日本人の平均年収は400万円台前半だけど、地方と都市部を比べれば、当然都市部在住者のほうが年収は高くなる。地方は仕事もそんなに多く選べないし、稼ごうにもなかなか難しい。
だから、たとえば僕の出身地である宮崎とかだと、30代で年収500万もあれば「なかなかやるじゃん」みたいな目で見られるようになっている。まして年収600万ぐらいになれば、ちょっとした名士扱いされることもしばしば。
しかし、問題は稼いでからだ。地方在住者は、稼いだ後の使い道を見つけにくいのである。(文:松本ミゾレ)
「欲しい物もない。自分を満たす方法がない。モテたいとかもなくなった」
先日、2ちゃんねるに「地方在住だけど年収600万になった。結婚した。世帯年収1200万になった。子供もできた。貯金も2年で600万貯まった。なのに幸せを感じない」という掲示板を見つけた。
スレ主の現状はタイトルで大体把握できる。あまり欲がないのか、既に願望を叶えたようで、「欲しい物とかもない。なんなのこの虚無感」や「(貯金はあっても)自分を満たす方法がない」、「女にモテたいとかもなくなった」と書き込んでいる。人によっては贅沢に見えるのかもしれないが、僕はこれ、結構な地獄だと感じた。
人間、叶える夢をあらかた叶えると何をするにもモチベーションが下がる。矢継ぎ早に新しい夢や夢中になれるものに出会えれば御の字だけど、そんなに人生は都合がよくない。まして地方在住では、刺激も発見も都会より少ないわけだし。
何より田舎って、家も土地も安い。「夢のマイホーム」なんて言ったって、案外ちょっとしたお金で手に入ってしまう。後はもう、車に凝ることができればまだマシだけど、これも個人差が大きいし。
消費する娯楽しか知らないと幸せに鈍感になるのかも
すべての地方在住の小金持ちに当てはまることではないと思うけど、僕が見てきた限りだと、田舎の金持ちって割と退屈に喘いでいる印象が強かった。僕が若いころに働いていた飲み屋のオーナーは、することがないので高級盆栽に無理やりハマろうとしていたし、知人の地主は世界旅行に頻繁に出向いている。が、どちらも無理やりやっている感が強い。家でテレビを観るよりマシ、程度のものなのだろう。
あとはパチンコだろうか。とにかく田舎って娯楽そのものが乏しいのでパチンコぐらいしか暇つぶしの方法を知らない小金持ちもいる。
ただ、今まで言ってきた娯楽って全部、消費を伴う娯楽だ。稼いだ後の使い道が見つからなければ、お金を使わない娯楽に挑戦してみてはどうだろう。文章でも音楽でも絵でもなんでもいいけど、創作する楽しみが選択肢にあれば、新しい幸せも味わえるかもしれない。
お金はあるに越したことないけど、あったからって幸せが約束されるものでもないと思うんだよね。娯楽は人生を彩る清涼剤。清涼剤のバラエティは多いほうがいい。