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ヴァージルによる「ルイ・ヴィトン」新作メンズコレクションは“花”、ボディバッグの進化系も

2019年06月21日 20:12  Fashionsnap.com

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3シーズン目を迎えたヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が手掛ける「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズコレクション。今シーズンは花と凧を象徴的に用いて、美しく繊細なコレクションを披露した。
(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

 柔らかな初夏の日差しが降り注ぐパリ・シテ島。会場は、先日火事にあったノートルダム大聖堂にほど近いドフィーヌ広場だ。三角形の凧のような形のこの広場を囲むようにカフェやレストランが立ち並んでいて、ゲストの席の多くはこうした店のオープンテラスをそのまま利用している。緑のボックスに入った豪華な招待状には、組み立て式の凧が入っていた。

 ショーは春の花畑を連想させるパステルのカラーパレットで幕を開けた。ヴァージルらしいストリートとテーラードを融合させたシルエットやアイテムは相変わらずだが、コートはパステルブルー、シャツはパステルグリーン、パンツはパステルイエロー、シューズはホワイトといった趣向で、"アイテム・カラーブロック"と形容できるスタイリングが新鮮に映る。横から見るとおむすび型のボストンバッグは、広場の形を模したものだろう。

 中盤に入ると、花の要素はより強くなる。大花柄を大胆にプリントしたシルクのシャツやフーディは、これまでの2シーズンと比べると華やかで繊細で儚い。ローブコートやミリタリーパンツには、ペンキが吹きかけられた風に花の刺繍が施されている。バッグやヘッドピースは美しい花で彩られていて、文字どおりスタイリングに花を添えている。

 先シーズンも多く見られたプリーツの提案は、より複雑に進化している。短冊状にプリーツが入ったM65型のジャケットは、胸のポケットや肩のエポレットが折り紙のように折り畳まれてディテールを構築している。ワンハンドルで持ったモノグラムのバッグにもプリーツが入っている。これは争奪戦になりそうだ。

 新しい提案としては、紐を片結びしたようなディテールが挙げられる。太いロープで飾ったハット、70年代のバックパッカーを連想させるフレームザック、チュールを幾重にも重ねたジージャンなども目を惹くアイテムだ。先シーズンのボディバッグのコンセプトは、様々な形のバッグをアタッチメントのように体に装着できるものに進化。終盤には、手を広げれば飛べそうな凧を連想させるコートも登場した。
 今回のヴァージルのルイ・ヴィトンは、いつも以上に優しさに満ち溢れていた。
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増田海治郎雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。メンズ、レディースの両方をカバーし、「GQ JAPAN」「OCEANS」「SWAG HOMMES」「毎日新聞」などで健筆をふるう。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。