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『インハンド』高評価を支えたのはゲスト配役の巧さ? 山下智久らレギュラー陣との絶妙なバランス

2019年06月21日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『インハンド』(c)TBS

 山下智久主演のドラマ『インハンド』(TBS系)が今夜、最終回を迎える。


 本作は山下演じる変態的魅力と才能を持つ天才寄生虫学者・紐倉哲が、助手の高家春馬(濱田岳)やエリート官僚・牧野巴(菜々緒)とともに、未知なるウイルスや病原体の謎を次々と解き明かしていくサスペンス・ミステリー。ストーリーはメインキャラである3人が織りなすトライアングルを軸に展開していくが、もう一つ注目したいのは多彩なゲスト陣だ。


 第1話の風間杜夫、相島一之、正名僕蔵をはじめ、第3話には観月ありさ、第5話には紐倉の元上司・福山和哉役で時任三郎がゲストとして出演。


 第6話には清原翔、温水洋一、石井正則、第8話には柄本明、要潤、第9話には宮崎美子、市毛良枝、『ひよっこ』(NHK総合)、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の磯村勇斗。


 最終章となる第10話からは石橋杏奈、そして『プロポーズ大作戦』(2007年)で山下&濱田と共演した平岡祐太が出演。加えて前出の時任演じる福山が紐倉たちの前に立ちはだかり、物語のキーマンとして最後まで予断を許さないスリリングな緊張感を生み出している。


 ドラマにおける「ゲスト」は視聴者の目を惹きやすい反面、非常に“さじ加減”が難しい存在とも言える。


 簡単に言えば、レギュラーキャストより目立ちすぎてはいけないし、かといって個性を発揮せず埋没してしまっては呼んだ意味がない。レギュラー陣との芝居の間に生まれる空気感も重要だし、そこには俳優同士の相性や演技スタイルの違いも大きく影響してくる。ただ呼べばいい、というものでは決してないのだ。


 レギュラーとゲストのバランスが絶妙だったドラマといえば、やはり『古畑任三郎』(フジテレビ系・1994年~2006年)だろう。毎回犯人役としてゲスト出演する名優たちが田村正和演じる古畑と堂々渡り合う姿は、まさに主人公と同じといっても良いほどの存在感だった。ほかにも『相棒』(テレビ朝日系・2000年~)や『トリック』(テレビ朝日系・2000年~2014年)、『特命係長 只野仁』(テレビ朝日系・2003年~2018年)などもゲストが強烈なキャラクターを発揮し、作品を独特のものにしていた。その意味で「刑事ドラマ」というジャンルは、ゲストを招くのに最も適している“場”である。同様に「サスペンス」や「ミステリー」も、ゲストがドラマの盛り上がりに寄与するジャンルだろう。


 一方、ゲストとして出演する俳優にとっては、普段の自分に求められる役とは違う役にチャレンジできるというメリットがある。それはそれでプレッシャーでもあるが、視聴者からすれば新鮮に映り、その俳優の新たな魅力に気づくきっかけになることは間違いない。


 『インハンド』は『古畑』のような明確な対立構造ではないものの、非常にバランスが取れた、安定感と説得力のあるゲストが魅力的な作品であったとも言える。もちろん、これはあくまで一つの見方であり、必ずしもこうあるべき、ということではない。「ゲスト」という固定観念にとらわれない、自由な発想によるキャスティングとドラマ作りに今後も期待したい。(文=中村裕一)