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MotoGPで異質なキャリアを持つドゥカティワークスのペトルッチ。8年目で掴んだ初勝利をライバルも祝福

2019年06月07日 15:11  AUTOSPORT web

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最高峰クラス8年目で初優勝を果たしたダニロ・ペトルッチ
ドゥカティのファクトリー(ワークス)ライダー、ダニロ・ペトルッチがイタリアGPでグランプリ初優勝を飾った。ペトルッチにとって、グランプリ通算124戦目の初勝利だった。1990年生まれ、2019年で29歳になるペトルッチは、他のMotoGPライダーとは異なる経歴を持っている。

 世界グランプリデビューは2012年、いきなりMotoGPクラスからの参戦だった。元々は量産バイクを改造したプロダクションレースの出身で、2011年にはイタリア選手権のストック1000クラスでチャンピオンを獲得、スーパーバイク世界選手権(SBK)のヨーロッパラウンドに併催されていたFIMスーパーストック1000クラスではランキング2位を獲得していた。

 本来ならここからSBKへ、というのが通常の流れだが、ペトルッチはいきなり世界グランプリの最高峰クラスのシートを得る。

 2012年はMotoGPマシンの排気量上限が1000ccに変更され、インディペンデントチーム向けにクレイミングルールチーム(CRT)という量産1000ccエンジン+オリジナルフレームでのマシンの参戦が可能となった年だった。ペトルッチはイタリアのイオダレーシングプロジェクトのライダーとして、チームがオリジナルで開発したマシンで参戦する。イオダレーシングプロジェクトは、アプリリアワークスなどで活躍したジャンピエロ・サッキ氏が立ち上げたチーム、コンストラクターで、チームの拠点はイタリアのテルニにあり、同じテルニ出身のペトルッチがライダーとして抜擢された。

 2012年は第12戦チェコGPまで、チームオリジナルのスチールパイプフレームにアプリリアレーシングテクノロジー(ART)が開発した、アプリリアRSV4用をCRT仕様としたエンジンを搭載していたマシンで参戦したが、後半戦はスーター製フレームにBMW S1000RRのエンジンを搭載したマシンにスイッチ。参戦1年目をランキング19位で終える。

 2年目の2013年は引き続き同じマシンで戦いランキング17位。2014年にはART製フレーム+アプリリアRSV4エンジンのARTにマシンを変更し、ランキング20位を得る。そして、グランプリ参戦4シーズン目となる2015年にはドゥカティのサテライトチーム、プラマック・レーシングに移籍。雨のレースとなった第12戦イギリスGPではバレンティーノ・ロッシに次ぐ2位に入賞し、初表彰台を獲得。ランキング10位と躍進する。

 2016年も引き続きプラマック・レーシングから参戦しランキング14位。2017年からはドゥカティ・コルセとの契約となり、チームは引き続きプラマック・レーシング所属ながら、ワークススペックのマシンを供給されて、ランキング8位。2018年もランキング8位とトップライダーの仲間入りを果たした。

 そして、2019年からは念願のワークスライダーとして、ドゥカティ・コルセ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)からの参戦となり、フランスGPで今シーズン初表彰台となる3位に入賞した。

■体調が万全でない状態で臨んだ母国GP
 イタリアGPではウイーク中の体調は万全ではなかったという。予選3番手を獲得した後、「明日はタフなレースになるだろう。風邪が原因で体調が万全ではない。数ラップで疲れてしまうが、ペースはいい。ファンの応援が僕にエキストラなエネルギーを与えてくれるはずだ」と語っていたペトルッチ。決勝では最終ラップまで続いたマルク・マルケス、アンドレア・ドヴィツィオーゾとの接戦を制して、念願の初優勝を達成した。

 勝利後、ペトルッチは勝利を喜ぶとともに、大きなサポートをもらったチームメイトのドヴィツィオーゾへの感謝のコメントを残した。

「チャンスが訪れ、僕は勝ちたかった。このチャンスを活かさなければならなかった。アンドレアが3位となってしまい、ドゥカティにとってチャンピオンシップ的にはよくない結果になったが、少なくとも1勝を挙げるという今シーズンの目標を達成した」

「僕はアンドレアのタイトル獲得をサポートしなければいけない。彼は今日ポイントを失ってしまったからだ。アンドレアはこの冬から僕をとてもよくサポートしてくれた。まるで弟のように面倒を見てくれ、だれも教えてくれない秘密まで解説してくれた。彼に感謝しなければいけない。この勝利を彼に捧げたい」

 一方、ドヴィツィオーゾは「僕は彼のポテンシャルを認め、一緒に仕事をすることを決めた。ダニロのムジェロで初勝利はベストなプレゼント。僕はポイントを譲ったけど、彼の優勝がうれしい」と語り、多くのライバルたちがドヴィツィオーゾ同様にペトルッチの初勝利を祝福した。

 決して、グランプリのエリート街道を歩いてきたライダーではないペトルッチ。与えられたチャンスを生かし、ワークスライダーまで上り詰めた彼は、MotoGPのトップライダーへと成長した。