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ニュルブルクリンク24時間:「楽しかったし、すごく悔しかった」RPバンドウの初挑戦は結果に繋がらず

2019年06月24日 05:01  AUTOSPORT web

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レーシングプロジェクトバンドウ×NOVEL Racingの19号車レクサスRC F GT3
2019年のADAC・トタル24時間レース=ニュルブルクリンク24時間レースは6月22~23日、ドイツのニュルブルクリンクで決勝レースが行われた。今季、最高峰のSP9クラスに参戦した吉本大樹/ドミニク・ファーンバッハー/マルコ・シーフリード/ミハエル・ティシュナー組レーシングプロジェクトバンドウ×NOVEL Racingの19号車レクサスRC F GT3は、総合45位/クラス19位で初挑戦を終えた。

 スーパーGTで活躍するレーシングプロジェクトバンドウの坂東正敬監督は、過去にモータースポーツの世界に足を踏み入れる前はプロのサッカー選手を目指していた。本場の欧州でプロになるべくドイツに留学し、ブンデスリーガのチームの下部組織で生活を送っていたことがある。

 その頃、坂東監督は「オレのプレイスタイルはこれなんだ!」という主張がありながらも、チームにはなかなかそれを受け入れてもらえなかった。「マンツーマンで、アイツと体力勝負して走っていればいい。チームが勝てばいいんだ」とコーチングスタッフから言われた坂東監督は、まったく納得ができないながら、プロになるべくなんとかドイツのスタイルに馴染み、試合に出場した。

 ただサッカー選手になる夢は途中であきらめることになり、坂東監督は父の跡を継ぎモータースポーツの世界に入った。織戸学など、レーシングプロジェクトバンドウの“先輩たち”から教えを請い、レースの世界のことを学びながらチームを育て、2011年にはGT500にステップアップ。2016年にはGT500初優勝を飾ってみせた。

 そんな坂東監督は、サッカー選手になるべく渡ったドイツの地で、ふたたび勝負してみたいという思いがあった。今度はレーシングチームの監督として。しかもやるなら最高峰だ。坂東監督は、ニュルブルクリンク24時間をリサーチし、いつか挑戦したい思いを募らせていた。

■ドイツに馴染みながら
 その思いがトントン拍子に進んだのが2019年、今回のニュルブルクリンク24時間だった。レーシングプロジェクトバンドウが使うヨコハマタイヤが出場することになり、さらにチームをサポートする「アットさん」ことステポン・サミタシャが所有するレクサスRC F GT3を借りられることになった。また、長年ニュルに挑んでいるNOVEL Racingとのコラボも決まった。チームはVLNと予選レースに出場し、念願でもあったゼッケン19をつけ、本戦に挑んだ。

 ただ、ドイツの強豪たちを前になかなかタイムが伸びていかない。特に深刻なのはパワー不足で、スーパーGTやスーパー耐久で使うエアリストリクターよりも小さいサイズでは、ニュルの名手であるドミニク・ファーンバッハーの速さをもってしても、どうにもストレートスピードで負けてしまう。かつての留学時に習得したドイツ語で、オーガナイザーにも粘り強く交渉すると、リストリクターは日を追うごとに拡大していった。また、今回メンテナンスでコラボする現地のリング・レーシングとのコミュニケーションも坂東監督が担った。

 予選2回目では、惜しくもトップクオリファイに残ることはできなかったが、「順調です。僕が言ったこともTRDが言ったことも、(オーガナイザーが)徐々に受け入れてくれていれていますが、一日ごとに進歩はあります。ただすべては受け入れてくれないんですよね。それはサッカーやっているときもそうなんですよ」と坂東監督は語った。

「サッカーのときと似ているなと。自分がどうやったら認めてもらえるかというやり方ですよね」

 坂東監督は、ドイツの人たちの手を借りながら、日本チームならではのやり方を少しずつドイツに受け入れてもらえるよう、一日ずつステップを踏んでいった。

「なかなかこういう経験って、GT500をやっているだけだとできないですよね」

■「楽しかったし、すごく悔しかった」
 迎えた決勝。19号車レクサスRC F GT3は、同じく日本から参戦したKONDO RacingのニッサンGT-RニスモGT3を追うようにレースを展開していく。序盤から大きなアクシデントやトラブルもなく、ライバルたちの脱落とともに順位が上がった。

 ただ夜になると、ルーティンのピットストップ時、トラブルが19号車に降りかかる。現地スタッフが給油を行っていた際、ガソリンがこぼれ火災が発生してしまったのだ。なんとか消し止めコースインしたが、今度はオーガナイザーから、レクサスRC F GT3のエキゾーストサウンドが音量規制に引っかかっているとして、交換が命じられた。

 トラブルはまだ起きる。今度は燃料系のトラブルが起きてしまい、さらに緊急ピットインを行う。これで上位争いからは完全に脱落してしまった19号車レクサスRC F GT3だが、チームはふたたびコースにマシンを戻すと、しっかりと完走した。

 今回、ドライバーのひとりとして加わった吉本大樹は、VLNではGT3をドライブしたことはあるが、24時間は初。「こうして新たな挑戦のステップに加えていただいたこと、そして24時間をGT3で走る貴重な経験をいただいたことは嬉しかったです。トラブルがなければそこそこの順位にいったのではないでしょうか」と振り返った。

 ただ吉本は「そんなに簡単にはいかないと思いますが……。今回参戦が決まってから、VLNを1回、予選レース、そして今回だったんです。チーム運営もクルマも、まとまらない部分が大きかったですね。チームはみんな仲良くできているんですが、コミュニケーションの部分で足りない部分がありました」と今回の“敗因”を指摘する。

 坂東監督も同じ認識で、「こっちの文化に馴染まなければいけないところもあるんだけど、何が起きているのか分からない部分があった。そこは悔しい」という。

 そして坂東監督は、今回の最初の挑戦について「初めて自分のチームで参戦して、正直楽しかったし、すごく悔しかった」と振り返った。

「この楽しかった、悔しかったを、どう伝えるのかが僕の役目でもあると思うんです。そして、自分がいま何をしなければいけないのかを考え、改めて行動しないといけません。本当悔しかったです。感動とかそういう以前の話ですね」

 ふだん、スーパーGTのサーキットでは見せないような悔しさと疲れが入り交じった表情で語った坂東監督。3年計画を立てているKONDO Racingと異なるのは、今回の挑戦で「また来年」が確約されていないところだ。プライベートチームならではのつらさでもある。

 とはいえ坂東監督は「またチャレンジしたい気持ちになりましたね」と上を向いた。「GT500で勝てない」と言われながらも、結果でその声を見返してきた男ならば、きっとふたたびニュルの地に戻ってこられるはずだ。

 まだドイツでの忘れ物は、取り返せてはいない。