6月12日から走行が始まる第87回ル・マン24時間レースに、2台体制で参戦しているBMWチームMTEKは、LM-GTEプロクラス車両のパフォーマンスを調整するBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)が更新されることを期待している。
元DTMドライバーのアウグスト・ファーフスと若手のジェシー・クローンとともに82号車BMW M8 GTEのステアリングを握るアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、BMW陣営で迎える2度目のル・マンが「長く、我慢を強いられれる」レースになる可能性が高いと考えている。
本番に先駆け、6月2日に行われたテストデーにおいて、BMWチームMTEKのM8 GTE勢は2台揃ってLM-GTEプロクラス最後方に沈んだ。僚友81号車BMWのマーティン・トムチェクが記録したチーム最速タイムは3分56秒415。これはコルベット・レーシングの63号車シボレー・コルベットC7.Rを駆る、マイク・ロッケンフェラーがマークしたクラストップタイムから約2.4秒遅いものだった。
テスト前に交付された最新BoPで、BMWは2018年のル・マン24時間と比べて9kg重い1280kgの車両最低重量を指定され、あわせてターボの最大過給圧もエンジン回転数のほぼ全域で50ミリバール分低い数値に変更されている。
ダ・コスタは、このBoPによって8.5マイル(13.626km)のサルト・サーキット1周あたり約1.5秒のディスアドバンテージを抱えていると見積もる。
「ラップタイムを見なければ、コーナーでのフィーリングは良いので僕たちのクルマは速いと言えただろう」とダ・コスタ。
「僕らはこの1年間、WEC世界耐久選手権の下でレースを戦い続け、いま、1年ぶりにここに戻ってきた。そのル・マンでは僕たちがチームとして成し遂げた進歩をみせたいと思っているんだ」
「我々はみな、戦いのための準備ができているが、残念ながら僕たちに与えられたBoPはそうではないみたいだ……。BoPについて話すのは好きではないし、BoPで優位に立ちたいとも思わない。だけど、せめて同じレースを戦わせてほしいんだ」
「(24時間レースは)たとえ最高のクルマをもっていたとしても勝つのは難しい。となれば、僕たちが置かれている状況ではただひたすら、長く退屈なレースを過ごすことになるのが予想できる。それは本当にやりたくないことのひとつだよ」
「ドライバーとしてこの場所に居られるのは特別なことだよ。しかし、そんな大舞台で“何か”に左右されてしまうのは嫌なんだ。公平なレースができる状況を手に入れ、僕たちもコンペティションに参加できることを願っているよ」
■「わずかな再調整でM8 GTEはパックの中に戻れる」とBMWチームMTEK代表
ダ・コスタと同様に、MTEKチームのエルンスト・クノース代表もプレイベント前に適用されたBoPによる締め付けは「行き過ぎたもの」であるとの見解を示した。
テストデー前に交付されたBoPではBMWをはじめ、LM-GTEプロクラスに参戦する6メーカーのマシンすべてに対して調整が行われ、全モデルがル・マン以外のWECシリーズ戦と比べてわずかにパフォーマンスを下げられている。
これについて、ダ・コスタは他メーカーが2~3%の下げ幅なのに対して、BMWは潜在的なラップタイムで7%失っていると主張する。
BMWチームMTEKがレースウイーク中のBoP更新を望むかとの質問に対し、クノースは「そう願っている」と答えた。
昨年のル・マンでは予選後、GTEクラスに対する追加のBoPが発表され、ペースに苦しんでいたアストンマーティン・バンテージAMRとBMW M8 GTEはそれぞれ10kgのウエイト削減措置を受けている。
「結局のところ、ACOフランス西部自動車クラブにとっても難しい調整であることは私も理解している」と語ったクノース。
「我々がクルマを学び、より良いパッケージを手に入れ、さらにもう少し開発を進めたとき、シーズンを通して私たちがどれほどのゲインを得たかを彼らは正しく数値化する必要がある。そして、彼らはそれが他メーカーのクルマのパフォーマンスとどう適合するかを見定めなければなならない」
「(現在適用されているBoPでは)おそらく、調整値が少し行き過ぎているのだと思う。これをわずかに再調整すれば、我々のクルマも少なくとも集団の中に戻ることができるだろう」
「それが私たちの目標であり、最終的にはACOの目標でもあると思うよ」