フェラーリのセバスチャン・ベッテルは、F1カナダGPでトップでチェッカーフラッグを受けながら、ペナルティにより2位に降格された。納得できないベッテルは、裁定に対する強い憤りを言葉と行動で表した。
レースをリードするベッテルは、すぐ後ろを走るメルセデスのルイス・ハミルトンからポジションを守りながら走っている際に、ターン3でコースオフ。すぐにコースに復帰したが、その時、すぐ後ろにいたハミルトンをウォールぎりぎりまで押しやる形になった。スチュワードは、ベッテルは「ターン3でコースを離れ、ターン4で安全でない形でコースに復帰し、44号車(ハミルトン)をコース外に押し出した。44号車は接触を避けるためのアクションを取らなければならなかった」と判断、ベッテルに5秒のタイムペナルティとペナルティポイント2を科す裁定を下した。
チームから無線でペナルティを告げられた際にベッテルは「どこにも行き場がなかったんだ!」「彼らにレースを奪われた」「フェアじゃないよ。僕には怒る権利がある。何を言われたってかまわない」と憤りを示した。
「芝生の上に乗っていたんだ。目が見えない人でない限り、芝生の上を通過して、マシンをコントロールできるなんて考えるわけがない」とベッテルはチームに対し、ペナルティへの不満を語り続けた。
「ウォールにヒットしなくてラッキーだった。いったいどこに行けばよかった? こんなの間違っている。フェアじゃない」
■「今日の僕らはウイナーにふさわしい」とベッテル。フェラーリは控訴の意向示すも、裁定撤回は困難か
ベッテルは、チェッカーを受けた後には、マシンを所定の場所に停めず、インタビューを拒否して立ち去った。パルクフェルメに停められたハミルトンのメルセデスの前に置かれた「1位」のボードを外して、自分のマシンを停めるはずのスペースに置き、メルセデスの前に「2位」のボードを置くといった行動で抗議の気持ちを示したベッテルだが、チームの説得で表彰式には出席した。
ポディウムで受けたインタビューにおいて、ベッテルはこう語った。
「レースは本当に楽しかった。ファンを喜ばすことができたと思う。彼らが応援してくれているのが分かった」
「レースを通して、ルイスの方が少しペースがよかった。それでも前の位置をキープし続けることができた」
「その他のことについては、もう十分話したと思うから、彼らの考えを聞いてくれ。僕らは素晴らしいショーを披露したし、ルイスもリスペクトしてくれた」
表彰台に上るハミルトンに対し、観客からブーイングが起こり、「僕が決定を下したんじゃない。どうして僕がブーイングを受けるの?」とハミルトンが言うと、ベッテルは「皆、ルイスにブーイングすべきじゃないよ。ブーイングするなら、このおかしな決定についてやるべきだ」と語った。
「僕らは今日、勝利に値する仕事をしたと思う。素晴らしいレースだった。でも、こういう決定が出るなかで、このスポーツの人気が高まるだろうか? ファンは僕らがレースをするところを見たがっている。でも、これはレースじゃない」
決勝終了から数時間後、フェラーリは、FIAに対し、ベッテルへのペナルティ裁定に対して控訴を行う意向を示した。しかしベッテルが今回受けたタイムペナルティは控訴の対象にはならないとも言われており、すでにFIAはカナダGP決勝の正式結果を発行済みだ。