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WEC:2020/21年の新車両規定は”自由度”高し。さまざまタイプのハイパーカーをBoPで管理へ

2019年06月14日 19:41  AUTOSPORT web

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6月14日、ル・マンでWEC世界耐久選手権の2020/21年規定が発表された
第87回ル・マン24時間レースが開催中のフランス、ル・マンでACOフランス西部自動車クラブのプレスカンファレンスが行われ、2020/2021年のWEC世界耐久選手権でトップカテゴリーとなる“ハイパーカー規定”の概要が改めて明かされた。

 昨年のル・マンで、現行のLMP1に替わるカテゴリーとして発表された新車両規定は、ロードカーに近い外観を持つハイパーカーと、ローコストでシリーズに参戦できることがアピールされていた。

 その後、ACOは2018年12月に行った技術規定の公開を含め、複数回に渡って新たな車両ルールについてのインフォメーションを繰り返してきたが、今回のカンファレンスで、現在までに正式名称が決まっていない2020/21年規定の最新版が確認されている。

 現在、“ハイパーカー”の通称で呼ばれている新規定は、2020年9月から始まるWEC世界耐久選手権の新シーズンから正式に採用されることが決定。この新トップカテゴリーの創設にあたっては、マニュファクチャラーおよびプライベーターチーム間の競争の保証、年間予算の管理、そして華々しいスポーツカースタイルの採用という3つの指針が立てられたという。

 参戦車両については既報のとおり、ハイパーカースタイルのレーシングプロトタイプカーを製作する方法と、市販ハイパーカーを基にレーシングカーを仕立てる方法の両方が認められる。しかし、後者を選択した場合は、ベースとなるモデルを2年以内に20台以上製造しなければならないという条件が付随する。

 この新たな競技車両のミニマムウエイトは1100kgとされ、パワートレインの最高出力は750馬力(550kW)となる。エンジンは純ハイパーカーとロードカーベースのハイパーカーで規定が異なり、前者は専用設計のレース用エンジン又はハイパーカーに搭載されるモデルの改良版が許可される。一方で市販車ベースでは、オリジナルカーのもの若しくは、同じマニュファクチャラーが製造するエンジンに限られる。

 また、ハイブリッドシステムについては搭載を義務付けることはせず、ノンハイブリッド車の参戦も許可された。電気モーターの出力は最大270馬力(200kW)。その駆動の伝達は前輪のみに認められた。つまり、新規トップカテゴリー内には現行のLMP1と同様に、二輪駆動車と四輪駆動車が混在することを意味している。

 なお、ハイブリッドシステムの出力タイミングは2013年以来、ふたたび規制されることとなった。具体的にはスリックタイヤ装着時は120km/h以上から、ウェットタイヤ時は140~160km/hの範囲内のなかで指定された速度以上からの使用に限られる。この規制はハイブリッド車に対してノンハイブリッド車が著しく不利とならないよう盛り込まれたものだ。

 以上のルールをみても、クルマの成り立ちや搭載するエンジンの種類、マシンにハイブリッド搭載するか否かなど、さまざまなタイプのマシンが参戦可能であることが分かる。

 この自由度の高さについてACOのピエール・フィヨン会長は、前年の概要発表から多くのマニュファクチャラーが新規定に興味を示してきたが、みな、新たなカテゴリーが確実に成立するという保証を強く求めてきたという。

 実際に、この規定の草案を形作ってきたテクニカルワーキングには多数の自動車メーカーの担当者が参加していたことが確認されているが、これまでに参戦を正式発表した大手メーカーはトヨタを含めて皆無だった。

 しかし、今回の発表の場には現在LMP1クラスで唯一ワークス参戦しているトヨタ以外の日本メーカーからも担当者が訪れており、ふたたび日本勢がル・マンのトップカテゴリーを競い合う姿が見られる可能性も否定できないだろう。

 なお、新規定マシンのル・マンでの目標ラップタイムは、当初3分20秒だったものが3分30秒へと修正された。また、使用するタイヤはシングルサプライヤーのものを使用することになるが、現時点でメーカー名は明らかにされていない。

 ACOとFIAはこの新たな規定のもとで生まれた車両をオートマチックBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)で管理する意向。同システムは現在、ル・マン24時間以外のWECシリーズ戦において、LM-GTE Proクラスで採用されている。新車両規定についてはこれまで北米のIMSAで採用されているDPiや、WECのGTEをトップカテゴリーに昇格させるGTE+といった案も出されていたが、それらは退けられた形だ。