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「一人で死ね、という言葉が怖い」苦悩する氷河期世代に励まし相次ぐ 「“無職”も“実家暮らし”も“中年”も、死刑になるほどの罪ではない。どんな罪でもない」

2019年06月05日 18:30  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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5月28日に起きた川崎の20人無差別殺傷事件は、日本中を震撼させた。事件直後はテレビで著名人が「死ぬなら一人で死ねばいい」などと発言し、ネット上でも同様の意見が噴出した。だが、そうした世間の空気に、過剰に追い詰められてしまう人もいる。

はてな匿名ブログに6月3日、「過労退職の氷河期世代だが『一人で死ね』の言葉が怖い。」と苦しみを語るエントリがあった。投稿者は、3か月前に過労でうつ病になり退職。ハローワーク通いで「再就職できるのか」と不安な日々の中、川崎の事件が起きたという。(文:okei)

「俺のように過労退職の氷河期世代も死ねって事なのか?」


投稿者は、「『無職実家暮らしの中年は一人で死ね』という言葉が滝のようにネット上を飛び交っている」と怯え、

「増田(注:はてなブログ)もTwitterもFacebookもヤフコメも『無職実家暮らしの中年は一人で死ね』と異口同音に唱えている」
「反論した識者は炎上した。俺のように過労退職の氷河期世代も死ねって事なのか?」

と苦悩している。最後に、「この数日の議論を見ていて体調崩した。」と綴った。

氷河期世代ということは、現在30代半ばから40代後半ぐらいだろう。新卒時の不況で思うようなキャリアが積めなかった人が多く、就職に躓き、そのまま引きこもりになったケースが多いとの見方もある。

川崎の事件は、犯人が長く引きこもりだった51歳の無職男性だったことから、テレビでは中高年の引きこもり問題と結びつけられ語られることが多かった。同じように孤立した人が追い詰められないよう、「『死にたいなら一人で死ぬべき』という非難は控えてほしい」という呼びかけもあったが、「自分の子供がやられてもそう言えるのか」などの批判が殺到した。

ただでさえ心身不調な投稿者は、ネット上におびただしく上がった罵詈雑言が、「無職で実家暮らしの中高年」というだけで、自分に向けられているような不安に襲われてしまったのだろう。

「一人で死ね」の発信者たちに批判「流れ弾として強すぎる」

この投稿にはブックマークが500近く付き注目を集めた。多かったのが、「『他人を殺して巻き込むくらいなら一人で死ね』であって、別に無職だから死ねってわけじゃない。働こうとしてんならまだあんたは社会人だよ」といった指摘や励ましの声だ。中には、「働こうとしていなくても、生きていて」と励ます声もあった。

「死ななくていい。『無職』も『実家暮らし』も『中年』も、死刑になるほどの罪ではない。いや、どんな罪ですらない。きつい職場でよく頑張った」

と書いた人は、「だからもういい。体調が良くなるまでしっかり休もう。自分を大切に」と慰めた。他にも応援コメントが相次いでいる。

他方、メディアやSNSで発信する人の責任を問う声もある。

「プロフ(注:プロフィール)に精神障害や求職中の記載があり、特に攻撃的でもないようなアカが、"生きててすみません一人で死にます"と呟いているのを複数見た。そういう事だ。流れ弾として強すぎるんだ」

というコメントも。孤独な人や求職者はネットを見るなと言われても難しく、自分が批判されているかのような言葉ほど目に付いてしまうのだろう。ただ、コメントは励ましの声も多く、突き放す人ばかりではないことも示している。

「1人で死ね」という言葉を反射的に口にしてしまう気持ちはわかる。だが、それが似たような立場の人を余計に追い込み、自殺や、同じような凶行に及んでしまう恐れもある。生きづらさにもがく人の多い世の中では、不特定多数の人の目に触れる言葉を、もっと慎重に選んだほうがいいだろう。テレビなどの公共放送はもちろんだが、ネット上でも、SNSでの個人発信でも同じことだ。