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Da-iCEがデビュー5年で成し遂げたダンス&ボーカルの進化 ベスト盤からグループの軌跡を読み解く

2019年06月07日 17:31  リアルサウンド

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 2014年のメジャーデビューから5年。着実に実力を付け、今年1月には大阪城ホールでワンマンライブを開催するなど人気も確実に上昇中のDa-iCEが、デビュー6年目の6月6日に初のベストアルバム『Da-iCE BEST』をリリースした。


参考:Da-iCE、ヒゲダン 藤原聡と共に切り開いた新境地 「FAKE ME FAKE ME OUT」を読み解く


 甘さと鋭さを備えるハイトーンボイスを武器にする花村想太と、温もりと力強さを併せ持つアーシーな歌声の持ち主である大野雄大。異なる魅力を放つツインボーカルに、工藤大輝、岩岡徹、和田颯というハイスキルなパフォーマー3人を加えた5人が活動を開始したのは2011年。始まりは観客が数人だけだったが、翌年、事務所の先輩であるAAAのツアー(『AAA TOUR 2012-777- TRIPLE SEVEN』)や横浜アリーナ公演(『AAA TOUR 2012 -777- TRIPLE SEVEN 7th Anniversary Autumn stAge』)にオープニングアクトで出演したことで注目を浴び、2013年には東名阪のライブハウスツアーを開催するなどして念願のメジャーデビューの切符を掴み取った。


 デビュー当初は、「誰もが恋する顔面偏差値75グループ」とか「イケメン界の東大生」というキャッチフレーズが話題となり、ビジュアル面で語られることの多かったDa-iCEだが、このグループには結成時から「ボーカルとダンスの両立」というコンセプトが揺るぎなくあった。しかし、花村と大野は結成当初はダンス未経験者。「歌って踊れる」ではなく「歌いながら踊る」スタイルをポリシーに掲げて、パフォーマー3人に追いつくように必死にレッスン。ダンスをしながらでもクオリティーを落とさずに歌える実力派を目指し、レベルアップに努めてきた。


 口で言うよりまず行動。そう言わんばかりに、彼らはメジャーデビューした年にメンバー全員でロサンゼルスに数回渡り、ダンスをはじめとした武者修行を敢行。さらに楽曲の振付はデビュー当初から日本のダンスシーンでその名を知らぬ者はいないKING OF SWAGのDeeやs**t kingzの4人、さらには海外トップダンサーのKeone Madridなどに依頼。一流に接することで一流を学び、年間100本を超えるステージをこなすことで経験を積み、現在まで絶え間なくダンス/歌/パフォーマンスの腕を磨き続けてきた。ルックスからは想像しづらいが、言わば叩き上げでここまできた。


 一方、彼らの人気を支えている要因のひとつに、ファンファーストのグループであることも挙げられる。そもそもデビュー曲「SHOUT IT OUT」は1万人を超えるファン投票で選ばれた楽曲だし、デビュー翌年の2015年5月から2016年2月にかけては、2本の全国ツアーを通じて47都道府県を制覇。自分たちを応援してくれる人の声を大切にし、ライブや握手会などで自分たちのパフォーマンスと思いを全国にくまなく届け、ファンとの絆を高めて来た。そんな地道な活動は、2017年1月開催の初めての日本武道館ワンマンライブで大輪の花を咲かせることになる。それを弾みにして冒頭の大阪城ホールでのワンマンも達成。今や1万人規模のライブを安定して行えるグループへと大きく成長した。


 そんなDa-iCEの軌跡を楽曲面で辿れるのが、今回のベストアルバム『Da-iCE BEST』だ。本作にはメジャーデビュー以降に発表した全シングル16曲と新曲を2曲収録。リリースの古いものから順に並べられた楽曲を辿っていくと、彼らの分岐点ともいえるポイント曲が幾つかある。


 1つは8曲目「WATCH OUT」。デビューした当初はEDM調のJ-POPが中心で、なおかつ花村のハイトーンを活かした元気爽快系のきらびやかな楽曲が多かったが、この曲で重低音を聴かせるミキシングに変化。トラックにはエッジーでソリッドな音色も聴かれるようになり、よりフロアライクなサウンドにシフトしている。2017年1月発売の3rdアルバム『NEXT PHASE』の第1弾シングルとして発表された楽曲だが、まさに新たなフェーズへと突入を告げる曲だ。


 次の分岐曲は12曲目「君色」。ここまでのシングル曲は縦ノリの明るいアッパーソングかバラードかに振り切っていたが、ここでミディアムアップな楽曲が登場。ラテン風味の横揺れリズムとハッピーサッドな曲調、さらに大野のハートフルな低音ボーカルが効いていて、表情がグッと大人っぽくなる。続く『TOKYO MERRY GO ROUND』では一転、コモリタミノルと初タッグを組み、同氏が手掛けたSMAPの「SHAKE」や「ダイナマイト」を彷彿させるファンキーポップに挑戦。派手なホーンセクションが印象的な曲で、陽気に突き抜けるパーティーチューンをレパートリーに加えたという点でこの曲もポイントだろう。


 そして同曲が持つ歌謡エッセンスと前述の大人っぽい表情を調和させたのが次曲「FAKESHOW」。ジャズ/ファンク/ブレイキン/エレクトロをミックスさせつつ、仕上がりは疾走感のあるJ-POPに昇華。流麗に舞うストリングスとエモーショナルな花村のファルセットがスリリングで妖しい美しさを放つ佳曲だ。


 何より大きな分岐点といえるのが今年4月発売の最新シングル「FAKE ME FAKE ME OUT」だ。人気沸騰中のOfficial髭男dismの藤原聡が提供したこの曲ではジャズ/ファンクをより洗練させた形で導入し、スタイリッシュなサウンドメイクで新境地を開拓。徐々に備わり始めた大人の色香をどうふりまいていくか。その点において、Da-iCEの今後を示す重要曲となるだろう。(関連:Da-iCE、ヒゲダン 藤原聡と共に切り開いた新境地 「FAKE ME FAKE ME OUT」を読み解く)


 本作で初お目見えとなる新曲「イチタスイチ」では、過去のアルバムタイトルを歌詞にちりばめ、「時代が変わる」と勇ましいトラックに乗せて宣言。もうひとつの新曲「TIME COASTER」では、ハウス調のビートに乗せ、「新しい時代はイマココさ」と未来に向けた扉を開け放つように颯爽と歌うDa-iCE。5年という時間をかけてゆっくり進化を繰り返し、ダンス&ボーカルグループとしてとどまることを知らない成長をみせる彼らが、この先どのように変わっていくのか。そのヒントは、このベストアルバムを引っさげて行われる、6月9日スタートの自身最大規模ホールツアーに隠れているように思えてならない。(猪又 孝)