2018/19年のABBフォーミュラE選手権は6月23日、スイス・ベルンで第11戦が行われ、40分以上の赤旗や降雨など、荒れた展開を制し、ジャン-エリック・ベルニュ(DSテチーター)がシーズン3勝目を獲得した。
全13戦で争われている2018/19年のフォーミュラE。このスイス・ベルンE-Prixも含め、シーズンは残り2大会3レースとなる。
第11戦の舞台はスイスの首都、ベルン。昨シーズンはスイス最大の都市であるチューリッヒを舞台に行われたが、2018/19年は開催地を移して争われた。
コースは全長2.75km、全部で14のコーナーを持ち、最大高低差53メートルもある特徴的なレイアウトとなっている。使用パワーを増加させられる“アタックモード”のアクティベーションゾーンはターン8立ち上がりに設けられた。
スタートラインはターン11を立ち上がったストレート中間に設定され、ターン12~14のシケインがスタート直後の1コーナーに。フィニッシュラインはターン14を立ち上がった先のストレート区間に設けられた。
決勝レース前に行われた予選ではランキングトップにつけるベルニュがポールポジションを奪った。2番手はミッチ・エバンス(パナソニック・ジャガー)、3番手にセバスチャン・ブエミ(ニッサン・e.ダムス)が続いた。
一方、ランキング2位のルーカス・ディ・グラッシ(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)は予選19番手と苦戦したほか、ランキング3位のアンドレ・ロッテラー(DSテチーター)は8番手、ニッサンのもう1台、オリバー・ローランド(ニッサン・e.ダムス)は予選13番手からのスタートだ。
45分+1周の決勝レースは現地18時3分(日本時間24日1時3分)にスタートし、ポールポジションのベルニュを先頭にシケインへ向かう。すると、1コーナーとなったシケイン飛び込みで多重クラッシュが発生。パスカル・ウェーレイン(マヒンドラ・レーシング)やマキシミリアン・ギュンター(ジェオックス・ドラゴン)が進路を塞ぐような形でストップしてしまう。
これによりレースは開始1分も立たずに赤旗中断。車両回収が行われることになった。難を逃れた車両はセーフティカー先導のもとピットレーンヘ。各車がタイム計測ラインを超える前に赤旗が出されたため、スターティンググリッド順に隊列が整理されることになった。
なお、ロビン・フラインス(エンビジョン・ヴァージン・レーシング)はリタイアを余儀なくされている。
レースは現地時間で18時46分にセーフティカー先導で再開。残り時間41分を切ったところでグリーンフラッグでレースが開始された。このリスタートでは大きな混乱はなく、ベルニュ、エバンス、ブエミのトップ3がレースを先導していく。
2番手エバンスは4周目を過ぎたころから首位ベルニュをオーバーテイクするチャンスをうかがうが、ベルニュは要所を守る走りでブロック。その一方、3番手のブエミは徐々に引き離されてしまい、レース残り33分の7周目時点で1.6秒まで差をつけられてしまう。
一度首位ベルニュとの間隔を取ったエバンスは12周目、アタックモードを活用してベルニュへふたたび接近すると、緩やかに右へ曲がる上り勾配のターン3でベルニュに並びかける。しかし、ここはベルニュがしっかりラインをブロックし、ポジションを守っていった。
このまま2台の首位争いが白熱するかと思われたが、後方を走っていたウェーレインがマシントラブルからターン8立ち上がりでマシンを止めたため、フルコースイエローが導入され、レースは仕切り直しに。
フルコースイエローは14周目、レース残り21分20秒を切ったところで解除されると、このリスタートでもベルニュ、エバンスの2台が抜け出していく。
エバンスは16周目に2回目のアタックモードを起動してベルニュを追撃。17周目のターン2~7まで、ベルニュに対しプレッシャーをかけていったが、オーバーテイクには届かず。この周にベルニュもアタックモードを起動して反撃に転じた。
レース残り4分を切った26周目、2回目のアタックモードに入ったロッテラーが前を走るバードに接近すると、ターン7へのブレーキングでバードが止まりきれなかった隙を見逃さすにオーバーテイク。4番手にポジションを上げている。
そしてレース残り2分を切ったタイミングでターン1付近で軽い雨が降り出すと、一時は1秒近くリードを広げていたベルニュがペースダウン。エバンス、ブエミ、ロッテラーと4番手までが数珠つなぎとなる。雨あしがさらに強くなるなか、レースはファイナルラップへ突入する。
ターン7以降の後半セクションはほぼウエットコンディションとなるが、首位のベルニュは足元をすくわれることなく盤石の走りを披露。エバンスを0.160秒差で抑えきり、今シーズン3勝目を獲得した。2位はエバンス、3位はブエミが入っている。
「本当に疲れる1週間だった」とベルニュ。
「ル・マン(24時間レース)も戦ったし、シミュレーターでフォーミュラEに備えていたからね。レースも特に最後は雨が降ってきたから神経をすり減らしたよ」
終始ベルニュを攻め立てたエバンスは「抜きどころが見つけられなかった。アタックモードもうまく活かせなかったよ。ペースは良かったんだけどね」と述べている。
「ベルニュは素晴らしい走りだった。最後の2ラップは雨のせいでギリギリだった。見た目以上に滑りやすい状況だったよ。この勢いを(最終戦ダブルヘッダーの)ニューヨークにもつなげたい」
4位はロッテラーが獲得したほか、5位にバード、6位にギュンター、7位にダニエル・アプト(アウディスポーツ・アプト・シェフラー)、8位にアレックス・リンス(パナソニック・ジャガー・レーシング)が続いた。ランキング2位だったディ・グラッシは10位でチェッカーを受けている。
なお、4位に入ったロッテラーは、レース開始直後の赤旗掲示中にピットレーン出口の信号を無視した可能性があるとしてレース後に審議が行われるため、順位が変わる可能性がある。
ドライバーズランキングでは優勝したベルニュが130ポイントでランキング首位。98ポイントの2位にロッテラー、97ポイントの3位にディ・グラッシが続いている。なお、こちらもロッテラーの審議次第でポジションが変わる可能性がある。
このベルンE-Prixを終えて、2018/19年のフォーミュラEは残り1大会2戦。ダブルヘッダーとなる最終大会は7月13~14日、アメリカ・ニューヨークを舞台に行われる。
【6月23日 11時58分追記】
レース後に行われた審議の結果、ロッテラーにはドライブスルーペナルティ相当の22秒タイム加算ペナルティが与えられ、14位に後退した。
そのほか、ジェローム・ダンブロジオ(マヒンドラ・レーシング)にはレース中の接触に対し、5秒のタイム加算が行われたほか、ホセ-マリア・ロペス(ジェオックス・ドラゴン)はレース後車検で違反が見つかり失格処分が言い渡されている。