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早見あかりが語る、主演作『女の機嫌の直し方』で得たもの 「受け入れることが何よりも大事」

2019年06月15日 17:21  リアルサウンド

リアルサウンド

早見あかり

 『共感障害 ~“話が通じない”の正体』『妻のトリセツ』などで知られる黒川伊保子の同名書を原案とした映画『女の機嫌の直し方』が6月15日より公開された。本作は結婚式場を舞台に巻き起こる男女トラブルを描いたハートフルコメディ。大学でAIの研究を行うリケジョ・真島愛が最新の“脳科学”を駆使してさまざまな問題を解決していく。


 リアルサウンド映画部では、主人公・真島愛を演じた早見あかりにインタビュー。主人公・愛を演じるうえで心がけたことから、脳科学メソッドを学んだことで起きた心境の変化まで、じっくりと語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】


●早見あかりは「リケジョ」ではなく「ヘラジョ」?


ーー原案となった黒川伊保子さんによる同名書籍も大きな話題となりました。映画も“学び”が多い作品になっていますが、早見さんは脚本を読んでどんな思いを抱きましたか。


早見あかり(以下、早見):なぜ、本作で描かれている脳科学を早く知ることが出来なかったのかと……。もっと早く出会えていれば今まで起きた男女トラブルを未然に防ぐことができたんじゃないかと思いました。なぜかイライラしているし、モヤモヤしているんだけど、それを言葉にできないことがこれまで自分自身にもあったんです。その理由がこの作品の中には明確に述べられていました。演じていても本当に勉強になりました。


ーー撮影後、実際に脳科学メソッドは実践されているんですか。


早見:仕事では皆さん大人なので、なかなか自我を出す機会がないですが、プライベートになってくると、家族や友人に親しいからこそ言ってしまう一言や行動があるわけです。(昨年12月に結婚した)旦那さんとは大分長く一緒にいるので、喧嘩することも減ってはいるんです。でも、喧嘩をした際に「その余計な一言はいらない」と思ったとしても、「思いやりを持とう」と心にゆとりができました。相手もこの場をどうにかしたくて、何かを言っている。こちらに文句を言いたいわけじゃないんだ、と分かりました。


ーー旦那さんはすでに作品をご覧になっているんですか。


早見:観ていないです。もともと、私が出演している作品を全然観ない人なんです。でも、今回は初めて私から「この作品を観て」と伝えました。でも、「観ることによって、(映画で男女脳の違いがわかるはずなのに)『全然分かってない』と言われたくもないから観たくない」と言われました(笑)。


ーー映画を観たらお互いにこのケースは……? と思ってしまいますよね(笑)。


早見:そうなんです(笑)。でも、「絶対に観に行ってね」と伝えています。


ーー早見さんが演じる主人公の愛は、大学でAIの研究をする「リケジョ」です。早見さんご自身も理系的な思考ですか。


早見:「リケジョ」って響きだけで賢さがでていますよね(笑)。愛ちゃんはどの年代、シチュエーションにも、解決策を見出して、きちんと相手に言葉を伝えているのがすごいなと思いました。私は理系ではなくてどちらかといえば文系です。ずっとヘラヘラしているので、「ヘラジョ」でしょうか(笑)。基本的にすごくポジティブで嫌なことは寝たら忘れてしまうんです。辛いこと、嫌なことは引きづらないことが何より大事だと思っています。でも、覚えるのは早いのですが、忘れるのも早いのが問題です(笑)。


●受け入れることが何よりも大事


ーーこうしてお話を聞いていると非常に早見さんはユーモアがある方だとわかるのですが、未だ世間的には「クール」というイメージも強いかと思います。


早見:そうなんです。だからときどき笑っているだけで驚かれることもあります(笑)。一時期は真顔の写真が使われることが多かったのも原因かもしれません。でも、どう思われてもいいというのが正直なところです。特にお芝居をしているときは「早見あかり」のことはどうでもよくて、演じている役自体を見ていただければと思っています。


ーー愛は結婚式場のバイトとして、新郎新婦をはじめとした男女トラブルを脳科学を駆使して解決に導いていきます。演じる上で意識しされたことはありますか。


早見:自分の専門的な分野を持っている人は、相手に何かを伝えるときにスイッチが入ったように早口でしゃべる印象がありました。なので、今回は普通に会話をしているときと、愛ちゃんがスイッチが入って脳科学教育モードに入る時の切り替えを意識しました。長いセリフを早口で言うことが多かったのですが、私自身も普段から早口なので演じやすかったです。


ーーシチュエーションごとに男女の脳の違いを解説するという役回りでセリフも非常に多かったですね。


早見:今までで一番多かったかもしれません。でも、難しい専門用語を話すわけではなく、愛ちゃんのセリフのひとつひとつが腑に落ちるというか、「そうだったのか!」と自分の体験と重ね合わることができたので、スッとセリフは入ってきました。


ーー早見さんは『ウレロ☆未確認少女』(テレビ東京系)シリーズや、福田雄一作品などでもコメディエンヌとして存在感を発揮しています。本作の芝居でもその経験は生きましたか。


早見:愛ちゃんの指導的立場でもあるウエディングプランナーの青柳さん(平岡祐太)がかなりクレイジーな方で。平岡さんが全力で演じられている姿を見て、思わず羨ましいなと思ってしまうところもありました(笑)。これまでの経験が生きたと感じたのは、愛ちゃんが言葉ではなく、“顔”で心境を表現したところ。新郎(佐伯大地)が母親(朝加真由美)と新婦(松井玲奈)に挟まれて右往左往とするシーンがあります。愛ちゃんは新郎にそんな状態を乗り切るアドバイスを事前に伝えていたのですが、新郎がそれを実践できない。その姿を見て、段階を踏みながら「はいはい」「あーあ」「やっちゃった」という心境の変化は、わざとわかりやすく演じたところもありました。


ーー確かにあのシーンは早見さんの表情で言葉が伝わってくるようでした。4月に開催された沖縄国際映画祭では、最高峰となる「おーきな観客賞」を受賞しています。映画を観て得た知識を、実生活において実践してみる人も少なくないかと思います。


早見:受賞は本当にびっくりしました。沢山の作品が出典される中で、満足度がいちばん高かったのは本当にうれしかったです。そして、この作品のテーマは誰が観ても、どの世代が観ても届くものになっているという自信になりました。


ーー人それぞれの男女の違い、考え方の違いを知り、思いやりの心を持てば、より豊かな気持ちで毎日を過ごせますよね。


早見:そうなんです! 悪いことが減ると思います(笑)。世の中の男女が本作を通して絶対にいい方向にいくと思うんです。少なくとも悪い方向にはいかないはず。知って損はしない情報なので、多くの人に観ていただきたいです。普段、プライベートの友達には私の出演している作品は観てもらいたくない気持ちもあるのですが、本作は全友達に観てほしい。実際、友達カップルと一緒に食事をする際などは、愛ちゃんモードで男性と女性の脳の違いを得意げに教えてしまったりします(笑)。実際、求めるだけではなくて、受け入れることが何よりも大事なんだと作品を本作を通して学びました。違うからこそ人は一緒にいることができる。価値観をすり合わせることは難しいですが、その埋め合わせをすることが何よりも楽しい作業になるわけです。いろんな生き方がある、さまざまなジャンルの人がいる。どれが正解ではないですし、同じトラブルでも解決法はカップルによって真逆のこともあると思います。でも、共通しているのは思いやりを持つことなんだなと。それを観客の方々にも感じていただければうれしいです。


(取材・文=石井達也/ヘアメイク=青木理恵(SOUP)/スタイリスト=坂井七帆)