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広告は「ギガ放題」なのに「速度制限」、UQ側の賠償確定 代理人「業界全体の問題」

2019年06月12日 14:51  弁護士ドットコム

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「速さもデータ量もギガヤバだ!」「追加料金なしで使い放題」ーー。


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モバイルWi-Fiルーターなどを提供する「UQコミュニケーションズ」(東京都港区)の広告について、「ギガ放題」というプランを契約した男性が、実際には速度制限があったとして同社などに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)が、同社と通信サービスの販売代理店「ラネット」側の上告を受理しないと決定した。決定は6月7日付。



「通信速度が高速であり通信料を自主規制する必要もないと誤解させる内容の広告表示を行った」などとして会社側の責任を認め、2万1239円の支払いを命じた東京高裁の判決が確定した。



高裁判決の内容については、「契約時の『録音』が決め手に…UQ『ギガ放題』広告に賠償命令」(https://www.bengo4.com/c_8/n_7853/)にまとめている。



「最高裁判所における訴訟事件の概況」によると、上告受理申立て事件の約7割が3カ月以内に不受理決定を受ける(2010年)のに対し、今回の事件は13カ月以上が経過してようやく不受理決定が出された。



原告側代理人の平野敬弁護士は「最高裁としても、内容面を含め慎重に検討したうえで判断したものとうかがえる」と話す。



●高裁判決は「通信業界全体を見すえた説諭」

広告や販売の際の説明について、高裁判決は「顧客獲得競争は、基本的には自由競争であるが、シェア拡大、1位争いに走るあまり、一部のユーザに誤認混同のおそれを生じさせ、獲得すべきでない顧客を獲得してまでシェア拡大を目指すような広告・説明は、社会的に許されないものというべきである」と厳しく批判している。



平野弁護士は「これは今回の事件のみならず通信業界全体を見すえた説諭」と指摘する。



「インターネットやモバイル通信は現代人にとってもはや生活必需品であり、通信技術に精通した人だけが使うものではありません。誇大広告や不正確な説明によって消費者が惑わされることのないよう、業界をあげて取り組んでいただきたいと思います」(平野弁護士)



また、広告や販売の際の説明以外に、解約手数料についても高裁判決は言及した。



「消費者契約法9条は高すぎる解約金を無効としていますが、高すぎることの立証責任は消費者側に課せられています。このため、解約金の是非を消費者が争うのは厳しく、ことに通信サービスのような複雑な商品では著しく困難でした。



現在、総務省の主導により携帯電話の解約金を低額化する議論が進んでいるところですが、これを機に、妥当な解約金の水準やその根拠づけについて、通信業界全体で考え直していただきたいと思います」(平野弁護士)



●UQの回答は

最高裁決定を受け、今後、UQコミュニケーションズは高裁判決で指摘のあった広告や契約時の販売マニュアル、契約解除料について、変更する予定はあるのだろうか。弁護士ドットコムニュースの取材に対し、以下のように回答した。



ーー最高裁決定を受けて、コメントをお願いします



「弊社の主張が認められず大変残念ではあります。弊社としましては、今後も、お客様にWiMAXサービスを安心してご利用いただくため、引き続き、広告表現等について、お客様に分かりやすく誤解のなきよう展開していく所存です」



ーー4月18日東京高裁判決は、契約時における販売店の説明について、「『軽い制限』にすぎず、3日3G制限の引き金を引くことは極めて稀であると誤解させるような説明をしている」と指摘しました。今後、販売マニュアルをどのように改善される予定ですか



「販売マニュアルは、お客様が誤認しないことが大原則であり、法令及びガイドライン等の関係規範に則って作成しております。引き続き、お客様視点に立ち、策定してまいります」



ーー現在、UQコミュニケーションズは、契約満了月の末日またはその翌月以外に解約した場合、契約解除料として、使用経過年数に応じて3段階の区分を設け9500円~19000円を請求していますが、高裁判決は「ユーザーからの解約があった場合の平均的な損害は数千円程度と認められる」と指摘しました。今後契約金を見直す予定はありますか



「今後については、未定です」



ーー高裁判決は、「月刊データ量制限ナシ!」といったUQコミュニケーションズの広告表現について、「通信料を引き金とする通信制限の存在は目立たないような広告をして、他社と比べて優位な差別化が実現できているものと誤認混同させるおそれが非常に高いものである」と指摘しました。判決を受けて、提供しているモバイルWi-Fiルーターの広告について、改善した部分はありますか



「これまでも、広告表示については、お客様目線で事前に内容確認した上、業界のガイドラインを遵守して掲出しております。なお、販促物等では、速度表記に近接して現状の3日10G制限について表示し、また、HPでは、速度制限に関する説明ページを設けるなど、お客様により判りやすい説明を心がけております」