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「保証人」と「連帯保証人」の違い、知っていますか?

2019年06月06日 10:51  弁護士ドットコム

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「保証人」と「連帯保証人」。言葉が似ていますが、実は大きな違いがあると知っていますか。


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奨学金の「保証人」には未返還額の半額しか支払い義務がないのに、日本学生支援機構がそれを伝えずに全額請求したとして、今年5月には、保証人が過払い金の返還と慰謝料などを求める裁判も起こしています。



奨学金に限らず、お金を借りる際には「保証人」や「連帯保証人」を求められることがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。河野晃弁護士に聞きました。



●法律的には両者は別物

ーー「保証人」と「連帯保証人」の違いはどのようなところにあるのでしょうか



一般的には、「連帯保証人」のことを単に「保証人」と呼ぶこともありますので、あまり強く意識されませんが、法律的には両者は別物です。



主には、(1)催告の抗弁権、(2)検索の抗弁権、(3)分別の利益、の3点が違います。



ーーそれぞれ、教えてください。



(1)『催告の抗弁』とは、保証人が債権者(お金を貸した人)から金銭の支払いを求められた場合、単なる保証人であれば、「まずは主債務者に催告(請求)してくれ」と求めることが出来ることを意味します。



ただし、主債務者(借金をした人)が破産手続き開始決定を受けている場合や行方不明の場合は、言えません。



(2)『検索の抗弁』とは、債権者が保証人に請求をしてきたとしても、主債務者に支払いを行う能力があって、かつ、執行が容易だということを証明した場合は、債権者はまず主債務者の財産につき執行しなければいけないことを意味します。



ーー「執行が容易」というのは、どのような場合ですか。



典型的には主債務者に預金があることなどを指します。



これら、「催告の抗弁」と「検索の抗弁」を保証人が行使したにもかかわらず、債権者が主債務者に催告や執行をしなかった場合は、その分、保証人は支払い義務を免れるというルールもあります。



例えば、債権者が保証人に100万円の貸金の支払いを求めてきたケースで、保証人が主債務者の預金が30万円あることを証明したという場合、債権者が預金からの回収を怠れば、保証人は残りの70万円の支払い義務になる、ということです。



ーー(3)分別の利益はどういうものでしょうか。



保証人が複数いた場合、保証債務を履行しなければならない状況になったとしても、頭数で割った分のみの負担をすれば良いことを意味します。



逆にいえば、連帯保証人の場合は、人数が複数いたとしても、一人が全額について責任を負うことになります。



まとめると、連帯保証人に対しては、債権者は主債務者に請求するかどうかを問わずに請求できますし、主債務者がいくら財産を持っていようとも請求できます。また、連帯保証人が何人いようとも、一人に対して全額支払えと請求することが出来るということです



●保証人でもリスクは生じる

ーー保証人と連帯保証人とでは、責任の重さが全然違うのですね。



はい。ですが、単なる保証人といえども、主債務者が破産した場合などは、保証人が複 数名いたとしてもその責任割合に応じて支払い義務は直ちに発生しますし、連帯保 証人と比べればリスクは少ない、というだけでリスクはもちろん生じます。



保証人になるかどうかはよく考えて行動した方が良いですね。




【取材協力弁護士】
河野 晃(こうの・あきら)弁護士
兵庫県弁護士会所属。2010年弁護士登録。民事事件(中小企業法務・交通事故等)、家事事件(離婚・相続)、刑事事件など、多種多彩な業務を行う。趣味はゴルフ、野球など。日本一話しやすい弁護士を目指す。
事務所名:水田法律事務所
事務所URL:http://mbp-kobe.com/akira-kohno/