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1本のシャンパンボトルを巡ってBMWとザウバーが張り合い。クビサのF1初優勝にまつわる秘話

2019年06月06日 17:01  AUTOSPORT web

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2008年F1第7戦カナダGPで表彰台に上がったクビサ、ハイドフェルド(ともにBMWザウバー)、クルサード(レッドブル)
今週末のカナダGPを前にアルファロメオ・レーシングは、チームを運営するザウバーの拠点であるヒンウィルのトロフィールームに鎮座する、特別なシャンパンボトルについての真実を明かした。

 一見したところ、この権威あるシャンパンのマグナムボトルが他のボトルと違っているのは、それが未開封だということだ。F1の表彰台の最上段に捧げられたボトルとしては非常に珍しいことだが、言うまでもなくこれは、2008年のカナダGP勝者であるロバート・クビサに与えられたものだ。当時クビサは、BMWのワークスチームであったBMWザウバーに所属していた。

 この記憶すべきボトルについては、ザウバーのスタッフによって、あるストーリーが新加入のスタッフに対して長年にわたり語り継がれている。初めてヒンウィルを訪れた彼らは、このボトルが未開封であることを知ることになる。クビサは喜びのあまり、その場で恒例の“シャンパンファイト”を行うことを忘れてしまったのだ。

 しかしアルファロメオは、今週末に迫った第7戦カナダGPのプレビューにおいて、この未開封のボトルについての真実を明らかにした。

「これはザウバーの素晴らしいストーリーだ。F1の人間的な部分を表している」

「このストーリーは、新加入のスタッフがファクトリーでの仕事を始める頃に聞かされるものだ。だがそれは真実ではない」

「あの勝利の後、記念品の所有権について大したことではないものの、争いが起きた」

「ザウバーとBMWは双方とも記念品を保管したがった。これまでに味わったなかでも最も甘美なシャンパンのボトルをね」

「我々は嘆願して訴えたが、残念なことに、“ボトル戦争”はある時BMWが勝ってしまった。オリジナルはミュンヘンの彼らの記念館に今日まで誇らしげに展示されているよ。F1はボトルのレプリカを作成し、それがスイスに運ばれたのだ」

「その日、我々はこの大切な思い出の品をパートナーに譲ることに決めたのだ。それが我々が寛大さと流儀をもってやったことだ。将来、さらに素晴らしい思い出を築いていくためにね」

「これが我々が保管しているトロフィーだ。その時から、我々はこのボトルのことを“彼らに香りを嗅ぐことすらさせていないボトル”と呼んでいる」

 この伝説は名誉のうちに生き、そして終焉した。今日まで、2008年カナダGPでの優勝は、ザウバーとクビサにとって、F1におけるひとつの栄誉であり続けている。