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千遥の行方はーー『なつぞら』広瀬すずが生き別れた妹に思いを馳せる

2019年06月12日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 なつ(広瀬すず)は、自分がいま関わっている仕上げの仕事の中でも重要な、トレースという作業に挑戦する。これは動画の線を崩さずにセルに写し取ることで、年季がいる上、いまの彼女が担当する彩色以上に向き不向きがあるらしい。


 朝ドラ『なつぞら』(NHK)第63話では、なつが自分と同じように東京で奮闘している信哉(工藤阿須加)の仕事ぶりを目にすることとなる。それは、テレビのニュース番組「都会の迷子たち」というものであった。


【写真】咲太郎・なつ・千遥の姿


 トレース画を立て続けに10枚も描かされたなつ。これはあくまでドラマなのだから、あっという間に10枚描き上げてしまっているという具合だが、かなりの集中力と根気を必要としそうである。シーンとしては短いものではあるのの、演じる広瀬の疲弊具合や緊張した様子から、その一筋縄ではいかない難しさが伝わってくるのだ。


 これを全て重ねてみると、バラバラにズレていることが明確に分かる。しかしなつだけでなく、ベテランがどれだけ上手く描いても完璧に重なることはないらしい。けれどもこれが、絵に命を与える微かな動きとなるようだ。実に奥深い。


 そんな話をなつが桃代(伊原六花)としていたところ、お年頃の二人の話題は、自分たちのファッションの方へ。そこへ、偶然にも話を聞いていた下山(川島明)が割って入ってくる。彼いわく、二人とも毎日違う服を着ているか、アイテムの組み合わせを変えていて、良く頑張っているとのこと。そう言って彼は、自身の持ち歩いているスケッチブックを開いてみせる。そこには、さまざまな色や形をした服を着こなすなつと桃代の姿があった。この下山の行為自体は現代ならグレーな感じもするが、彼は絵描きである。それをなつたちは理解しているし、スケッチされた二人の姿は、なんとも微笑ましいものであった。


 そしてなつは川村屋へ。店にはテレビが導入され、ますます繁盛しているようだ。そこへ偶然、信哉もやってくる。放送局に記者として務める彼の担当した大きな仕事が、間もなく放送されるのだという。それが「都会の迷子たち」という番組なのであった。これは大都会・東京で、家族とはぐれた子どもたちの実態を捉えたものである。ここでなつの中に、ある気持ちが芽生える。それは戦禍をともに生き抜こうとした、妹の千遥のことだ。


 なつは千遥を探すことを決意する。いままで乗り気でなかった兄・咲太郎(岡田将生)も背中を押してくれ、信哉という心強い味方もいる。兄妹が再会を果たせるのかどうか、見守っていきたい。


(折田侑駿)