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『なつぞら』中川大志が東洋動画の問題点をズバリ指摘 未知の航海へ乗り出すアニメーターたち

2019年06月21日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『なつぞら』画像提供=NHK

 NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』第71話では、アニメ作りのために議論を交わす若者たちの姿が描かれた。


参考:福地桃子、伊原六花、貫地谷しほり、渡辺麻友 『なつぞら』を支える女性キャラクターたちの魅力


 昨日の放送では、下山(川島明)を筆頭に、なつ(広瀬すず)、茜(渡辺麻友)、堀内(田村健太郎)、麻子(貫地谷しほり)が集まり下山班が結成された。早速、『わんぱく牛若丸』の作画作業に取り掛かる作画課のメンバーたち。しかし、作画作業が佳境に入ったある日、演出助手の坂場一久(中川大志)がやってくる。


 坂場は、なつが描いた動画にどうしても納得ができない様子。自分の動画を説明するなつに対して、「そういう表現は、動きにリアリティがなければただの説明になりませんか?」「馬はどうですか? 馬は怖がりませんか?」と坂場は理詰めで指摘していく。どうやら、頭が良くどこか堅物な性格の持ち主のようだ。見かねた下山が間に入り、原画から描きなおすことを提案する。


 このシーンで、なつが提示したストレッチ&スクウォッシュとは、なつが茂木社長(リリー・フランキー)からもらったプレストン・ブレアの本にも記載のあるアニメーションの表現技法の原則のひとつだ。人の表情をはじめ、動きに伸び縮みを取り入れることで、表現の明確化が可能になる。


 坂場は「僕にはわからないんです。現実的な世界のリアリティを追求しようとしているのか、アニメーションにしかできない表現を追求しようとしているのか」とこぼす。東洋動画は総天然色の長編アニメーションを一本完成させたばかりの会社だ。今では、日本アニメーションは世界でも高い評価を得ており、「日本ならでは」を確立できている。しかし、当時はこのほどではない。ディズニーのヒットを受け、産声をあげたばかりの段階にあった。堀内が「東洋動画の問題点」というように、当時アニメーターたちは未知の世界への航海のさなかにあったことを感じさせるワンシーンだった。


 製作課に戻った坂場に対して、監督の露木(木下ほうか)は「よくプライドの高い絵描きたちを納得させたな」と言葉をかける。露木はじめ演出家たちも実写の芝居を演出してきた人たちで、アニメーションの演出についてはまだまだ手探りの状態なのだ。彼らは絵は描けない。何が違うのかうまく説明できないが、でも何かが違う、といったアニメーターと演出家の溝も存在した。


 『白蛇姫』を完成させた東洋動画だが、製作の課題は尽きない。新たに現れた坂場が、東洋動画、アニメーション界、そしてなつにどのように刺激を与えていくのか。これから注目だ。


(文=安田周平)