2019年06月21日 17:12 弁護士ドットコム
「電子辞書を買いましたが、不具合があって使えませんでした。運営は売る場所を提供してるだけとのことですが、解決してないまま退会させるのはどうかなと思います」。
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地域の情報掲示板を通じて電子辞書を購入した女性から、弁護士ドットコムニュースのLINEに情報提供が寄せられました。
女性は、中古の譲渡をする掲示板を通じて、電子辞書を2500円で買いました。やりとりは掲示板のサービス上でおこない、商品の受け渡しと支払いは、出品者とコンビニで待ち合わせて直接しました。
出品の投稿ページでは「動作確認済」と書いてありましたが、女性が使ったところ、一部の文字が反応しなかったり、電卓機能が表示されなかったりする不具合が見つかったそうです。
そこで、出品者に返品返金希望したところ、「私の方では、使えることを確認した上で出品致しました」と返品対応はできないと言われました。その後出品者は退会し、メッセージのやりとりができなくなりました。
女性は、掲示板運営側にも問い合わせました。すると、「ユーザー同士の直接取引を基本としてサービスを提供している関係上、商品の故障や不具合に関して、状況や事実の確認ができず、適切な判断が難しい」との返信がありました。
「出品物を投稿したユーザーと直接連絡を取って、問題の解決をお願いしたい」と言われ、女性の電話番号と合わせて話し合いに応じるようメールをしてもらいました。しかし、いまだに連絡も返金もありません。
このように直接やりとりして、後から商品に不具合が見つかった場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。柴田幸正弁護士に聞きました。
「今回のように、インターネットの掲示板を使って個人間で商品の売買をする場合、掲示板の運営者は、あくまでも個人間の売買を仲介するだけの立場というのが原則です。
ですから、商品が届かなかったり、届いた商品の状態が出品ページの説明と違っていたりといったトラブルがあっても、それは売買の当事者間で解決すべき問題であり、掲示板の運営者に対して補償を求めることは原則として不可能、ということになります。
なお、掲示板によっては、今回のように商品に不具合があった場合に一定の補償を受けることが可能なサイトもありますが(例:ヤフオクの商品満足サポート制度)、補償を受けられる場合が限定されているのが通常ですし、そもそも補償の規定が一読してよく分からない、ということもあります」
もし出品者がみつかった場合、どのような対応ができるのでしょうか。
「その出品者に対して、売買契約の売主としての責任を追及することになります。
現行の民法では、売買の目的物に隠れた瑕疵(欠陥)があったときは、買主が欠陥を知らず、かつ、欠陥があるために契約をした目的を達することができないときに限って、買主は契約の解除をすることができます。
一方、契約の解除ができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる、とされています。
相談者のケースは、電子辞書の機能に欠陥があり、電子辞書としての機能が十分に果たされないと考えられますから、契約の解除をした上で、支払った代金の返還を求めることになるでしょう。
2020年4月1日に施行予定の改正民法では、売買契約の目的物に瑕疵があった場合は、債務不履行の規定が適用されることになります。債務不履行について売主に責任を負わせるべき事由が認められない場合を除き、買主は、契約の解除あるいは損害賠償を求めることができます。
また、改正民法によれば、契約の解除や損害賠償請求に加えて、修繕や代替物の引渡しを求めることができるようになります。
相手方の顔が見えないインターネットでは、このようなリスクがあることを承知の上で取引関係に入らないと、思わぬトラブルに巻き込まれて痛い目に遭ってしまいます。十分に気をつけたいところです」
弁護士ドットコム
【取材協力弁護士】
柴田 幸正(しばた・ゆきまさ)弁護士
2008年登録、愛知県弁護士会所属。同弁護士会の労働法制委員会、消費者委員会所属。非常勤裁判官(家事調停官)。地元の瀬戸市を中心として、個人向けの一般民事・家事事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。
事務所名:柴田幸正法律事務所
事務所URL:http://shibatayukimasa-law.p-kit.com/