F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は2019年F1第7戦カナダGPだ。
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☆ ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)
FP1出走=20番手
ウイリアムズが現在のFIA-F2シリーズのリーダーであるラティフィを彼の母国であるカナダGPのFP1に起用した。
ラティフィは、5月に行われたバルセロナテストでは好タイム(9位)をマーク。カナダGP初日のダスティな路面コンディションで33周をそつなく走り、ジョージ・ラッセルと“0.210秒差”。
FP2からマシンに戻ったロバート・クビサよりも小差だった。これをチームがどう評価するか。次戦フランスGPのFP1ではラッセルのマシンに乗る予定、クビサとしては意識せざるを得ない。
☆☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
予選=19番手&決勝=16位
3回目の16位、全7戦を100%完走中。現状のウイリアムズFW42で、ハースのケビン・マグヌッセンに対し8秒先行してゴール。トップチームにラップダウンされるときは譲りすぐに自分のペースへ戻す。ミナルディ新人時代のフェルナンド・アロンソがそう、着実に学んできている。
☆☆ ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)
予選=12番手&決勝=10位
トロロッソチームで“最多58戦目”、レースメイキングに落ち着きがうかがえる。じっくり観察し、67周目にタイヤ劣化に苦しむサインツを一撃でパス。3戦連続入賞の10位で表情も柔和に……。
☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
予選=9番手&決勝=11位
初日に計79周。数々のアップデートを試しベースセッティングを構築、FP2で4番手に。予選Q2に“7番手”相当のベストタイムをマークしたがQ3でペナルティを喫し、11番グリッドに降格。決勝では、ブレーキダクトにデブリが絡み3周目に緊急ピットストップ。
超ロングスティントの末に無得点も、マクラーレンMCL34の進化に収穫ありだ。
■マックス・フェルスタッペンにとっては苦しい週末
☆☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
予選=3番手&決勝=3位
刻々と路面状態が変化した予選、ファインチューニングが外れた。ここは“経験値”の差が出やすいコースでもある。3番手キープのレース終盤にセバスチャン・ベッテルの『ペナルティ問題』が勃発。チームはパニックに陥り、この状況を彼に知らせなかった。
60周目はベッテルに10秒差、65周目は7秒差、このペースなら70周目に5秒差圏内も可能だった(つまりベッテルを上回る2位)。直ちにペースアップさせ、2番手ルイス・ハミルトンを揺さぶる戦法もあり得たが。一台にかかりっきりのチーム能力が今のフェラーリ……。
☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)
予選=7番手&決勝=7位
スタートでメルセデスのバルテリ・ボッタスをかわし6番手、ソフトタイヤをケアしながら16周をカバー。金曜からロングランペースに確かな手ごたえを得ていたルノー勢が中団グループをリード。戦略違いのリカルドに追従する“チームオーダー”を守り、開幕戦以来の7位、チームファーストに徹した。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選=11番手&決勝=5位
今季もっとも苦しい週末だった。金曜は“チャンピオンの壁"にヒットし十分な走行ができず、土曜予選はソフトタイヤでアタック中に赤旗。
昨年アメリカGP以来の“後方スタート”になったが、沈着冷静にハードタイヤで48周。ミディアムタイヤ装着後は果敢にルノー2台をパス、5位フィニッシュでレースをまとめた。
低速ヘアピンでは引けを取らないもののストレートラインと中速コーナーが劣っていたレッドブル・ホンダ。夏の連戦に向け対応策が急がれる……。
■母国GPで再び入賞。地元“期待の星”ランス・ストロール
☆☆☆☆ ランス・ストロール(レーシングポイント)
予選=18番手&決勝=9位
2年前の再現だ。同じ17番グリッドから9位フィニッシュ、母国GPで彼は何かをもっている(!?)。高温になった金曜FP2で10番手につけ、ロングランペースも安定していた。
オープニングラップで這い上がり14番手、そこからハードタイヤで45周ロングスティントを実行。このチームに移って進歩したのはここだ。2029年まで長期契約済みのカナダGP、真新しいピットビルもでき、これからさらに彼が盛り上げるか。モントオリオール市とケベック州にとってストロールは、『期待の星』だ……。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
予選=1番手&決勝=2位
ひとつ言えるのは、この『ペナルティ事件』が終盤戦タイトル争いの渦中に起きたら、F1界は未曽有の大問題に直面することになるだろう。
今後またどこかで起こりうる事案だけに、スチュワードの裁定プロセスなどに透明性が求められる。
判例として次のレースからいったんコースを外れたら、合流する瞬間に後続車に減速を強いたら(接触を回避しても)アウト――。スタート後に1コーナーで複数車両がそうなった場合、四者合議制のスチュワードはすべてをジャッジしなくてはならない。ベッテルはこのスポーツに一石を投じた。
☆4.5 ルイス・ハミルトン(メルセデス)
予選=2番手&決勝=1位
五冠王が追う者の強みを見せた。ベッテルに対し46周目(-0.741秒)、47周目(-0.686秒)、ラインをわずかに変えながら前を走るベッテルにプレッシャーを与えた。その直後、ベッテルは3コーナー・エントリーでリズムを狂わせ芝生へ……。
前戦のモナコGPではフェルスタッペンに追われても守りぬき、ここでは逆の立場で追って攻めきり3連勝。今季5勝目は違う勝ちパターン、表彰セレモニーでは敗者ベッテルをかばう発言をした。
☆☆☆☆☆ ダニエル・リカルド(ルノー)
予選=4番手&決勝=6位
ぐいぐい上げていった予選4番手、1分11秒071。セクターベストを合わせれば1分10秒970だ。これは昨年7位のヒュルケンベルグ1分11秒973を“1秒”も上回る(全チームで最も短縮)。
最新パワーユニットのチューニング&予選モードと、シャシーのエアロアップデートによる相乗効果だ。2016年に現ワークス体制に移行して初めての2列目グリッド。
次の母国、フランスGPを前にルノー陣営はここでアップデート第1弾を確認。さらにポールリカールには第2弾を投入予定だ。ボッタスと争い手ごたえを得た元気なリカルド、総力戦の機会が巡れば持ち前の腕を披露していくだろう。