トップへ

『フジロック』YouTube配信、『新体感ライブ』、『Uplive』……躍進するライブ配信サービスに注目

2019年06月16日 23:21  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド編集部

 2018年から2019年上半期にかけて、音楽ライブ配信サービスが躍進している。


(関連:YouTubeによる未成年の単独ライブ配信禁止、海外では関連動画機能に疑問の声も


 音楽ライブの生中継と言えば、昔はWOWOWなどの有料放送が主流であり、現地で実際に観るか、有料放送に入会する、もしくはVHS(ビデオ)、DVD、Blu-rayとしてのパッケージが発売されるのを待つ、といった流れがほとんどであった。そんなフォーマットを覆したのが、ライブビューイングだ。2010年に初めて音楽アーティストのライブが全国各地の映画館でライブを生中継され、会場にいなくてもリアルタイムもしくはディレイビューイングとして体験できることは、当時革命的な出来事だった。


 その後、ライブビューイングはコンサートを気軽に楽しむことができるコンテンツとして広く一般化。今年、2月にグループを卒業した乃木坂46の西野七瀬の卒業コンサートは、全国218館のライブビューイング会場で生中継され、約10万人が鑑賞した。コンサート開催日の翌日にディレイビューイングが開催されるほどの事態となったのだ。現在ライブビューイングは、チケットが取れず涙を飲んだファンの受け皿として機能する場所、または海外公演などのなかなか足を運ぶのが難しいライブを目撃できる場所としての一面もある。


 中には映画館だけでなく、BABYMETALがZepp DiverCity TOKYO(2017)、欅坂46が大阪城ホールでライブビューイング(2019年)を開催するなど、より実際のライブ空間に近い場所を選択する例もある。今月には全国のカラオケルームがライブビューイング会場となる機器『JOYSOUND MAX GO』が本格始動し、新たな展開を見せていきそうだ。


 ライブビューイングの浸透の一方で、発展をしてきたのがパソコンやスマートフォンから楽しむことができるライブ配信。数多のプラットフォームが乱立する中で、昨年大きな話題となったのが『FUJI ROCK FESTIVAL』のYouTubeライブ配信だった。もともと、アメリカ・カリフォルニア州で開催されている『コーチェラ・フェスティバル』が9年前よりYouTubeでのライブ配信を実施しており、SNSの普及に従い、夜通しで実況したものがトレンドに上がる流れが恒例になっていた。


 今年は、チャイルディッシュ・ガンビーノ、アリアナ・グランデ、ビリー・アイリッシュ、BLACKPINK、カニエ・ウェスト(サンデー・サーヴィスで登場)といったビッグネームを始め、日本勢からはPerfumeがラインアップ。映画と見間違うかのようなカメラワーク、演出には驚くばかりで、特にPerfumeの映像は真鍋大度によるモーションキャプチャが炸裂した、世界に誇るパフォーマンスの連続であった。


 そんな時勢もあり、昨年実現したのが『FUJI ROCK FESTIVAL』のYouTubeライブ配信だ。国内音楽フェスとしては初のYouTube配信。初日のヘッドライナーを飾ったN.E.R.Dのほか、SKRILLEX、VAMPIRE WEEKEND、CHVRCHES、日本アーティストからもサカナクション、エレファントカシマシ、Suchmos、King Gnuといったおよそ60組のアーティストのパフォーマンスが配信され、3日間の2チャンネルの合計視聴回数は1200万回、同時間帯での最大視聴者数は8万人、視聴者比は国内:85%、国外:15%だという(BARKS:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/02/04_00.html/CINRA.NET:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/02/04_00.html)。今年のライブ配信はまだアナウンスされてはいないが、昨年の反響から考えても行われる可能性は極めて高いだろう。


 「ライブはもっと、もっと自由になる」というキャッチコピーのもと、2019年1月にNTTドコモが提供を開始した音楽ライブ配信サービスが『新体感ライブ』だ。好きなアングルを選んでライブを視聴できる「マルチアングルライブ」、アーティストのグッズにスマートフォンのカメラをかざすことでCG映像や演奏を楽しめる「ARフィギュア」機能が特徴。サカナクションのホールツアー独占生配信のほか、[ALEXANDROS]のメンバー4人がARフィギュアになって「アルペジオ」を演奏するといったコンテンツがある。


 先述した乃木坂46の西野七瀬の卒業コンサートは、新体感ライブでも生配信、見逃し配信がされており、さらには4月にHKT48を卒業した指原莉乃の卒業コンサートもコンテンツとして配信されている。指原の配信を例に挙げれば、グループメンバーの副音声や指原のコメント映像、複数のカメラを切り替えることができる「指原追っかけカメラ」など、コンサートを何度も追体験できる独自の内容となっている。


 新体感ライブを提供しているNTTドコモのサービス「dTV」では、三浦大知やDA PUMP、乃木坂46などのライブを配信しているが、無料ライブ配信サービスという視点で考えると、ほかにはLINE LIVE、ニコニコ生放送、Periscope、Upliveといったライブストリーミングがある。PeriscopeはTwitterが開発したライブ配信アプリで、Upliveは世界で6000万人以上のユーザーを抱えるグローバルライブ配信アプリ。今年1月には、ももいろクローバーZの台湾公演の模様がUpliveで生配信された。アーティスト側は、どのプラットフォームを選べば、どのようなユーザーにリーチするのかを考えるのも配信する上で重要になってくるだろう。


 また今後、ライブ配信サービスに期待することとして、2020年の開始が見込まれている第5世代移動通信システム(5G)がある。NTTドコモは、5Gを活用した世界初の360度8K3D60fpsVRライブ映像配信・視聴システムを開発したことを発表しており、このシステムを利用すれば音楽のライブイベントをリアルタイムに360度8K映像として撮影、配信することが可能。ヘッドマウントディスプレイを通して3DVRライブ映像を視聴することもできるという(参照:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/02/04_00.html)。


 NTTドコモがこのシステムを活用する目的は、言わずもがな新体感ライブやdTVだろう。NTTドコモだけでなく、KDDI、ソフトバンクも5Gの開始に向けて開発を進めており、ソフトバンクは昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』YouTubeライブ配信の協賛だったことから、今後さらにこの分野に力を入れていくとも読み取れる。今年9月には、5Gのプレサービスが開始する予定で、本格的なサービスの開始は2020年春。今年から来年にかけて、さらなるライブ配信の躍進が進んでいきそうだ。(渡辺彰浩)