャー・宮下俊平氏とライブ制作担当ビンテージロック・若林敏郎氏(外堀を埋めまくってはるに日本武道館をやることを決意させたコンビ)にあおられて、2020年のTheピーズのライブ計画が始まっていたりしても、不思議ではない。と、期待しています。


 東京オリンピックイヤーになれば、アビさんの本業の(はる曰く)「セメント屋さん」の仕事も、ちょっとは落ち着きそうだし。


■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。


■セットリスト
1 バーリ
2 ブラボー
3 鉄道6号
4 上を向いて歩こう~キャロ
5 シャッター通り
6 このままでいよう
7無力
8 脱線
9 初夏レゲ
10 植物きどりか
11 映画(ゴム焼き)
12 フォーリン
13 サマー記念日
14 巴里にひとり(沢田研二のカバー)
15 トロピカル
16 夏の湖
17 電車でおでかけ
18 どっかにいこー
19 東の窓
20 恋は水色~三度目のキネマ(前者はスタンダード曲のカバー。1992年のシングル『やりっぱなしでサイナラだBye Bye』のカップリングに収録)
21 霧の中
22 喰えそうもねー
23 道草くん
24 温霧島
25 死にたい奴は死ね~月面の主
26 ヒッピー
27 ロンパリン
28 絵描き
29 リサイクリン
30 バカのしびれ
31 プリリヤン
32 ゴーラン
33 耳鳴り
34 サイナラ
35 氷屋マイド
<アンコール>
36 ひとりくらいは
37 Yeah (ここからwith アビさん)
38 ノロマが走っていく
39 実験4号
40 異国の扉
41 生きのばし
42 グライダー