全日本スーパーフォーミュラ選手権やスーパーGT GT500クラスに参戦している山下健太が、ル・マン24時間レースの現場を訪れている。トヨタのチームウェアをまとい、1週間後の決勝までチームに帯同するという。その目的は何なのだろうか? 本人に直撃した。
6月9日午後、ル・マン市内の公開車検場にTOYOTA GAZOO Racingのトランスポーターがやってきた。2台のトヨタTS050ハイブリッドがまもなく降ろされようかという頃には、トランスポーターの周囲を多くのトヨタスタッフが取り囲んだが、そのなかにトヨタのウェアを着た山下の姿があった。
先日のピレリ・スーパー耐久第3戦富士24時間の際に負傷したという首のギプスが痛々しい山下は、土曜日にフランスに到着。日曜日は朝からサーキットを訪れた後、車検場に顔を出したという。
「首は痛いですが、コレ(ギプス)のおかげでなんとかなっています」という山下は、初めて訪れたル・マンの雰囲気に「すごいですね。(お客さんがいっぱいで)もう、このおしくらまんじゅうみたいな感じが」と圧倒されていたようだった。
すでにコースの公道部分もクルマで走ってきたそうで、「ゲームとかでは走ったことあるんですが、実際にユノディエールを走ってみると直線がどこまでも続いていて、『なっげぇなぁ』と思いました。こんなに“普通の道”なんだな、って。マカオより路面はきれい(平坦)そうな感じはしましたけど、あそこで350km/h出すっていうのは……ちょっと怖いです」と、想像以上の“ワイルドさ”に驚いたようだ。
サルト・サーキットのピットビルディングについても「結構狭かったし、意外とボロいなぁ、と」と“山下節”を交えて感想を答えてくれた。
現在、WEC世界耐久選手権に参戦するTS050ハイブリッドには、日本人ドライバーとして中嶋一貴と小林可夢偉が搭乗しているが、今回の山下のチーム帯同は“その先”を見据えたものなのだろうか?
これまでの山下のキャリアでの海外レースは、マカオGPとスーパーGTのタイ戦くらいしかなく、周囲から見ても正直『海外志向』というイメージはあまりないが、今回のル・マン訪問は、本人いわく「将来に向けた勉強」という意味合いだという。
「トヨタが参戦しているトップカテゴリーですし、いまは一貴選手と可夢偉選手が乗っているので、まったく漠然とはしていますが、将来的にそこにいければいいなというのは、ずっと前から思っています」。いつ頃までにこのマシンに乗りたいか、という問いには「30歳くらいですかね」と、現在23歳の山下は答えた。
初めて訪れたル・マンで1週間にわたってレースとチームを見届けたあと、山下が“何を持ち帰るか”が興味深い。