ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)とアレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)によって展開された、スーパーバイク世界選手権(SBK)第6戦ヘレスのレース1の3番手争いは、最終ラップまでもつれた。
ふたりのバトルはレース折り返しの10周を過ぎたころに激しさを増していった。3番手を走るロウズとポールポジションスタートから4番手に後退してロウズを追うレイ。ふたりのライダーは何度も3番手を奪い合った。
レイは「午後には気温が上がり、バイクのリヤ部分などを少し変更したんだ。コーナーではとても苦労したよ。フロントタイヤに多くのストレスをかけ続けることになった」とレースを振り返る。確かに、レイはレース序盤から中盤にかけてトップ独走中のバウティスタに追い付くどころか、2番手をマイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)に奪われている。レイにとって苦しいレースだったのだろう。
レース終盤に入ってもロウズとレイは何度かオーバーテイクを繰り返し、ついに3番手争いは最終ラップまで持ち越された。最終ラップの1コーナーに3番手で入ったのはロウズ。レイはその背後だった。
そのままの順位で最終コーナーに突入するふたり。ややはらんだロウズのインに、レイがマシンをねじ込んだ。しかしそのとき、レイの右足とロウズの左腕が接触してしまう。ロウズはマシンの挙動を乱して転倒。これに対しレイは左手を上げ、ロウズが転倒した方に視線を送りながらメインストレートへ向かった。
この接触は審議の対象となった。レイは3位でフィニッシュしたが、結果的にペナルティを受け、ひとつポジションが繰り下がってレース1の結果は4位に。翌日のスーパーポール・レースでは最後尾グリッドとなった。
接触の様子について、レイはこう述べている。「自分がアレックスと同じようなペースだとわかった。最終ラップでは、最終コーナーに向けて可能な限り(ロウズに)接近したよ。ロウズのラインが少しワイドになったのを見て、インを突くことを決めたんだ」
「けれど残念ながらそのときロウズはすでに完全にコーナリングに入っていて、僕がオーバーテイクできるだけのすきまはなかった。僕たちは接触し、ロウズは転倒した」
「ロウズのレースを終わらせてしまい、本当に申し訳ない。けれど、これはレーシングアクシデント。最終ラップ、最終コーナーの戦いなんだから」
一方、目前で3位表彰台が露と消えたロウズ。「このレースではバイクがすごくよかったというわけでなかった。マイケルについていくことができなかったからね。でも、ペースは安定していたよ」と、振り返る。
ロウズはレイとの3番手争いを制することができるだろうと思っていたようだ。ロウズは残り3周でレイから3番手に浮上したあと、そのままチェッカーを目指していたのである。
「ジョニー(ジョナサン・レイ)といいバトルを展開していたよ。僕はジョニーよりも少し速さがあると感じていて、残り3周で(レイの)前に出たんだ」
「けれど、彼が大きな判断ミスをして、最終コーナーで僕を転倒させてしまった。まともに接触したから、かなり痛むよ。彼にペナルティが課されたけれど、表彰台と16ポイントを逃してしまったのは変えようのない事実だ。残念だよ」
ロウズはこの転倒により、左肩と左手を負傷。翌日のスーパーポール・レースとレース2には出走したが、どちらも転倒を喫する結果となった。
覆水盆に返らず。確かにロウズが失った3位も16ポイントも戻ることはないが、それほど拮抗した3番手争いだった、ともいえるのかもしれない。