映画『象は静かに座っている』が、11月から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで公開される。
29歳の新人監督フー・ボーの長編デビュー作で遺作となった同作は、自身の同名短編小説を映画化したもの。炭鉱が廃れ、世間に見放された中国の田舎町を舞台に、暴力で自分を守る男、将来の目的を見い出せない少年、教師と関係を持つ少女、家族に突き放された老人の4人のある1日を描く。英題は『An Elephant Sitting Still』。上映時間は3時間54分におよぶ。
同作の完成後に自ら命を絶ったボー監督は、アメリカの小説家コーマック・マッカーシーの「世界の美しさには秘密が隠されていると彼は思った。世界の心臓は多大な犠牲を払って脈打っており、世界の苦悩と美は様々な形で均衡を保ちながら関連し合っていて、思慮の入る余地のないこうした欠落の中、究極的には一輪の花の幻影を得るために、多くの生物の血が流されるかもしれないのだ」という文章は、『象は静かに座っている』の主題でもあると生前に語ったという。同作は『ベルリン国際映画祭』国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞スペシャルメンションなどを受賞。