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ル・マン24時間:“58歳のルーキー”星野敏がレースウイークに挑む。「無事に完走させるのが自分の仕事」

2019年06月13日 05:41  AUTOSPORT web

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デンプシー・プロトン・レーシングのポルシェを駆り初めてのル・マン24時間に挑む星野敏
いよいよ6月12日、現地時間16時からフリープラクティスがスタートした第87回ル・マン24時間耐久レース。今回、デンプシー・プロトン・レーシングと日本でスーパーGTやピレリスーパー耐久シリーズで活躍するD'station Racingのコラボレーションとして、88号車ポルシェ911 RSRに、星野敏が乗り込んでいる。レースを前に今の心境を聞いた。

 エンターテインメント企業であるNEXUS株式会社の代表であり、一代で企業を発展させた星野は、かつてはフェンシングで全日本選手権を制したりと活躍し、オリンピックを目指していた。それは叶わなかったが、起業した会社はその手腕により大きく発展。その後もフェンシングをはじめ多くのアスリートを支援する活動を行い続けているが、一方で自らはモータースポーツにのめり込んだ。

 その頃から、星野が目標としていたのはル・マン24時間だった。ピレリスーパー耐久シリーズのST-Xクラスやポルシェカレラカップ・ジャパン等、国内で腕を磨く一方でデイトナ24時間やドバイ24時間など海外のレースにも挑戦。ル・マンへのきっかけを掴んだのは、2018年のWEC世界耐久選手権のスポット参戦だった。慣れ親しんだ富士スピードウェイでのレースだったとは言え、LM-GTE Amクラスのポールポジション獲得という快挙を成し遂げ、レースではその後ペナルティを受けたものの、表彰台も獲得してみせた。

 そしてついに掴んだ夢のル・マン24時間挑戦へのチャンス。58歳ながら、ふだんからトレーニングを欠かさず真摯にレース活動に取り組み、ここ数年で一気に速さを増してきた星野だけに、大いに期待したいところではあるが、「ル・マンのベテランが多いですし、優勝や表彰台というのはちょっとおこがましいと思っています。WECの富士は自分でも想定外でしたからね。そんなに甘いものではないと思います」と謙虚なコメントを発した。

「まずクルマを壊さず、無事に完走させるのが自分の仕事だと思います。最低限、そこはなんとか達成したいですね」と星野。

「今回はデンプシー・プロトン・レーシングという大きなチームの“一員”として加わっていますので、ふだんとは違いますよね。いつもはD'station Racingというチームのオーナー兼ドライバーなのである程度自由が効きますが、今回はひとりのドライバーという立場ですから。それをわきまえながら、出しゃばらず、チームのオーダーに従って、自分のすべき仕事をしようと思っています」

 そんななかではあるが、星野自身はル・マン24時間の雰囲気を感じているようだ。以前、ポルシェカレラカップにスポット参戦してコース自体は知っているが、「ル・マンならではの雰囲気がありますね。緊張感もありますし、すごいところに来ちゃった感じですね(笑)」とメインレースのドライバーの一員となったことを実感している。

「ファンも平日からすごい人出ですよね。昨日オートグラフセッション(サイン会)に参加しましたが、初めて1時間半もやりました(笑)。やはり『世界一のレースだな』と感じます」

 迎えたフリープラクティスでは、不安定な天候のなか、濡れた路面に足をとられコースアウトを喫したものの、ダメージはほとんどなく、セッション終盤にはふたたびコースイン。少しずつサルト・サーキットへの習熟を続けている。

「雨も不安ですが、フリープラクティスのなかでうまく感触をつかむことができればと思っています。周回を重ねてなんとか慣れていきたいですね」

 ジェントルマンドライバーが必ず一定数の周回をこなさなければならないLM-GTE Amクラスは、ジェントルマン=星野の活躍が成績に直結する。ジェントルマンドライバーにとっては最高峰の活躍の舞台で、まず目指す完走という目標に向け、“58歳のル・マン24時間ルーキー”の挑戦はまだ始まったばかりだ。