2018/19年のWEC世界耐久選手権“スーパーシーズン”でシリーズチャンピオンを獲得した中嶋一貴。1年半の長丁場を戦い抜き、ともに2度のル・マン24時間レース制覇を遂げたフェルナンド・アロンソについて、「勝つことに対する貪欲さ」が強く印象に残っていると語った。
アロンソ、セバスチャン・ブエミとともに8号車トヨタTS050ハイブリッドをドライブした一貴は、2018年、2019年とル・マン24時間を連覇。スーパーシーズンでも4勝を挙げてドライバーズチャンピオンに輝いた。
チームメイトとして、ともにスーパーシーズンを戦ったアロンソについて、一貴は「ドライバーとして勝つことに対する貪欲さというのが、すごく印象に残っています」と明かす。
「最初から最後までそこに尽きるかなと。走り方なども話し始めたらキリがないんですけど、そこは誤差の範囲かな。勝つことへの貪欲さがあるからこそ、インディ500にも再挑戦するでしょう。パリダカ(ダカールラリー)への参戦も噂になっていますよね」
「なかなか、いろいろなカテゴリで全部勝つという気持ちを持てる人も少ないと思うので、純粋にすごいなと思います」
「もともとセバスチャン(ブエミ)もそういった傾向のドライバーで、フェルナンドが入ってきて、ふたりがすごくカチッとハマっていたので、僕も余計なことを考えずに勝つことだけ考えることができるようになりました」
「チームメイト同士でバトルしていると、気を使わなくちゃいけないかなと思うときもありますけど、ふたりがそういうドライバーだったので、純粋に僕は僕で勝つことに集中してやればいいかなと思えました。そういう意味では、この3人で組めてよかったなと思います」
■一貴、WECでのチャンピオン獲得は「思っていたより時間がかかった」
その一貴は、WECでシリーズチャンピオンに輝いたことで、日本人ドライバーとして初めてサーキットレース世界王者の栄光も手にした。2015年からWECフル参戦を開始し、「獲るべきところで獲れてよかったなと思います」と一貴。
「ル・マン(で勝つこと)ももちろんですけど、その時(2015年)からタイトルを獲ることを目標にやってきました。思っていたより時間がかかったなという思いもありますけど、獲るべきところで獲れてよかったなと思います」
「長いシーズンでしたし、レースになると(チーム内で優勝争いがあり)精神的に非常に厳しいシーズンだったので、それをしっかり終えることができてホッとしていますよ」
「チーム内での戦いはしんどいですよね。使っているクルマも一緒ですし、なかなか差もつかないですから。クルマの細かいところまで詰めて極力パフォーマンスを引き出せるようにしつつ、レースでは他車も走るなか、いかにタイムを稼ぎつつ、接触をさけるか。耐久レースでは、そういった難しい作業を求められます」
「勝っても負けても、(7号車とは)ふだん一緒にやっている相手ですから、勝った気持ちも(他メーカーの)相手に勝ったときとは少し違うものになるので、そういったことも含めて長く厳しいシーズンでしたね」
「来年はル・マンがシーズンの最終戦になります。そこでのワン・ツー(フィニッシュ)は今の状況を考えれば最低限達成しないといけません。そのうえで7号車、8号車のどちらが上に行くのか、ということですね。お互い勝つために全力を尽くしますけど、ワン・ツーを達成できなくなるようなリスクを負ってはいけないと思います」
「ワン・ツーフィニッシュという前提の上に僕たちのバトルがあると思っているので、そこはしっかり意識しないといけません。アストンマーティンなどライバルがいれば状況も変わってきますけど、少なくとも来年までは最低限求められてくることだと思います」