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SHISHAMOが放ち続けるエネルギーと瑞々しさ ベスト盤を機に辿るバンドの成長の軌跡

2019年06月07日 12:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 3ピースバンド・SHISHAMOが6月19日に初のベストアルバム『SHISHAMO BEST』をリリースする。本作は、CDデビュー5周年を迎えた彼女たちのこれまでをギュッと凝縮した、まさに集大成的な作品であり、1stシングル曲「君と夏フェス」から最新曲「OH!」までのシングル9曲に加え、『NHK紅白歌合戦』でも歌われた代表曲「明日も」や、アルバムのみに収録されていた「僕に彼女ができたんだ」、「恋する」などファンに人気の楽曲全13曲をセレクト。本作の発売に先立ち、宮崎朝子(Gt/Vo)が「高校生の時に作った曲から最新のシングルまで、SHISHAMOの音楽の持つキラキラした世界をたっぷり楽しんで頂ける選曲になっています。SHISHAMOの事を知らない方にも是非聴いて頂きたいです」とコメントしている通り、入門編としても長く聴き継がれる作品になることは間違いない。


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 2010年に同じ高校の軽音部の面々で結成されたSHISHAMO(当時の表記は「柳葉魚」)。2012年には、高校生アマチュアバンドの全国大会『TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2012』に出場し、優秀賞とボーカル賞を受賞する。これをきっかけに音楽関係者を中心に注目を集め、2013年、高校卒業後間もなくデビューアルバム『SHISHAMO』をリリース。以来、コンスタントに楽曲を発表しながら、年間2本ペースでワンマンツアーを開催するなど、精力的に活動を続けてきた。その間、平均年齢20.4歳という若さで武道館公演を成功させ、2017年には『NHK紅白歌合戦』出場と、エポックメイキングな出来事があったことも忘れてはいけない。わずか5年の間にめまぐるしい変化を遂げながらも、着実に成長を遂げてきた彼女たちは、今やネームバリューにおいても集客力においても、バンドシーンの筆頭に挙げられる存在となった。


 今回のベスト盤では、これまでSHISHAMOが発表した全シングル曲が網羅されているのは前述した通り。どの楽曲も彼女たちの軌跡そのものとも言える輝きを放っているが、とりわけターニングポイントとなったのは、メンバーチェンジ後初のシングル曲「量産型彼氏」と、ブレイクのきっかけともなった「明日も」ではないだろうか。「量産型彼氏」は、結成当時からベースを担当していた松本彩が脱退し、新たに加入した松岡彩のお披露目ともなった楽曲。松岡にとっては大きなプレッシャーの中での挑戦だったと思われるが、SHISHAMOとの相性の良さを窺わせるプレイでバンドに新風を吹かせた。


 また「明日も」は、NTTドコモのCMソングに抜擢され、紅白でも披露した現時点において彼女たちの代表曲とも言える1曲だ。〈良いことばかりじゃないからさ 痛くて泣きたい時もある〉〈ダメだ もうダメだ 立ち上がれない そんな自分変えたくて 今日も行く〉と、ポジティブなメッセージの込められた歌詞が幅広い世代に響き、バンドの知名度も評価も一気に押し上げた。『SHISHAMO BEST』では、それらが年代順ではなく新旧織り交ぜて並べられている。すべての楽曲を並列に配したことで、むしろ自身の目指す音楽に向かうブレない姿勢が露わになったかたちだ。まさに、どこをとってもSHISHAMO。バンド結成時の初期衝動のような瑞々しさを失わずに走り続けている彼女たちの姿が、しっかりと刻まれている。


 初めて恋人ができた抑えきれない喜び(「僕に彼女ができたんだ」)、片思いの相手に好きな女の子がいると知った時の哀しさ(「君とゲレンデ」)など、青春時代に誰もが経験する普遍的なシーンを、等身大の言葉とエモーショナルな音で表現してきたSHISHAMO。そこに描かれるのは決してキラキラした輝きばかりではない。苦く切なくやるせない赤裸々な心にも目を背けることなく向き合ってきた。誰にも吐き出せずにいた思いを歌にしてくれるバンド。彼女たちを取り巻くリスナーが、まるで“戦友”に向けるような眼差しを注ぐのもそれゆえだろう。SHISHAMOの奏でるロックのエネルギー源は、紛れもなく彼女らの音楽に共感するファンたちにあるのだ。


 9月にはベストアルバムの発売を記念して、『SHISHAMO NO BEST ARENA!!!』が、大阪城ホールとさいたまスーパーアリーナでそれぞれ開催されることも決定。単独公演として過去最大キャパシティのライブとなるだけに、盛り上がりも最高となることが期待できる。5年間を支えたファンの前で披露するパフォーマンスは、きっと彼女たちにとっても新たな音楽を生み出す原動力となるに違いない。(渡部あきこ)