2019年のインディカー・シリーズも全17戦で開催。第9戦テキサスがちょうど折り返し点だった。
9戦を終えて、最多勝利はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)による3勝で、順当に彼がポイントリーダーに立っている。
シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)はダブルポイントのインディ500を含め2勝しているが、安定感はチームメイトに及ばずランキングは3番手。
彼らの間のポイント2番手に着けているのは、まだ参戦4年目のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)だ。不運が重なって1勝しか挙げていないロッシだが、4月のロングビーチでのポールポジションからの圧勝が示す通り、現在もっとも“乗れている”ドライバーが彼。
昨年タイトルをあと一歩で惜しくも逃した経験に学び、今年はハイリスクに過ぎるオーバーテイクは避け、ポイントを重ねることを心がけてもいるようだ。
これら3人の他に優勝を記録しているのは、ルーキーのコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、そして、6度目のタイトルを狙う昨年度チャンピオンのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。彼らはいずれも1勝ずつ挙げている。
■チャンピオン候補は3人?
367点を稼いだニューガーデンがトップで、ロッシは25点差、パジェノーは48点差で追っている。
“ダラーラのワンメイクシャシーにホンダかシボレーのエンジン搭載”をほぼ基本として来た2012年からの7シーズンを見ると、折り返し点のポイントリーダーが3回チャンピオンになっている。
いちばん低いランクキングからタイトルを獲得したの、7番手だった2017年のニューガーデン(ただし、ポイント差は49点と小さかった)。
もっとも大きなポイント差をひっくり返してのタイトル奪取は2013年のディクソンによる78点(ランクは5番手)だ。
4番手のディクソンは89点、5番手の琢磨は95点の差となっており、過去7年のデータからすると、今年のタイトル候補はニューガーデン、ロッシ、パジェノーの3人に絞り込まれたことになる。
3勝でチャンピオンになった例は2012年から昨年までで2回、共にディクソンだ。そして、チャンピオンになったドライバーたちに共通しているのは、シーズン後半に2勝以上を挙げているところ。
王座に手を届かせるには折り返し点までの勢いだけでは足らず、シーズン中のレベルアップを達成してアドバンテージを増やし、プレッシャーも跳ね除けて勝利を重ねなくてはならない。
今年は最終戦がソノマ・レースウェイでからウェザーテック・レースウェイ・ラグナセカでの開催に変わった。ベテラン勢はトップシングルシーターでのレース経験を持つコースだが、マシンもタイヤも変わっているので大きなアドバンテージとはならないだろう。
未知のコースでダブルポイントの最終戦では、ドライバーの順応性、エンジニアリングを含めたチームの総合力が試される。
最終戦前のレースを見渡すと、ニューガーデンが9コース中の5コースで優勝経験があり、データ的にはもっとも有利だが、マシンが今年とほぼ同じだと考えると、昨年ポコノとミド・オハイオで勝っているロッシも強力。
パジェノーが勝ったことのあるのはミド・オハイオのみで、しかも、そこはディクソンが5勝と得意としているコースだ。
ニューガーデンの優位は明らかだが、防御的な戦い方で二度目のタイトルを狙うのは難しい。どこまでアグレッシブに戦い、勝利を奪えるかが重要だ。対するロッシは、前半より少し運が向いてくれるだけで勝利を重ねるだけの力を備えている。タイトル争いの鍵を握るのは間違いなく彼だ。
パジェノーが二度目のタイトルを手に入れるには、ロッシ以上にシーズン後半戦に爆発力を発揮しないとならない。
ディクソンがポイント的な不利なのは前述の通りだが、彼をタイトル争いから外すことは難しい。デトロイトのレース1では3位走行中に珍しくドライビングミスでクラッシュ、リタイア。テキサスではアグレッシブな若手とのバトルでアクシデントとポイントを重ねたいシーズン中盤戦で足踏みしたが、最後までタイトル争いに残り続けるのはほぼ確実だろう。
ポイント5番手の琢磨はディクソン以上にタイトルを争うには厳しい状況だ。しかし、昨年優勝を争ったロードアメリカ、トロント、アイオワという連戦でシーズン2勝目を挙げて勢いをつければ、残りのレースも好パフォーマンスが期待できるものばかりだ。
ポートランドは昨年勝っており、ポコノではポールポジション獲得経験がある。ミド・オハイオやラグナセカは彼が本来得意とするテクニカルなロードコースだ。後半戦開始直後に自身のシーズン2勝目を挙げて流れを引き寄せ、更に勝利を重ねることが初タイトル獲得には必要だ。
今年はルーキーの当たり年。ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いからも目が離せない。
ハータ二世は開幕2戦目にして初優勝を記録し、その後もロードコースの予選でファイナルに3回進み、4番手になること4回、5番手が1回、インディ500でも予選5番手と、ほぼすべてのコースで周りをあっと言わせる素晴らしいパフォーマンスを見せている。
問題は、優勝したレース以外では予選の速さがレースでの好結果に繋がっていないところだ。インディ500はダブルポイントなのにトラブルで最下位の33位。それを含めて20位以下が4回と多過ぎ、ランキングは16番手に低迷している。
チップ・ガナッシ・レーシングが起用しているフェリックス・ローゼンクヴィストとF1から転身してきたマーカス・エリクソン(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が表彰台に上り、サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)とパトリシオ・オーワード(カーリン)が上記3人に劣らない目覚ましい走りを見せている。彼らのパフォーマンスからは今後も目が離せない。
一方、思ったよりも実力を発揮できていない面々もいる。その筆頭はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。開幕2戦で連続ポールポジションを獲得したが、ベストフィニッシュは2回の3位で未勝利。
ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)とセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン)も共にトップ3フィニッシュが1回だけで勝利がない。ジェイムズ・ヒンチクリフ(アロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は勝利どころか予選トップ3も表彰台フィニッシュも記録できていない。
反対に実力を確実に伸ばしているのがジャック・ハーベイ(マイケル・シャンク・レーシング・ウィズSPM)とスペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)だ。
ハーベイはインディカーGPで予選、決勝とも自己ベストの3位という好結果を実現。ピゴットはロードコースでのパフォーマンスがオーバルのものにマッチするように高まってきている。
マックス・チルトン(カーリン)はインディ500で予選落ちした後、ロードレースのみへ出場へと方針転換した。空席にはテキサスではコナー・デイリーが収まったが、残されたショートオーバル2戦でも彼が起用されるかは現時点では未定だ。
カーリンはルーキーのパト・オーワードの参戦もデトロイトまででストップしている。
ロードアメリカからの後半戦。どんなレースが繰り広げられるのか注目だ。