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Wシリーズ参戦中の小山美姫、第3戦ミサノで4位入賞も「ここだというところで攻めきれなかった」

2019年06月14日 16:11  AUTOSPORT web

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Wシリーズを戦う小山美姫
2019年に新設された女性だけのフォーミュラレースシリーズ『Wシリーズ】に唯一の日本人ドライバーとして参戦している小山美姫。第1戦ホッケンハイム、第2戦ゾルダーでは苦戦を強いられたが、第3戦ミサノでは表彰台目前の4位入賞を果たした。

 小山は第3戦ミサノのフリープラクティス1回目ではエンジンから火が出るアクシデントがあり16番手と下位に沈んだものの、続くフリープラクティス2回目ではトップタイムを刻む。勢いに乗って挑んだ予選では、フリープラクティス2回目での自己ベストを更新する走りをみせ、6番手と3列目グリッドにつけてみせた。

 迎えた決勝では序盤に4番手だったアリス・パウエルがクラッシュからコースオフしたためセーフティカーが導入される。これで小山は5番手へポジションを上げた。

 セーフティカーラン解除後、小山は前を走るビッキー・ピリアをテール・トゥ・ノーズで追いかけると9周目にオーバーテイク。4番手に浮上してみせる。

 その後は先行するファビエン・ヴォールヴェントを攻め立てたものの、オーバーテイクには至らず。それでもベストリザルトとなる4位入賞を果たした。

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――前の2戦と少し間が空いて今季の第3戦目ですが、少しはリフレッシュしてレースに臨めましたか?
小山美姫(以下小山):2戦を走って、自分なりの課題や確認事項を整理してミサノへ来ました。ハイスピードのレイアウトは私の好みでもあり、多分いい感触で走れるのではないかという気がしていました。走ってすぐに、自分が想像していたイメージどおりのコースだと思いましたね。

――1回目のフリープラクティスでは走り始めて間もなくトラブルがあったようですが?
小山:エンジンが突如燃えてしまいました。一回目のフリープラクティスでは新品のブレーキで走行を開始しました。最初の15分間は必ずユーズドタイヤで走行しなければなりませんので、感触を試しながら走行し始めたばかりでしたので、貴重なフリープラクティスで13ラップの走行ができなくなったのは大きなダメージでした。

 エンジンが燃え始めていたことにまったく気付かず、ピットへ戻った際に煙が上がってすぐに火は消し止められました。

――2回目のフリープラクティスはトップタイムを記録しました。
小山:1回目のフリープラクティスでは最初にユーズド、残り30分を新品タイヤで走行するのですが、私は1度目のフリープラクティスでほとんど走行できなかったので、新品タイヤがそのまま残っていたのです。

 ですから、みんながユーズドで走行しているなかで私ひとりだけが新品タイヤだったので、必ずトップを取らないといけない走行でした。ユーズドで走行しているみんながタイムを上げて走っているなか、私が良いタイムを出せたのはセッション後半だったので、手放しで喜べる状態ではなかったと思います。

――これまでの2戦で予想外の苦戦を経験したことで、自分自身にも変化が見られましたか?
小山:タイヤの使い方が理解できていても、目やスピード感に慣れることは容易ではありませんでしたが、それも含めて、ライバルの状況も冷静に状況を判断できるようになってきたと感じますし、それをメリットとして受け止めて、自信にしないといけないなと思いました。

――自信を味方に臨んだ予選でしたが、今までの経験を元に事前準備もしっかりとしてきたのですか?
小山:今まで1番の問題だったエンジニアとのコミュニケーションを改善する努力をしました。言葉の壁というハンデキャップもありますが、私の考えるレースの方向性や予選の組み立てを担当エンジニアと、自分の言葉でとことん話し合うようにしました。

 赤旗が出た場合のことも予測しながら、予選アタックのタイミングを緻密に計算して挑みました。また、前戦から時間が少し空いたこともあり、日本では今までお世話になっている先輩方からのレクチャーやアドバイスを受けてきました。

――早くも3戦目となったWシリーズですが、何があなたにとって難しく感じるのですか?
小山:タイヤの使い方、マシンの動かし方、言葉の壁……いろいろとあるのですが、やはり日本とはまったく違うのはサーキットそのものだと思います。ラインの使い方の違い、縁石の作りの違い等、使い方を間違うとタイムには絶対につながらないことですね。

 ミサノのように、日本にはないレイアウトのサーキットだと、どこでどういう走りをするかという事を考えた時に、主に日本やアジアだけでレースをしてきた私の想像とは少しずれていると思います。

 長くレース経験がある私は大体ここでどういう走りをして……ということはすぐに理解ができますが、ヨーロッパのレースでシビアに戦略を詰めようとする時には自分の考えと理想がずれていると感じます。

 マシンの特性上、それを正確に判断するためには、車重やセットアップの方向性とサーキットの特徴を正確に判断できないと上位には入れません。

――ミサノ戦の決勝をふり返ると?
小山:今回はSC(セーフティカー)が入らないことを想定してレースの組み立てをして決勝に挑みました。円を描きながらハイスピードに入るセクターが組み合わさるこのサーキットの読みがまだ甘かったと思います。

 予選を終えて、コースレイアウトと決勝の走りの組み立てをしていたし、誰をどこで抜けそうだということも先読みをしていたとは言え、まだ準備が十分とは言えなかったと思います。

――スタート直後に起きたクラッシュに巻き込まれず、徐々にポジションをアップして、もう少しで表彰だというところまでいきましたが……。
小山:ペースも徐々に上がっていましたが、トップ3のドライバーたちは互いにグループの中で切磋琢磨し、さらにペースを上げていくなかで、そのグループの後ろにひとりで着く私は力が一歩及ばなかった、ここだというところで攻めきれませんでした。

――ヨーロッパのレースに少し慣れてきた感じがしますね。
小山:今までセットアップをころころと変えて、失敗を重ねてきた分、やっとその失敗が活かされたというのが今回のレースで活かされたところかと思います。悩んで失敗をしてきた分、少し先の光が見えた気がします。

 エンジニアやメカニックとのコミュニケーションを積極的に自分から働きかけるようにできたのも成長できた点ですね。ここからチャンピオンを狙うのは、実質的に難しいと感じます。あくまで私の第一目標はF1ですが、将来にどのカテゴリに進むにもここで経験を積み、自分の引き出しを増やすのは大切だと実感しています。

――女子ばかりのWシリーズ、他のメンバーとのコミュニケーションという意味ではいかがですか?
小山:いつもレースの後はみんなでクラブに繰り出して、明け方まで踊りまくります。英語という部分ではまだまだ流暢とはいきませんが、私はダンスが得意なので、ダンスがコミュニケーションツールとして、とても役に立っています。

 言葉の問題で孤立していると思われていそうですが、レースは厳しく、そしてアフターレースはリラックスしてエンジョイしています。

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 ヨーロッパのレースのカルチャーショックに少しずつ慣れながら成長をする小山。Wシリーズの第3戦を終えた小山は、現在までに22ポイントを獲得し、ポイントランキング7位につけている。

 次戦は7月5~6日にドイツのノリスリンクで開催される。