2019年06月09日 09:21 弁護士ドットコム
持病で入院することになったら、会社が「解雇」をちらつかせてきたーー。こんな相談が弁護士ドットコムに複数寄せられています。
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ある女性は、持病により3カ月ほど入院することになりました。会社からは「1ヶ月休んだら解雇になる。法律で決まっている」と伝えられ、「本当にそうなのか」と疑っています。
また持病が悪化し仕事を休んでいるという男性は、手術をするため、会社には「2カ月ぐらいは休むかもしれない」と伝えました。診断書も出しましたが、会社の反応は悪く、解雇を心配しています。
持病の入院を理由に、解雇されることはあるのでしょうか。その場合、どのくらいの入院期間で解雇されるのでしょうか。青龍美和子弁護士に聞きました。
相談者は会社から「1ヶ月休んだら解雇になる。法律で決まっている」と伝えられたそうです。本当ですか?
「傷病休職とは、業務外での疾病などにより相当長期間にわたって就労することができない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除し、またはこれを禁止することをいいます。
休職期間中に休職する理由がなくなった場合は、当然、休職が解除され復職となります。休職の定義や、休職期間の制限、復職の条件などについては、労働基準法等に定めはありません。
そのため、相談者の事例は、会社の言っていることが間違っているといえます」
法律では定められていないとなると、就業規則次第になるのでしょうか。
「休職制度を設けるか、どのような内容の制度にするかは、各企業に委ねられています。大規模な会社の多くは、就業規則に休職に関する規定があり、勤続年数や傷病の性質により休職できる期間が定められています。その期間は、1カ月だったり、3カ月だったり、1年だったり、会社によって異なります。
休職期間が満了しても回復せず、復職できない場合には、休職期間の満了により自然退職と扱う場合が多いと思います」
入院が長引いたり、復職できるほど回復していなかったりする場合には、退職を余儀なくされるのでしょうか。
「就業規則に休職期間の定めがあっても、その期間を延長できるという規定を設けている会社も少なくありません。仮に期間延長について定めがない場合でも、医師の診断書を提出して延長を申請した場合に会社から延長を認められる場合もあります。
まずは、自分の会社の就業規則上、休職に関する規定がどうなっているのか、休職期間はどれくらいかを確認してみてください」
長期間にわたって治療が必要な持病がある人は、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。 「厚生労働省は2016年2月、治療と仕事の両立支援として『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』を発表しました(2019年3月に改訂)。対象はがん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、その他難病など、反復・継続して治療が必要となる疾病です。
このガイドラインでは、労働者が上記のような疾病により長期に休業する場合、事業者は、労働者に対して、賃金の取扱いなど休業に関する制度や休業可能期間、職場復帰の手順等について情報提供を行うこととされています。
また、休業期間中も、労働者と連絡をとって治療の経過や今後について確認したり、職場復帰に向けて情報を事業者から提供したりするなど、『両立支援プラン』『職場復帰支援プラン』を策定することが望ましいとも書かれています。
2カ月以上の長期間の入院によって休職する場合には、こうしたガイドラインを参考に、使用者に対して配慮を求めるということも検討してみてはいかがでしょうか」
【取材協力弁護士】
青龍 美和子(せいりゅう・みわこ)弁護士
2011年12月弁護士登録。解雇や雇止め、セクハラ・パワハラ、労働組合に対する不当労働行為などの労働事件を担当し、離婚やDVなどの家庭問題にも取り組む。福島原発事故訴訟やB型肝炎訴訟などの集団訴訟にも参加している。
事務所名:東京法律事務所
事務所URL:http://www.tokyolaw.gr.jp/