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実写『アラジン』、王女が歌う“スピーチレス”などアニメ版と異なる新要素

2019年06月14日 20:40  CINRA.NET

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ディズニーによる実写映画『アラジン』 ©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
■アニメ版から約25年、ディズニー映画『アラジン』が実写化

6月7日から日本公開された実写映画『アラジン』。

公開第1週の週末3日間で動員数96万人、興行成績は約14億円に達するヒットを記録している。これは2017年公開の実写版映画『美女と野獣』を上回るオープニング成績だという。『美女と野獣』は日本で年間興行収入ランキング1位に輝いており、『アラジン』もこの夏日本で旋風を巻き起こすかもしれない。

本作は言わずと知れたディズニーのアニメーション映画の実写映画版だ。アニメ版は1992年に公開され、その年の世界興行収入1位となる大ヒットを記録している。おなじみの主題歌“ホール・ニュー・ワールド”は、『アカデミー賞』歌曲賞、『ゴールデングローブ賞』主題歌賞、『グラミー賞』最優秀楽曲賞を受賞した。

砂漠の王国を舞台にした貧しい青年アラジンと新しい世界に飛び出したい王女ジャスミンの身分違いの恋や、3つの願いを叶えるランプの魔人ジーニーのコミカルな魅力が多くの人の心を掴み、いまなおディズニー作品として高い人気を誇る。

実写映画版でアラジン役を演じているのは、オーディションで抜擢されたエジプト生まれ、カナダ出身のメナ・マスード。自由を求める王女ジャスミン役には、今年全米公開される予定のリブート版『チャーリーズ・エンジェル』でクリステン・スチュワート、エラ・バリンズカと共に新生エンジェルを演じるナオミ・スコットが起用されている。そしてランプの魔人ジーニーに扮するのはウィル・スミスだ。

監督は『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』『シャーロック・ホームズ』『コードネーム U.N.C.L.E.』などのガイ・リッチーが務めている。疾走感のあるクライムアクションを得意とするリッチーと、ディズニーの王道ミュージカルロマンスという予想外のタッグが生まれた。

■王女ジャスミンのプリンセス像を現代にアップデート。国のリーダーとなる大志を抱く

アニメ版から約25年の時を経て制作された実写版の『アラジン』は、大筋の物語はそのままに、2019年の時代に合わせたいくつかのアップデートがなされている。

その1つが王女ジャスミンのプリンセス像だ。アニメ版のジャスミンも勇敢で自分を持った女性として描かれているが、彼女は自身の結婚相手を自分で選ぶために戦った。一方で実写映画版ではそれだけではなく、国民のため、国民を想う真のリーダーになりたい、という目標をはっきりと口にする。

ジャスミンを演じたナオミ・スコットは幼少期に見て共感したというジャスミンについて「私と同じような濃い色の目と髪、肌の色を持つ外見のディズニープリンセスの登場はすごく大きな出来事だった」と当時を振り返っている。

さらにロサンゼルス・タイムスのインタビューでは「今回の映画では、ジャスミンはより大きな志を抱いていて、彼女自身の外に目を向け、邪悪な敵から国を守ろうとします。人々のリーダーとなり、同時に愛を手にすることは可能だと示しているのです。ガールズ、両方手に入れていいの。その2つは両立できるのです」と進化したキャラクター像について語る。

自分の強い意思で国を守ろうと敵に立ち向かうジャスミンの姿は、社会の様々な理不尽と立ち向かう現代の女性たちとも重なる。

■「私の声を奪わせない」。実写映画のために作られた新曲“スピーチレス”

そんなジャスミンの女性像を象徴するのが、実写映画に新たに加えられた楽曲“スピーチレス~心の声(原題:Speechless)”だ。

“ホール・ニュー・ワールド”などアニメ版の音楽も手掛けたアラン・メンケンと、『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』の楽曲も担当したベンジ・パセックとジャスティン・ポールによって生み出されたこの曲は、実写映画のために新たに制作された。

劇中では2度ジャスミンによって歌われるシーンがあり、王国を乗っ取ろうと企む大臣ジャファーに幽閉されそうになるジャスミンが、衛兵の手を払いのけて1人で歌い上げる。

「女性は美しいだけでいい。女性は国王にはなれない」と意見を封じられた彼女が「私は黙ったままでいない。誰も私の口をふさぐことはできない。私の声は絶対に奪わせない」と力強く歌う姿は強いカタルシスを生む。

アニメ版でジャスミンが歌う楽曲は“ホール・ニュー・ワールド”だけで、それはデュエット曲だった。実写映画でジャスミン1人が歌う曲として加えられた“スピーチレス”はまさに2019年版にふさわしいアップデートと言えるだろう。ディズニーアニメ『アナと雪の女王』のヒット曲“レット・イット・ゴー~ありのままで~”と比較する声もある。

■王女ジャスミンと新キャラクターである侍女ダリアのシスターフッド

アニメ版と実写映画版の違いとしては、新キャラクター・ダリアにも触れておきたい。

ナシム・ペドラド演じるダリアはジャスミンの侍女であり、唯一心を許して話せる親友だ。アニメ版では虎のラジャーだけが親友だった。またアニメ版の主要キャラクターがジャスミンを除いて全て男性だったのに対し、本作では新たにダリアという魅力的な女性キャラクターが加えられた。

侍女と王女という立場でありながら、「恋バナ」を共有し、互いを助け合う2人はシスターフッドとも言うべき関係だ。ナオミ・スコットはハリウッド・レポーターのインタビューで「私たちはこの映画でジャスミンともう1人の女性との関係を見せて、『ああ、私が女友達といる時一緒だ』とか『私たちも同じ立場だったらそうする』と思ってほしかった。それはアニメ版にはなかった要素だと思います」と語っている。

■ウィル・スミス扮する魔人ジーニーの“フレンド・ライク・ミー”もヒップホップ要素を取り入れる

また本作では音楽にもアレンジが加えられている。

ランプの魔人ジーニーのおなじみの楽曲“フレンド・ライク・ミー”は、演じるウィル・スミスらしくヒップホップの要素を取り入れている。この曲が役作りにおいて重要な楽曲だったというスミスは「この音楽の奥底に、クラシックなヒップホップのビートを感じた時、『これぞ、自分の曲だ!』と感じられたんだ。そんなふうに、ヒップホップと遊んでいるうちに、ジーニーが生まれていったんだよ。“フレンド・ライク・ミー”を歌いながら、僕はジーニーを理解していったんだ!」と語る。エンドロールではDJキャレドをフィーチャーしたバージョンも使用されている。

名曲“ホール・ニュー・ワールド”は劇中のメナ・マスードとナオミ・スコットが歌う挿入歌だけでなく、元ワンダイレクションのゼインとジャヴァイア・ワードが歌うバージョンも。

日本語吹き替え版ではアラジンとジャスミンをそれぞれ演じる中村倫也、木下晴香の歌声を聴くことができる。

なお本日6月14日の日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』ではアニメ版『アラジン』を放送。実写映画を見る前にオリジナルをおさらいする絶好の機会となっている。