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初めてづくしのMotoGPイタリアGPで5秒以上のタイムアップ果たした名越。経験生かし筑波戦に挑む

2019年06月20日 06:11  AUTOSPORT web

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MotoGPイタリアGPのMoto2クラスにスポット参戦した名越哲平
全日本ロードレース選手権J-GP2クラスで活躍している名越哲平がMotoGP第6戦イタリアGPのMoto2クラスに代役参戦してきた。この話は、第5戦フランスでIDEMITSU Honda Team Asiaのレギュラーライダーであるソムキアット・チャントラがレースで左足を痛め手術。腕上がりの手術も行うことになり話しがまわってきた。

 名越にとってMoto2クラスを走るのは初めてのこと。もちろんムジェロ・サーキットを走ることも、トライアンフエンジンのカレックスにダンロップタイヤという組み合わせも初めてと、初めて尽くしのことだった。

 幸い、名越はカタルーニャ・サーキットでテストができることになり、急きょスペインに向かい1日だけテストを実施し、すぐに帰国して全日本第3戦SUGOに臨んでいた。このレースウイーク中に名越のイタリアGP代役参戦が正式に発表され、SUGOでのレースを終えると、すぐにイタリアへ飛んだ。

 ムジェロサーキットは、アップダウンがあり、テクニカル、そして高速の最終コーナーから長いホームストレートと続くレイアウトで、MotoGPでは350km/hオーバー、Moto2でさえ300km/hを記録した屈指のコース。名越は現地に着くまでオンボードの映像を何度も見ながらイメージトレーニングを続けていた。

「すべてが初めてのことだったので不安はありましたけれど、いいチャンスでしたし、走ってみたい思いの方が強かったですね」と名越。

「FP1の序盤にコースアウトしてしまいエンジンが止まってしまったのですが、トライアンフは、押しがけだとかかりにくいみたいでセッションの半分を棒に振ってしまったのが痛かったですね」

「FP2は、マシンチェックとコースを覚えることで終わってしまった感じでした。この時点でトップと7秒差もあったので、どうしていいか分からないという状況でした」

 そんな走り出しだったがFP1からFP2では、ライン取りを覚え一気にタイムアップ。下に名越がセッション毎に記録したタイムとトップとのタイム差を並べてみたが、決勝でのタイムアップが尋常でないことが分かるだろう。

セッション名越のタイムトップとの差FP11分59秒7467秒232FP21分56秒8794秒893FP31分55秒9044秒279Q11分55秒8224秒163WUP1分56秒0333秒875RACE1分54秒2932秒412

「マシンセットどうこうと言うよりも40分のセッションの真ん中にピットインして少しのアジャストは、しましたけれどタイヤ交換とガソリン給油をするだけで1周でも多く周回して、いろんなライダーの走りを見て、世界を吸収するということを目的に走っていました」

「乗り慣れないバイク、走り慣れないサーキットというのは、フィジカル的に、すごく厳しいことでしたが、そのなかで何周もできたことは、すごくいい経験になりましたし、ここでしかできない経験ができたことが、自分自身プラスになったと思います」

■決勝リタイアは「セーブして走るより、少しでも吸収したいと攻めた結果」
 世界との差をまざまざと見せつけられながらも、当初の目的通り、その最高峰の走りを吸収しようと必死に走り続けた。その名越をイデミツ・ホンダ・チーム・アジアを率いる青山博一監督を始め、チームがバックアップ。また、地方選手権で所属した56 RACINGの中野真矢監督にもアドバイスをもらったと言う。

「各国のチャンピオンが集まっているレースですが、毎セッション、みんな全開ですし、勢いやスピード差も感じました。コーナーひとつ曲がるのに、何もしていない時間がないんです。何かしら自分で動かしたり、動いたりしていますから。それが分かったことは、すごく大きかったですし、自分もまだまだ改善していかなければならないことを痛感しました」

「ホームストレートでアレックス・マルケス選手に抜かれたので、1コーナーで同じところでブレーキしようとしたのですが、自分はフロント1本で止めるだけで精一杯だったところ、マルケス選手は、前後でブレーキして、なおかつ向きも変えていました。ブレーキをかける位置が一緒でもアクセルを開けて行く場所が違うので、すごい差でしたね」

 決勝でスタートを決めた名越は、最後尾の32番手グリッドからオープニングラップで23番手までポジションを上げる。3周は、そのポジションをキープしていたが、4周目にポジションを落とすと、5周目の最終コーナーでフロントから転倒し、そのままリタイアとなってしまった。

「スタートは、うまく行って中段から下の集団の中に入ることができました。そのなかで、走り方が分かったというほどでは、ないんですけれど、自分との違いを探りながらペースアップができていました。ただ、公式予選よりもペースが1.5秒も上がっていたのでセットが完全に合わない部分があったので、少し無理したところで転倒してしまいました」

「本当は完走して、フィジカル面やタイヤのライフなどを経験したかったのですが、セーブしてひとりで走るよりも、少しでも吸収したいと攻めて、ついて行った結果。悔しいですけれど、今の自分を出し切った現実なので、全日本でしっかり結果を出してイタリアGPに挑戦したことが無駄ではなかったことを証明したいですね」

 世界を知った名越がレーシングライダーとしてレベルアップした走りを見せることが当面の課題となる。ラストイヤーとなる全日本J-GP2クラスは、決してレベルは低くない。まずは、ライバルに勝つことを第一にMoto2での経験をレースに活かして行きたいところだろう。